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Vol.17 モグラとゲンゴロウ

2015.9.21

 9月の上旬、かなり強めのにわか雨が園内に降りました。みるみるうちに雨水は川のように流れていきます。排水溝も一気に流れ込む雨水を処理できないほどでした。雨があがって水がひきはじめると排水溝横のアスファルトを虫が歩いています。歩き方から、直感で普段見ない甲虫のようだと思い、とっさに捕獲しました。見てみるとゲンゴロウのようです。ゲンゴロウの一種だということはわかりましたがこれが何ゲンゴロウなのかまでは私にはわかりませんでした。ぱっと見るとゲンゴロウ(いわゆるゲンゴロウ。ホンゲンゴロウやナミゲンゴロウなどとよばれることもあるようです)のようですが明らかに小さい。
 早速調べてみるとコガタノゲンゴロウのようです。コガタノゲンゴロウは宮崎県や鹿児島県では比較的見られるようですが、本州では絶滅したといわれていたり、捕獲禁止になっている県もあるようです。宮崎県レッドデータブックでは準絶滅危惧種、環境省レッドデータブックではワンランク上の絶滅危惧Ⅱ類に掲載されています。

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 当園で飼育展示しているコウベモグラを来園者の方が見て、「モグラってこんなに小さいの?もっと大きい生き物だと思っていた。」と耳にすることがあります。モグラは国内最大種のエチゴモグラで体重120〜160g、コウベモグラで65〜120g※1ほどです。世界最大のモグラ科ロシアデスマンでさえ500gほどです。
 一方、ゲンゴロウ科最大種ゲンゴロウは体長33〜42mm、コガタノゲンゴロウは24〜29mm※2ほどです。意外に大きくはないんだな、と思っていたら日本のホンゲンゴロウは世界でも最大クラスに入るようです。コガタノゲンゴロウも名前とは裏腹に大型のゲンゴロウの仲間に入るようです。ゲンゴロウ属の中では小さめなだけで「コガタノ」とは実にややこしい。「ゲンゴロウ」という昆虫の名前は私も小さい頃から知っていますし一般的にもよく知られています。「モグラ」という名前もよく知られているけれども実際に見ることはほとんどないし、名前の知名度の割にはその詳細は知られていない。大きさのイメージや名前の知名度からみるとどこかモグラとゲンゴロウは似ている気がしてきました。また、モグラが地中生活に特化しているのに対してゲンゴロウは水中生活に特化しています。しかし、モグラと違うのはゲンゴロウの仲間の多くは農薬の使用や外来種の侵入によって国内では姿を消しつつある昆虫になってしまっていることです。自然豊かな宮崎県からこの昆虫たちが消えてしまわないようにしたいものです。
※1 「モグラハンドブック」飯島正広・土屋公幸 著 文一総合出版
※2 「水生昆虫完全飼育・繁殖マニュアル」
都築裕一・谷脇晃徳・猪田利夫 著 株式会社データハウス

園内で出会ったコガタノゲンゴロウ。水中をすばやく泳ぐための脚はトンネルを掘るためのモグラの脚とどこか共通しているものがある気がします。

園内で出会ったコガタノゲンゴロウ。水中をすばやく泳ぐための脚はトンネルを掘るためのモグラの脚とどこか共通しているものがある気がします。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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