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Vol.18 白いネズミ

2016.2.21

 少し前の話になりますが、新潟にいる大学の後輩から連絡がありました。白いクマネズミを捕獲した、画像を送るから見てみてくれとのことでした。
 送られてきた画像を見ると確かに白い。目が黒いのでアルビノ(先天的にメラニン色素のない個体;例えば実験用マウスやカイウサギの日本白色種など)ではないようでした。しかしよく画像とにらめっこしていると、クマネズミではなくてドブネズミのような気がしてきました。私はドブネズミを家畜化したラットが大好きで以前たくさん飼育したことがあります。「これ、ドブネズミじゃないの?」とたずねると、「やっぱりそう思います?」との回答。後輩君は私以上にネズミ経験値の高い人なのに彼でも迷ってしまうとは。話をしているうち、若いドブネズミか成獣(オトナ)のクマネズミのどちらかだろうということになり、報告のある外部計測データと比べてみます、ということになりました。
 その後、後輩君から連絡があり、データを照らしあわせたところドブネズミだということでした。白化個体だったので余計に迷ってしまったのかもしれません。完全にオトナ同士だとここまで悩むこともないのですが…。ただし、多くの動物は種ごとにそれぞれ体の特徴に違いがあります。私たちはその違いを体の計測値を使って区別します。コラムVol.5で紹介したミゾゴイも幼鳥のころは黒っぽくて横斑があり、オトナとは全く別の種類のように見えますが、近縁のゴイサギと比べて明らかにクチバシが短いのですぐ区別できます。今回のドブネズミでは、私が第一印象で感じたのはやや小振りな耳の長さでした。実測値は19mmで、報告されている計測値はドブネズミ18-21mm、クマネズミ21-23mm※とされています。最も決定的だったのは後足長(かかとから指先までの直線の長さ)で、35mmありました。ドブネズミは34-37mm、クマネズミは30-32mmとあります。若いドブネズミだとしてすでにクマネズミ基準を超えていますから、やはりドブネズミだったのでしょう(実際はいろんな部分のデータから総合的に判断しました)。
 このように野生動物をあつかうときはもちろんですが、動物園の動物でも後日、あれは実は違う種類の動物だったなんことはあり得る話です。そのような意味でも動物のからだの特徴や計測値を記録に残すということはとても大事なことなんだなと、改めて思いました。

新潟県佐渡市で捕獲された白いドブネズミ(メス)。完全な白色ではなく、頭から背中にかけて薄い茶色がかかっています。目は黒色をしています。

新潟県佐渡市で捕獲された白いドブネズミ(メス)。完全な白色ではなく、頭から背中にかけて薄い茶色がかかっています。目は黒色をしています。

※リス・ネズミハンドブック 飯島正広・土屋公幸 著 文一総合出版

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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