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Vol.15 モグラと温度

2015.2.4

 先日、野生では冬に地中温度がかなり低い温度まで下がるのにモグラは生きているので、冬に環境温度を20℃以下で飼育したらうまくいかなかったという情報を耳にしました。

 当園ではモグラの中性下限臨界温度(最も代謝が抑制される最低の温度域=エネルギー利用が最小になる温度で最小の値)は約27〜28℃という報告から、なるべく個体に負荷をかけないように展示スペースで24〜26℃、バックヤードでは22〜26℃くらいを目安に飼育しています。では、自然では当たり前のようにモグラが経験するであろう20℃以下という温度でうまく飼育ができないのはなぜだろうと考えてみました。

 暖かい宮崎でも地中の温度は冬に地表から30センチ程度だと10℃以下まで温度が下がります。深さが60センチ以上になったあたりから10℃程度を保っています(当園で実際に測ってみました)が、20℃を上回るようなことはまずないと思います。

 文献を調べてみると、土の中でトンネルを掘り、年中土の中で生活するモグラにとって一番の問題は、夏などに自分の体温でオーバーヒートしないようにすることのようです。モグラが地中にトンネルを掘るときはかなり活発に動きます。動けば動くほど体から熱が発生します。暑い時は涼しいところへ…地中ではそれは難しいでしょう。暑い時期、地中で生活するモグラにとって暑さは一番の問題のようです。そのため、モグラの仲間でもジャコウネズミのように地表で生活する種に比べて、地中で生活するいわゆるモグラはより熱を外に逃がしやすくなっているようです。これができないとモグラは自分の体温で暑くて死んでしまうみたいです。

ということは、土のトンネルは冬をすごすモグラにとって断熱材の役割を持っているのではないでしょうか。Vol.14で紹介したようにモグラのトンネルはモグラがなんとか通れるくらいの狭いものです。この土のトンネルが取り巻いているからこそ、モグラは低い温度でも体温を保っているのでしょう。一方、動物園のモグラは観察しやすいようにネットでできたトンネルか(Vol.11,12参照)、浅い木くずや土などを飼育容器に敷き詰めて飼われることが多いと思います。この場合だとモグラの周囲には断熱材の代わりになるものがほとんどありませんから自然と同じ温度まで低くなると、体温を外に逃がしやすいモグラは自分の体温を一定に保てなくなってしまうと考えられます。人間は暑いとき薄着をして寒くなると重ね着をして対処します。それができないモグラにとって冬のトンネルは私たちのコートと同じ存在なのかもしれません。

 

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著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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