日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.11 モグラの人工トンネル (前編)

2014.9.4

 自然でのモグラのトンネルについてはコラムVol.4で取り上げましたが、今回は私が今まで作ったモグラトンネルや展示の取り組みについて紹介したいと思います。学生の頃、研究用で捕獲したモグラを見せてもらって以来、もっと生きたモグラを間近で見ていたいと思うようになりました。飼育しているモグラを見るためだけに東京の動物園へ見に行ったこともあります。飼育係になってからは普通に私たちのまわりにすんでいるモグラを見るのに東京や広島まで出かけて行くのは納得できない。どうしても宮崎の動物園でも生きたモグラを展示したい、そんなことを思っていました。
 はじめて私がモグラの展示に取り組んだのは2009年、今から約5年前のことです。その頃私は1頭の保護されたコウベモグラをバックヤードで飼育していました。バックヤードでは水槽でモグラを飼っていましたがせっかくだから来園者のみなさんにも見せたい、中には私のように興味を持つ人もいるはずだと考えるようになりました。
モグラを展示するには室内で展示するスペースが必要です。現モグラ展示スペースと同じ室内展示場でニワトリのヒナを展示するスペースが空いていたのでここを使わせてもらうことにしました。

モグラ展示ケース1号

モグラ展示ケース1号

 そこにモグラ展示ケース1号を設置しました。1号の半分はネットを丸めた人工のトンネル、残り半分は土の入ったケージからできています。つなぎには透明の塩ビパイプを使いました。当初のモグラトンネルは大体こんなものだろう、と直径5センチで作りました。さてモグラを入れたらどんなふうに動くのだろうとワクワクしながら見ていると、モグラはほとんどネットのトンネルを通らず土の中に潜っていきました。ある程度すると土の中にモグラのトンネルができているのですが土の中に黒っぽいモグラがいてもどこにいるやらほとんどわかりません。さらにモグラはほとんど動きませんでした。そんな状態ですからほとんど足を止めてモグラを観察する人はいませんでした。さらに直径5センチというトンネル幅はモグラにとって大きすぎるらしく落ち着かないようでこれが動かない原因のひとつだったのではないかと後になって思います。
 これじゃモグラに興味を持ってくれる人は出てこない、新しいモグラ展示を作ろうということになりました。そこで今度は土の部分をはぶいてネットのトンネルと寝床、エサ場と水場というシンプル構造のモグラトンネル2号を製作しました。中央に寝床を配置し、その左右にエサ場と水場を設けました。このように配置することでモグラがエサを食べたいときは左に、水を飲みたいときには右に移動しなければなりませんから動いているモグラのすがたを少しでも長く観察できるのではないかと考えたのです。さらに1号のトンネル幅を反省して今度は直径4センチで製作しました。

モグラトンネル2号。このトンネルは横に大きくヒヨコの展示スペースに収まりきらなかったので表の展示スペースに特別製(単に私がありあわせで自作しただけ)ケースに設置しました。

モグラトンネル2号。このトンネルは横に大きくヒヨコの展示スペースに収まりきらなかったので表の展示スペースに特別製(単に私がありあわせで自作しただけ)ケースに設置しました。

 今度こそ!と期待を胸にモグラを入れてみると…あらら。モグラは思ったより動きません。ほとんど寝床でじっとしています。ごくたまに動いていることもありましたがエサを食べに出てきたりはもっぱら閉園後がほとんどでした。エサを与える場所を変えてみたり活き餌を与えてみたりしましたがモグラはほとんど動いてくれませんでした。そうこうしているうちに展示していたモグラが死んでしまい、私のモグラ展示は一旦中断せざるを得なくなってしまったのです。しかし私はどうしてもモグラ展示をあきらめることができずにモグラのいなくなった展示ケースに「喪中」の札を張り付け、今度こそトンネルを動き回るモグラを展示するんだと心に誓い、ケースは展示スペースにモグラ不在のまま置いておくことにしました。この後にモグラトンネル3号が誕生するのですが、それはまた次回に紹介したいと思います。
 さて、話は大きくそれてしまいますが現在宮崎市フェニックス自然動物園では「宮崎の野生動物展~しってる?ミゾゴイ!?」を開催中です。昨年に引き続き当園で保護活動を行っている希少鳥類ミゾゴイをはじめ、モグラから天然記念物のヤマネやニホンカモシカまで宮崎県の野生動物について紹介する企画展です。モグラはもちろんなのですがもう一つおもしろい動物を少しだけ紹介します。

カヤネズミ展示コーナー。チガヤを丸めた巣があるのがわかりますか?

カヤネズミ展示コーナー。チガヤを丸めた巣があるのがわかりますか?

 それは「カヤネズミ」。カヤネズミはヨーロッパからアジアにかけて広くすんでいる体重わずか8グラム、日本で一番小さなネズミです。このカヤネズミのおもしろいところは子育てをする巣にあります。出産をひかえたメス親はわずか1~2日ほどでススキやチガヤ等を使ってボール状の巣を作ります。そしてその中で子どもを産み、育てます。しかし飼育しているカヤネズミにこのボール状の巣(球巣)を作らせ、子育てまでさせることは意外にうまくいきません。今回カヤネズミを展示するにあたって「久住牧野の博物館」の増田先生と石若先生に協力していただき、展示ケース内で球巣を作って出産、子どもが巣から出てくる一連のようすを観察できる展示コーナーを作りました。石若先生曰く、全国の動物園でカヤネズミを見ることができるところはいくつかあるけれど球巣と子育てまで観察できるのはそうないんじゃないかとおっしゃっておられました。企画展は9月30日まで開催しています。モグラやカヤネズミ、その他いろいろな宮崎の野生動物について知ってそして考えることができると思います。ぜひ足を運んでみてください。
 (カヤネズミについて興味がある方は石若先生がカヤネズミについて紹介しているページがあります→http://www.kuju-ecomuseum.org/kaya.html)

産まれて11日目のカヤネズミのこども。はじめて巣から顔を出しました。

産まれて11日目のカヤネズミのこども。はじめて巣から顔を出しました。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。