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Vol.5 モグラとミゾゴイ

2013.6.22

モグラを飼育していて思わぬところでモグラと共通点をみつけた動物がいます。
その動物はミゾゴイ。
 ミゾゴイはサギの仲間で生息数が約1000羽とも言われていて、IUCNレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅰ類に指定されている貴重な鳥です。韓国での営巣記録が2010年に1例だけ報告されていますが、繁殖はほとんどが日本で行われているそうです。にもかかわらずその生態はほとんど解明されておらず、謎の鳥として知られています。
 そんなミゾゴイを宮崎市フェニックス自然動物園では現在2羽飼育しています。この2羽は県内で保護収容された個体です。

県内で保護され、宮崎市フェニックス自然動物園で飼育中のミゾゴイ。(この個体は事故で左の翼を失いました。)一見茶色の地味なサギですが、サギの仲間でも変わった生態を持つこの鳥はとても魅力的だと思います。

ふつうサギの仲間は野生下では魚などを捕えて食べているので、動物園で飼育する場合は魚にビタミン剤を添加したものなどを与えて飼育します

園内で頻繁に見かけるゴイサギ。ミゾゴイとは近縁種ですがその生態は全く異なります。

ところが、ミゾゴイはサギの仲間でもかなりの偏食家です。Kawakami (2005)の報告では、ミゾゴイのはき出したペリット(骨や昆虫の外骨格など消化できない部分をはき出したもの)を調べてみると、そのほとんどは陸生の貝類の殻や土壌昆虫・サワガニの外骨格だったそうで、魚の骨は見つからなかったそうです。また、よくミミズを捕食しているすがたが観察されています。(ミミズには外骨格がないのでKawakami(2005)のペリットの分析だけではミミズを捕食しているかどうかはわからなかったようです。)

ミゾゴイは危険を感じると相手に対して正面を向いて木のように細長く「木のふり(擬態)」をします。こちらは昨年保護された個体。あまり人に馴れていないので飼育員が近づくとこの通り。

当園ではじめて保護個体を収容した時も当初はミミズを与えていましたが、毎日体重500グラムくらいのミゾゴイを満足させるほどのミミズを毎日確保することはできません。そこで徐々に代用食へと切り替えていくことにしました。当初与えたのは魚のキビナゴにビタミン剤を加え、補食としてピンクマウス(ハツカネズミの毛の生えていないくらいの子ども)を数匹与えてみました。ミゾゴイは餌づいてしまいさえすれば固形飼料のような加工品は好まないようですが、大抵のものは食べるようになります。あっさり食べるようになってくれたのでこれでいけると思っていました。

どこかにミゾゴイがいます。(ミゾゴイ自身は木になったつもりです。)

ところが1か月ほどして立つとフラフラとふらつくようになってしまいました。そのときは獣医が補液と抗生剤を注射すると翌日いつものように元気になっていたので何か体調が悪かったのではないかと安心していました。しかし、またその1ヶ月後同じような症状が現れました。前回と同じ処置をするとやはり翌日には回復しています。これは病気ではなくて餌の中の微量な栄養素が欠乏しているのではないだろうかと考えはじめました。

モグラとミゾゴイ、好物は同じ?

そのころちょうど動物園でモグラの飼育展示を始めたころで、Vol.3で紹介したようにミミズを主に食べているモグラの代用食で鶏の心臓(トリハツ)を与えてうまくいっていました。そこでトリハツが野生でミミズなどを食べているミゾゴイにも使えるかもと考え、これを与えてみることにしました。すると1か月に1度体調を崩すことはなくなり、順調にその個体は飼育4年を経過しています。
モグラを飼育していて思わぬところにミゾゴイ飼育にも繋がる所があったのです。

現在ミゾゴイに与えているエサの1例。トリハツとキビナゴにビタミン剤を加えたものです。

しかし、エサ中のどの成分が有効であったかは未だ不明です。今後はミゾゴイには何が必須栄養素であるかなどの検討も課題です。

現在、宮崎市フェニックス自然動物園では野生下でひっそりと姿を消しつつある貴重な鳥ミゾゴイの保全を目的として飼育技術を確立し、やがては飼育下での繁殖を目指して調査・研究に取り組み始めたところです。
 また、動物園でのミゾゴイの保全に向けた活動の取り組みや、宮崎県の野生動物保全活動を紹介する「ミゾゴイと宮崎の野生動物の保全展」を7月20日~10月1日まで開催する予定です。この展示から少しでもミゾゴイや野生動物について興味を持ってもらい、今後のヒトと野生動物との関わり方について考えるきっかけになればいいなと思っています。ぜひ足を運んでみてください。

著者プロフィール

渡部大介(わたなべ・だいすけ)

1980年生まれ香川県出身。
宮崎大学大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了、農学博士。
2005年より宮崎市フェニックス自然動物園勤務。
趣味は飼育できる動物は何でも飼育してみることと標本作製。中学時代は小鳥飼育に夢中になりすぎて先生につけられたあだ名が「ジュウシマツ」。

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