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トムソーヤープロジェクトのすすめ

2011.9.5

環境省が新・生物多様性国家戦略を発表した。希少生物の保全に加えて身近な里地里山の自然や干潟等湿地の保全、自然の再生・修復、これらに対する市民参加などがうたわれている。 まずレクリエーションありきだった動物園水族館が、保全戦略のなかでも希少動物保全や環境教育の場として認知されるようになった。

動物園水族館での環境教育は自然保護の啓蒙から一歩踏み出して自然の維持可能な利用、「命」を食べるところまで体験させる「命の教育」の場となるべきであると考えている。


過剰な都市化によって自然体験の機会を奪われた子供達の間に自然嫌いさえ増えている。五感で自然を体験することは人類が何百万年も繰り返しやってきた生得的なものである。 その機会の無いまま成長した子供たちが心に何らかの変調をきたすのは何の不思議もない。異常事件の頻発はその危険信号とみることができる。

学校で鶏を飼育し、食べるところまで生徒に体験させようという野心的な試みが、私にはそう思えたのだが、学校関係者に否定され、とん挫したという。昨年十一月の朝日新聞記事である。総合的学習の先駆けとしての取り組みだった。
「今の子供たちは生や死のリアルな現場から過度に隔離されており、かえって「命」に対する感覚がいびつになっている。」という金沢大学教育学部の村井淳志助教授に対して、否定論者は「教育者としてやってはいけない。疑問より怒りを覚えた。」と言下に否定していた。
「命の教育」は理性的な判断力がついてからでよいのであろうか。一体誰が責任をもってやろうというのだろうか。

アメリカにも同様の危機感がある。西海岸のカリフォルニア州のモントレー湾水族館では複数の常設タッチプールに大規模な幼児の体験ゾーン、キッズアクアリウムの企画展示をロングランで開催中だ。若い親子の人気を博している。

昨年、アクアマリンふくしまでは同水族館の企画担当者を招いて、幼児水族館の可能性について論議した。アメリカ流の討論を積み重ねてキッズアクアリウム日本バージョンをまとめあげた。

マークトウェインの「トムソーヤーの冒険」は少年期の自然体験に満ち溢れている。私はこれをトムソーヤープロジェクトと名付けた。

※ この文章は2002年6月26日に安部館長が書かれたもので、テキストならびに館の外観などは当時のまま掲載しています

著者プロフィール

安部義孝(あべ・よしたか)

1940年東京都生まれ
東京水産大学増殖学科魚類学教室卒業後、東京都恩賜上野動物園水族館勤務
1968-69年、クウェート科学研究所所員となる
帰国後、東京都多摩動物園昆虫園勤務を経て、東京都葛西臨海水族園長、東京都恩賜上野動物園長を歴任
2000年より(財)ふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま館長
主な著書に「クウェートの魚」など

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