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Vol.1 ジャコウネズミ

2013.2.25

動物園でモグラの展示をはじめてから私はモグラの専門家と思われていることがありますが、私が大学時代からずっと研究し続けてきたのはモグラではなくネズミです。モグラとの出会いはそう昔のことではなく、全く知らなかったモグラの世界にうっかり足を踏み入れてしまいました。ここではモグラの仲間や、私を引きつけてやまないネズミ、そのほか身近な動物たちを中心に取り上げていきたいと思います。

私が初めて関わったモグラはいわゆる普通のモグラではなく、モグラの仲間なのにトンネルをつくらないモグラ、ジャコウネズミです。初めてジャコウネズミを見たのは大学3年生のとき。研究室で飼育されていた動物たちの中にいたのがジャコウネズミでした。私の研究室の森田哲夫先生は小型哺乳類の休眠についてを主な研究テーマとしています。ジャコウネズミはそんな研究の対象動物のひとつとして飼育されていました。しきりに動くとがった鼻。1ミリほどしかない小さな目。ネズミに比べてはるかに太い尾。今まで飼ったことのあるマウスやハムスターとは似ても似つかない姿をしています。しかもこの変なネズミみたいな生き物がモグラの一種だなんて。

ジャコウネズミは学名をSuncus murinusといい、和名のジャコウネズミという名前からネズミの仲間(げっ歯類)ではなくモグラの仲間(食虫類)です。モグラの仲間では唯一実験動物化されていて、ネズミと間違えられないよう学名から「スンクス」ともよばれます。私はジャコウネズミという間違えられやすく長ったらしくて呼ぶのが面倒なこの和名よりは四文字で言える「スンクス」を来園者の前以外では使っています。
容姿以外にもおもしろいのは名前の由来になった独特の香り。ジャコウネズミには臭腺があり、独特のにおいを出しています。このにおいのおかげで学生時代もジャコウネズミ支持率は低いものでした(最近は学生の間でもこの動物のおもしろさから支持率上昇中のようですが)。
また、ジャコウネズミに限らずトガリネズミの仲間の子どもはある程度成長すると離乳するまでのしばらくの間、母親の尾の付け根をくわえ、その後ろの子どもは前の子どもをくわえ、さらにその後ろの子どもは・・・と数珠つなぎになります。

これはキャラバンとよばれ、この仲間の独特の移動方法です。まるで電車ごっこをしているよう。動物園ではこのキャラバン行動を来園者にも見せようと現在取り組んでいるところです。(キャラバンは生後5日から22日齢あたりまでしか見ることができません。動物園での展示は期間限定で行う予定です。)
ジャコウネズミは交尾排卵動物で、交尾して排卵・受精すると30日で出産します。

産まれてしばらくは毛もないアカンボウです。

産まれて1週間くらいで目が開き、2週間もすると離乳します。毎日見るたびに変化して、その成長のスピードには驚かされます。

私が以前人工哺育を経験した個体では哺乳開始日11gしかなかった体重が2週間後には30gにもなりました。

こんなジャコウネズミのおもしろい特性はまだまだあります。また、現在も更なる特性の解明が行われています。これからもジャコウネズミから目が離せません。機会があればまた紹介したいと思います。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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