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Vol.13 ジャコウネズミとカヤネズミ

2014.11.2

 Vol.11で日本一小さいネズミ、カヤネズミの展示について紹介しました。この展示はボールのような球巣とアクティブに動くカヤネズミのおかげで来園者にまずまずの人気でした。

好評だった9月に行ったカヤネズミの特別ガイド。久住牧野の博物館の増田先生と石若先生の豪華特別案内人にカヤネズミについてのお話をしていただきました。

好評だった9月に行ったカヤネズミの特別ガイド。久住牧野の博物館の増田先生と石若先生の豪華特別案内人にカヤネズミについてのお話をしていただきました。

 しかし、カヤネズミを見た子どもたちのほとんどが「ハムスターだ!かわいい。」といいます。そしてその近くで展示しているジャコウネズミを見て「ネズミだ。」と一言。パネルにはカヤネズミはネズミ、ジャコウネズミはモグラの仲間だと解説してあるのですが(広い意味ではカヤネズミもハムスターもネズミではありますが)、子どもたちの多くは細かい解説までは気づいていないようです。

 これと似たテーマでVol.7「モグラとハムスター」で取り上げましたが、カヤネズミ展示に協力して頂いている久住牧野の博物館の石若先生にこのことを相談して二人でいろいろその理由を考察してみました。そこで行き着いたのはネズミのイメージは顔を中心としたシルエットにあるのではないかということになりました。最近はアニメやペットショップの影響で「ネズミ」より「ハムスター」の方がメジャーになっています。ネズミといえば某アニメキャラクターの苦手なものとして認識されている程度のようです。そこに出てくるネズミは出っ歯で耳が丸く大きく、鼻先はとがっていて毛の無い長いしっぽを持っていていわゆる「ネズミ色」といわれる灰色がかった体色をしています。ネズミの仲間は世界中に1,000種以上が知られていますがそんなネズミの方が少ないと思います。この条件にほとんど当てはまる動物がすぐそばにいたのです。そう、ジャコウネズミです。ネズミではないジャコウネズミが子どもたちのイメージにピッタリのようです。

ジャコウネズミ。確かに日本人の多くが持っているであろうイメージのネズミの条件を満たして(?)いるのかもしれません。

ジャコウネズミ。確かに日本人の多くが持っているであろうイメージのネズミの条件を満たして(?)いるのかもしれません。

 一方、カヤネズミのしっぽはともかく丸い鼻先、小さな耳、茶色の体色と、子どもたちのネズミイメージから少し離れていて、どちらかというとハムスターイメージに近いからハムスターとして認識されるのだろうと考察しました。これは新たな展示の改善が必要なようです。

生後2週間日程度のカヤネズミのこども。丸い鼻先、小さな丸い耳、茶色のからだ。しかしこんなに長いしっぽのハムスターは普通みなさん見ませんよね?(しっぽの長いハムスターという名前のネズミもいるにはいます。しかしペットショップなどで普通に目にすることはないでしょう。)

生後2週間日程度のカヤネズミのこども。丸い鼻先、小さな丸い耳、茶色のからだ。しかしこんなに長いしっぽのハムスターは普通みなさん見ませんよね?(しっぽの長いハムスターという名前のネズミもいるにはいます。しかしペットショップなどで普通に目にすることはないでしょう。)

上からシリアン(ゴールデン)ハムスター(Mesocricetus auratus)、ジャンガリアンハムスター(Phodopus sungorus)、ヒゲカンガルーハムスター(Calomyscus mystax)2頭の仮剥製標本。ヒゲカンガルーハムスターはネズミのように長いしっぽをしています。ヒゲカンガルーハムスターの名前にはハムスターとついていますが、ほお袋を持たないなど一般的にハムスターといわれるものとは違うとされているネズミの仲間です。

上からシリアン(ゴールデン)ハムスター(Mesocricetus auratus)、ジャンガリアンハムスター(Phodopus sungorus)、ヒゲカンガルーハムスター(Calomyscus mystax)2頭の仮剥製標本。ヒゲカンガルーハムスターはネズミのように長いしっぽをしています。ヒゲカンガルーハムスターの名前にはハムスターとついていますが、ほお袋を持たないなど一般的にハムスターといわれるものとは違うとされているネズミの仲間です。

後日、カヤネズミをハムスターと言っていた子どもたちに質問してみました。「どこを見てハムスターだと思うの?」「これ。」指差す先にはカヤネズミの活発に動いているすがたを見せようと設置した回転輪が。私たちは深く考えすぎていたみたいですね。多くの子どもたちは「ケージの中の回転輪=ハムスターの使うもの」として認識していたからだったようです。

一生懸命回転輪を回すカヤネズミ。何かに取り付かれたかのようにオス個体は暇さえあれば回しています。回転輪は一昔前まではリスやハツカネズミの飼育でもよく用いられていました。今でもいろいろなタイプのものが市販されていますが、確かにハムスターがパッケージに描かれているものしか見ないですね。

一生懸命回転輪を回すカヤネズミ。何かに取り付かれたかのようにオス個体は暇さえあれば回しています。回転輪は一昔前まではリスやハツカネズミの飼育でもよく用いられていました。今でもいろいろなタイプのものが市販されていますが、確かにハムスターがパッケージに描かれているものしか見ないですね。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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