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Vol.7 モグラとハムスター

2013.12.20

 モグラの生体展示コーナーで幼稚園や小学生の子どもたちから発せられる言葉。「ハムスターだ!」
 私が子どもの頃ハムスターは珍しい存在だったのでこんな発想はありませんでしたが、現代っ子にとって寸胴で尾の短い掌に乗りそうな哺乳類は高確立でハムスターと思うようですね。これを聞くと私は「これはハムスターじゃなくてモグラだよ。」というと「あ、モグラなんだ」と子どもたちは納得します。私は「モグラって名前は知ってんじゃん!」と思わず心で叫んでしまいます。それほど一般の人たちにとってモグラという生き物の名前は浸透していて、モグラという生き物そのものが知られていないということなのでしょう。

コウベモグラ。前足、目、耳。ぱっと見ただけでこれだけははっきり違うのだけれど・・・

 私はいつも何でハムスターになるのかなぁと思っていたのですが、あるときふと考えました。進化の過程で「収斂(しゅうれん)」というものがあります。「収斂」とは、複数のグループの動物が同じような環境に適応することによって系統に関わらず体つきが似てくることをいいます。例えば絶滅してしまったイクチオサウルスのような魚竜(は虫類)とイルカ(哺乳類)、サメ(魚類)、ペンギン(鳥類)。全てが異なるグループの生き物ですが、翼や前足はみんなひれのような形になり、水中を高速で移動することができます。想像図でしか見られませんが魚竜とイルカの見た目はそっくりです(収斂については人類文化社の「コウモリ観察ブック」に非常にわかりやすく解説されています)。この「収斂」を頭に入れて先ほどの子どもたちの言葉を振り返るとなるほどな、と思ってしまいます。

ゴールデンハムスター。モグラはこのような体勢にはなれません。ほお袋にエサを入れているところですが、モグラにもちろんほお袋はありません。

 モグラほど地中生活に特化していませんが、ハムスターも地中にトンネルをつくって生活していて他のネズミの仲間に比べて四肢が短めで尾もネズミなのに短くなっています。「収斂」という点で考えるとモグラもハムスターも同じなのかもしれません。子どもたちの発想もあながち的はずれではないと納得させられました。
 ちなみにチベットにSteppe Zokor(学名Myospalax aspalax)というネズミがすんでいるそうです(どんな姿かはインターネットで学名か英名を入力して検索してみてください)。私はモグラに最も似ている(特に前足が)ネズミはハムスターよりこの種だと思いますよ。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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