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Vol.4 モグラのトンネル

2013.5.20

モグラにとって地中に張り巡らされた長いトンネルはなくてはならないものです。野生下では1頭のモグラは数十メートルものトンネルを利用しています。マンガに出てくるモグラはサングラスをしてヘルメットをかぶり、シャベルかツルハシをもっていて、年中トンネルを掘っているイメージがあります。

みなさんにおなじみのモグラは上?下?

実際には年中トンネルを掘っているわけではありません。トンネルにはずっと使い続けるトンネルと使い捨てトンネルがあります。モグラの主な活動は掘ってあったトンネルの中をパトロールし、そこに迷い込んでくるミミズや昆虫等を捕らえて食べています。新たにトンネルを掘ったとき、そこが餌を捕るのに不適だったり捕れなくなってしまったり移動するにも不必要な場合、そのトンネルは破棄されます。

地表にあらわれたモグラのトンネル

モグラを捕獲するときにはワナをモグラがいつも通るトンネルに仕掛けないといけないわけですが、使い捨てトンネルにワナを設置してもモグラはかかりません。モグラが使い続けるトンネルを見つけてワナを設置する必要があります。モグラ博士達はこのトンネルを長年の経験から判別するようですがモグラ初心者の我々にはこれが最大の難関なのです。

モグラの生活の全てであるトンネルにはトイレや寝床、ミミズを保管しておく貯蔵庫までそれぞれの役割をもっています。

 

 

トンネルでの生活に適したようにモグラのからだもよくできています。コラムVol.2で紹介した毛はもちろんのこと、土を掘るのに都合の良いようモグラはシャベルのような大きな前足をもっています。

モグラの最大の特徴であるモグラの前足。

大抵の動物は歩行するのに都合がよいように前足の指先は真っすぐ正面を向いて掌に当たる部分は地面に接するようにできています。ところがモグラの場合、前足は斜め前方を向いていて、しかも掌に当たる部分は横向きになっています。土をかき分けたり押し出したりするにはこれが最適なのでしょう。前足が横に向いているためトンネル内を高速で移動するモグラも地表に出るとふんばりがきかないのかネズミなどに比べるとかなり遅いスピードで地面を移動します。

ネズミと同じような前足をもつモグラの仲間ジャコウネズミ。

同じモグラの仲間でもトンネルをつくらないジャコウネズミはネズミなどと同じような足の付き方をしています。そのため地面を歩くときは俊敏です。

トンネル生活はしませんが生活圏が特化していて足の付き方が変わった動物がいました。

森の忍者?ニホンヤマネ。木の枝をスルスルと移動します。

ヤマネ(ニホンヤマネ)です。ヤマネはネズミの仲間(齧歯目)ですが、一般的なネズミ類とは少し異なる容姿をしています。見た目も変わってはいるのですが一番面白いのは足の付き方です。一般的なネズミ類よりも前後肢がハの字に開いています。ヤマネは主に樹上を生活圏としています。そのため木にしがみつきやすいように他のネズミ類よりも足が開いてついているのではないでしょうか。床の上を走らせるとネズミの仲間とは思えないほどカサカサと不器用に走っていきます。まるでモグラが地面を走る時とそっくりです。野生では木から木へと伝って移動するヤマネにとって地表を走るという手段はあまり必要ではないのでしょう。一方、同じネズミの仲間で主に樹上で活動するけれども地表も移動するヒメネズミの足はヤマネのように開いておらず、一般的なネズミ類と同じような足の付き方をしています。ヤマネはヒメネズミではできない木の枝の下側を移動するという特技をもっています。これもハの字に開いた足でしっかりと木の枝をつかむことができるからと思われます。

 

 

ヤマネを見る機会は今まで何度かありましたが、地面を不器用に走るネズミっぽくないすがたに少しびっくりしました。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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