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いわき市の魚・めひかり制定の意義

2011.9.15

魚類は約25000種類の大動物群だが、そのうち一生の生活ぶりが解明されている種類はわずか数百種にすぎない。アクアマリンが取り組んだサンマのような水産上重要種でもよくわからないところがあった。海洋は宇宙に匹敵するほど謎につつまれている。

2001年10月にいわき市は市の魚にアオメエソを条例制定した。つづいて公募によってシンボルマークのデザインと愛称を決めた。愛称はメピカリ。制定に当たっては選考委員会が設けられた。いわき市の水産振興室が実務を担当した。漁業関係者、水産試験場、消費者を代表する選定委員の中にあって、水族館に携わってきた筆者が選考委員長に任命された。漁獲量、金額共にメジャーなカツオは土佐、サンマは気仙沼、アンコウは常磐がすでにブランド化していた。ベニズワイは日本列島を横断する。より高価な市場を求めて魚介類が移動する。選考委員会の議論は生産者委員と消費者委員の間で市のシンボル制定の認識が一致しなかった。議論に終止符を打ったのは市民アンケートの結果であった。メヒカリがカツオやサンマ、ヤナギムシガレイを大きく引き離して廉価でおいしいと支持された。制定の経緯は各紙が伝えたが、私自身日本の水産のありかたを考えさせられたイベントであった。アオメエソの市の魚制定はいわきの水産に光をともす乾坤一擲の策であると思った。

農林水産業が斜陽になって久しく、なにより従事者の高齢化かからすれば農業も水産も10年後には日没が迫っていると警鐘をならすむきさえある。かつては遠洋漁業によって世界の水産資源を開発してきた日本であったが、いまや水産物の自給率さえ45%そこそこである。メヒカリ制定の意義は庶民の魚がシンボルとなったことばかりでなく1億トンの世界の漁獲量に対して数千万トンの及ぶというバイキャッチに光をあてたことである。

いわき市からメヒカリの生態調査研究がふくしま海洋科学館に委託された。ふくしま海洋科学館と福島県水産試験場の間では、双方が水生生物の飼育繁殖施設を持つ利点を活かして、共通の技術を持つ職員の協働がはじまった。水族館と水産研究機関との間に技術交流の機会が持たれるようになった。

ここに初年度のメヒカリ調査研究がとりまとめられた。まだメヒカリの生態の一部に光をあてたにすぎないが、このような取り組みを可能にした四家市長をはじめ市の水産振興室の皆様に敬意を表します。

※ この文章は2003年3月31日に安部館長が書かれたもので、テキストならびに館の外観などは当時のまま掲載しています

著者プロフィール

安部義孝(あべ・よしたか)

1940年東京都生まれ
東京水産大学増殖学科魚類学教室卒業後、東京都恩賜上野動物園水族館勤務
1968-69年、クウェート科学研究所所員となる
帰国後、東京都多摩動物園昆虫園勤務を経て、東京都葛西臨海水族園長、東京都恩賜上野動物園長を歴任
2000年より(財)ふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま館長
主な著書に「クウェートの魚」など

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