日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.16 スンクスと日内休眠

2015.3.30

 スンクス(和名:ジャコウネズミ/学名:Suncus murinus よび方についてはVol.1を参照してください)を飼育していると、時々ブルブル震えているように動きの鈍い個体を目にすることがあります。初めてこの状態を見ると体調が悪いのか?死にかけているんじゃないのか?と心配してしまいます。

1

 実はこのときのスンクスは死にかかっているのではありません(稀にそういう場合もありますが)。多くの場合、この状態は「日内休眠」している、あるいは休眠から覚醒しようとしている状態と考えられます。

 「休眠」というとあまり馴染みのない言葉ですが、代謝や体温を通常より低くすることでエネルギー消費を抑えて環境条件の悪化(寒さや餌が少なくなるなど)を乗り切るための現象です。この休眠はさらに「冬眠」、「夏眠」、「日内休眠」の3つに分けることができます。冬眠や夏眠は読んで字のごとく季節に応じてみられる休眠で、何となくイメージできると思います。このときの動物の体温は周りの環境の温度近くまで低くなり(冬眠中のシベリアシマリスの体温は5℃まで下がっていたそうです)、この状態が24時間以上続きます。一方「日内休眠」は1日のうちに体温を数℃から十数℃程度下げ、その状態が24時間を超えない休眠のことをいい、英語ではdaily torporといいます。

 スンクスはこの日内休眠を行うことが知られています。スンクス以外にもネズミの仲間やコウモリの仲間、鳥類などでも日内休眠することがわかっています。日内休眠はふつう活動しない時間帯(休息している時間帯)にみられます。スンクスは夜行性なので休眠は明るい昼間にみられます。私たちが世話をするのは昼間ですからしばしばこの状態に遭遇する、というわけです。日内休眠は低温や餌の不足、日長が短くなることで引き起こされるといわれていて、スンクスの場合普通に飼育していてもこの日内休眠をすることがよくあります。

スンクスの体温変化の例。青い折れ線グラフはスンクスの体温を30分ごとに約1週間記録したもの。ピンクの部分が休眠しているところを示しています。普段は36℃程度の体温が休眠時には数時間、20数℃まで下がっています。

スンクスの体温変化の例。青い折れ線グラフはスンクスの体温を30分ごとに約1週間記録したもの。ピンクの部分が休眠しているところを示しています。普段は36℃程度の体温が休眠時には数時間、20数℃まで下がっています。

大変だ!死にかかってる!?と持ち上げてみると明らかにいつもより冷たい。でもしばらくして見に行くと何事もなかったかのように活動している、ということを私も何度も経験したことがあります。わかってはいるけれどついつい毎回驚かされてしまいます。冬眠は古くから知られている現象ですが、日内休眠は20世紀の半ばになってはじめて発見された現象で、現在進行形でいろいろなことが解明されているところです。この面白い日内休眠について今後少しずつ紹介していければなと考えています。
 さて、3月28,29日,4月4日,5日に14:00〜当園で「モグラってどんな動物?」というイベントを開催予定です。モグラについてのガイドを行う予定ですが、このモグラコラムの内容を実物などとともにお話したいと考えています。興味のある方は是非お立ち寄りください。

参考文献:「冬眠する哺乳類/川道武男、近藤宜昭、森田哲夫 編/東京大学出版会」「スンクスの生物学/磯村源蔵 監修 織田銑一、東家一雄、宮木孝昌 編集/学会出版センター」

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。