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よみがえれ伝馬船

2013.9.5

「花に嵐のたとえもあるぞ・・・」、春分の日は朝から横なぐりの雨だった。小名浜港の一角で大国魂神社の山名宮司の厳かな神事の進水式を経て、伝馬船「第一海友丸」がアクアマリンのある第二埠頭の浮き桟橋から進水した。豊間海友会の腕に覚えのある会員がコーチ役となっていわき海星高校のカッター部員が伝馬船漕ぎに挑戦した。昨年の12月から伝馬船づくりに取り組んだ船大工の佐藤さんも30年ぶりに手塩にかけた伝馬船の船出に温厚な顔をほころばせていた。

私達は、より快適な生活を求めて、突っ走ってきた結果、失ったものが多い。取り返しのつかないものも多い。自然も文化も。それを恢復することが地域の活性化策である。それは、希少動物の保全にもつながる。よみがえれ「生きた化石」、よみがえれ「鯨文化」、よみがえれ「川ガキ、かっぱ」、よみがえれ「カエルの歌」、そして、よみがえれ「伝馬船」。アクアマリンふくしまは、よみがえれシリーズを、様々な展示や教育普及活動のテーマとして、失われつつある伝統文化や自然環境の快復を目指している。

伝馬船工房

おりしも、福島県の文化スポーツ局は、「文化振興による地域活性化」の施策に2006年から取り組んでいる。毎年応募のあった文化活動のプレゼンテーションを経てモデル事業を選ぶ。そのうち、可能性のあるモデル事業を選んで経費の一部を補助してきた。埋もれた伝統文化の発掘する優れた施策であると思った。筆者は浜通り担当の選定委員の一人に任命されている。


伝馬船完成

一昨年は浜通りからはアクアマリンふくしま応募の「大漁旗デザインコンペ」が選ばれた。今年は、四ツ倉豊間海友会の「伝馬船製作技術の伝承と漕法の伝習」ほかが選ばれた。大国魂神社にかつて伝馬船の漕ぎ手だった豊間海友会の海の男達参集した。伝馬船の伝、伝統文化の伝を結びつけてプロジェクト「伝」が決まった。伝馬船の船大工は80歳を超えるご高齢で、伝馬船づくりは30年来のことだというが腕は確かだった。第一号の伝馬船の材料は同会員の納屋に何十年も眠っていた杉材を調達した。伝馬船完成後の漕法の伝習には地元いわき海星高校の校長が一役買ってでた。カッター部の教員がたくましい生徒を参加させた。

昨年、11月7日にアクアマリンふくしまのシアターを会場に「文化と地域づくりシンポジウム」~文化力で地域から福島を元気にする~というシンポジウムを開催した。モデル事業の報告とパネルデイスカッションによって文化振興の成果を総括をした。このとき、アクアマリンふくしまの海洋文化展示コーナーにある伝馬船シミュレーターは漕法伝習の場となった。豊間海友会の老漁師がいわき海星高校の生徒に漕法を伝授した。この風景は文化伝承のまさにモデルとなった。


事業の継続のために三和の山中から樹齢50年の杉の大木を3本伐採した。海の男達が阿武隈山地に入り、山の男達が協力した。今年も、第二海友丸の造船にとりかかる。あぶくまの山の男と浜通りの海の男の交流が実現し、造船技術や漕法の伝習にも展望がもてるようになった。第一海友丸はアクアマリンふくしまの蛇の目ビーチの浜に係留する。海に漕ぎ出す前の漕法の伝習の場となるであろう。節目、節目の神事が高齢の人々を動かし、よみがえらせた。山名宮司に敬意を表したい。アクアマリンふくしまは、よみがえれシリーズを続けることによって地域の文化交流拠点の機能を果たしていく。

阿武隈山中杉の伐採 プロジェクト伝の面々

※ この文章は2009年5月9日に安部館長が書かれたもので、テキストならびに館の外観などは当時のまま掲載しています

著者プロフィール

安部義孝(あべ・よしたか)

1940年東京都生まれ
東京水産大学増殖学科魚類学教室卒業後、東京都恩賜上野動物園水族館勤務
1968-69年、クウェート科学研究所所員となる
帰国後、東京都多摩動物園昆虫園勤務を経て、東京都葛西臨海水族園長、東京都恩賜上野動物園長を歴任
2000年より(財)ふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま館長
主な著書に「クウェートの魚」など

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