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Vol.8 モグラとイノシシ

2014.2.20

 モグラの好物がミミズなのはみなさんも何となくご存知でしょう。動物園で飼育しているモグラも時々エサを食べなくなることがあります。そんな時ミミズを与えると今までエサを食べなかったモグラのほとんどがミミズなら食べはじめるのです。モグラにとってミミズはやはり一番の食べ物なのでしょう。

 さて、今回の主役はモグラではなく別の動物です。昨年ある山中に小型哺乳類の調査に出かけることがありました。調査地の林道を歩いていると道のいたるところ、特に両端の落ち葉と土が片端から掘り返された跡がありました。どうやらイノシシの仕業のようです。堆積した落ち葉の下にいるミミズや昆虫を探したようです。イノシシの食性は木の根や果実、タケノコのような植物性のものをメインに昆虫やミミズ、その他小動物も食べる雑食です。以前ミミズを食べるミゾゴイを紹介しましたが、今回は番外編でミミズも食べるイノシシのある食性についてコラムを書きたいと思います。

 昨年末実家の母から電話が。「じいちゃんのとこのミカンを何か動物に食べられて困っている。何だろうか?」と。私の実家は香川ですが、祖父は愛媛でミカンを栽培しています。「きれいに皮をむいて食べているからじいちゃんはアライグマだっていうんだけど。」しばらくして画像が送られてきました。確かにミカンの木の下に散らばるたくさんのミカンの皮。しかも結構きれいに実だけなくなっています。確かに愛媛県でも近年アライグマの生息が確認されているようですが…あまりにも食べた量が多すぎる。群れでアライグマが来ないとこんなことにはならないでしょう。

ミカン木の下に散らばるミカンの皮。鳥ならここまできれいに皮をむけないでしょうし、こんなに大量に食べることは考えにくいでしょう。

 そこで私はある検証をしてみました。動物園にいる祖父の畑に出没する可能性のある動物たちにミカンを丸ごと与え、きれいにミカンの皮をむいて食べる動物はどれか調べるのです。与えてみたのはアライグマ、タヌキ、テン、ニホンザル、イノシシです。どの種も野生下で果実を食べることのある動物たちです。まずテンですが半日後もミカンはきれいにそのままでした。タヌキやニホンザルは皮をむいて食べていましたが皮はこっぱみじんに。最重要容疑者のアライグマですが、皮はむいて食べましたがそこまで好んでないような気がしました。
 最後に残ったのがイノシシです。確かに量は食べるでしょうが蹄のあるあの足ではなぁ…と思いつつイノシシにミカンを与えてみました。するとどうでしょう。器用に鼻先でミカンを転がし少し皮に亀裂を入れたと思ったら前足で皮を抑え中身だけをあっという間に食べてしまいました。

長年動物園で動物を見てきた園長や先輩飼育員にイノシシにミカンを丸ごと与えたらどうやって食べると思うか聞いてみると、みんな一様に「そのまま皮ごと食べるのでは?」という答えが返ってきました。そこで私はビデオでその様子を撮影し、見せるとみんなびっくり。まさか偶蹄類であるイノシシが前足をあそこまで器用に使うとは思いませんでした。後日ミカンを枝についたまま飼育場につるしてみたところやはり枝から実を落とし、皮をむいて食べる姿が観察できました。

犯人はイノシシの可能性が高いのではないかと母に連絡したところ、数年前からイノシシが畑に出没するので対策はしていたんだけどと。まだ祖父のミカン畑ではイノシシのほうが上手のようです。現在当園で飼育中のイノシシは展示していませんが、いずれこの動物のおもしろさを皆さんにお伝えすることができればと思っています。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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