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Vol.3 モグラの悩み

2013.4.21

動物園で飼育しているモグラの今一番の悩みは「メタボ」。人間でもこの悩みを抱えている方は多いですが、動物園のモグラもメタボで悩んでいます。野生では数十メートルもの長いトンネルの中を動きまわって餌をさがしているモグラですが、動物園で飼育する場合、野生と同じだけモグラに運動をさせることは難しいことです。動物園の「モグラのトンネル」では全長数メートルのネットのトンネルの中を自由に動きまわれるようにしていますが、自然の環境に比べると運動量ははるかに少なくなります。

比較的動きまわることのできるトンネル飼育モグラはさほどメタボは気にならないのですが・・・

展示個体とは別にバックヤードで予備個体を飼育していますが、展示個体のように大がかりなトンネルを用意することはできないので個別にマウス・ラット用のケージで飼育します。バックヤードのモグラは展示しているモグラよりさらに運動量が少なくなります。すると野生のモグラではまず見られない太ったモグラになってしまいます。

動物園で飼育されているメタボに悩む(担当者が)モグラ。
さらにあまり動かないので前足の爪が伸びてしまっています。(爪は定期的に切っています。)

モグラ体重測定の様子。このサイズのコウベモグラで100gはちょっと太りすぎです。
関係ないのですが、計測したらたまたま出たこの数字(9が3つそろっていること)にちょっとびっくりしました。

同じモグラの仲間でもモグラのように地中で生活するものは代謝が低く、ジャコウネズミやジネズミのように地表で生活するものは代謝が高いといわれています。代謝が低いとは言いかえると自分の体温を保っておくのに必要なエネルギーが少ない=燃費が良い、ということは代謝が高い=燃費が悪いということになります。人間では代謝の高い人のほうがメタボになりにくくていいんだ・・・のようなことを言ったりしますが、エサが限られている野生下で体の小さな哺乳類にとって代謝の高い低いはとても重要です。どうしてモグラの代謝は低くてジャコウネズミの代謝は高いのかな?とこの前大学で話をしていたら、S君から「地中は酸素濃度が低いからじゃないですか」という答えが返ってきました。なるほど地中は酸素がもともと薄いからモグラは酸素をなるべく使わなくていいように生活しています。酸素を使う量が少なくてよいということは代謝が低い=燃費が良いということになります。飼育しているモグラの仲間でモグラはメタボな個体をよく見るのに対して地上生のジャコウネズミやジネズミで太った個体を見たことはそういえばないような気がします。つまり地中性のモグラはそれだけ太りやすいということなのでしょう。

ジャコウネズミ(長崎野生由来系統:NAG)

ジネズミ(ジャコウネズミに比べて小さく、体重はジャコウネズミの3〜4分の1くらいしかありません:約10グラム)

運動させることには限界がありますから当園では飼育個体それぞれの状態に合わせてエサの量で太らないように(太った個体はダイエットするためさらにエサを減らします)調整するようにしています。エサは自然で主食としているミミズや昆虫類の代用食として鶏心臓やミンチを与えるのですが代用食の代替食を考えないといけないのかもしれません。

動物園でモグラに与えているエサ。鶏心臓をミミズのように細長く切ったものなどを与えています。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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