日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.19 フィリピンサマル島2 バットキャンプ

2019.4.17

 サマル島でのバットキャンプ2011も中盤。1月26日はフェリーターミナル近くのホテルに場所を移してコウモリ保護フォーラムがあった。
 フォーラムで印象に残ったのは、オオコウモリが食料として狩猟されている現状の発表で、東南アジアでは大きな問題となっている。また、フィリピンのコウモリは75種、そのうち27種がオオコウモリ、さすが熱帯の国であるが、各地でオオコウモリによる果樹園の食害が問題になっている。これに対して、ニナさんやティガさんから、オオコウモリに好まれ一年中実をつけるナンヨウザクラを果樹園の近くに植えると食害が緩和される、というインドやネグロス島での試みの発表があった。後日、ニナさんから文献を紹介してもらったのだが、ナンヨウザクラは南米からの移入種なので、移入種があまり繁栄しては、また別の問題が生じる原因となってしまう。オーストラリアのクリスマス島でも裸地の緑化にナンヨウザクラがずいぶん使われていたのを見たのだが、その時もちょっと心配になった記憶がある。

コウモリ保護フォーラムの様子

 モンフォートコウモリ洞窟とBat Conservation International(BCI)の協力プロジェクトの発表では、サーモカメラを使った研究も興味深かった。雄の方が体温が高いため、雌雄の判別もできるそうだ。また雄は子どもを攻撃する行動が見られ、過密化によるストレスが想像される。さらに洞窟の壁を削って食べる行動が見られ、ミネラルの補給なのかもしれないとのことだった。

サーモカメラを試している学生

 BCIへの高額寄付者を対象とした旅行ツアーの引率でサマル島滞在中のBCI会長ニナさんも世界のコウモリ保護、主に北アメリカで冬眠中のコウモリにPseudogymnoascus destructansという真菌類がとりついて数百万頭ものコウモリが死んでいる白鼻症候群について話をした。いまだに効果的な治療法がないのだが、これによりコウモリが注目を浴びることになったことが唯一良かった点だという。

 終了後、参加者はコウモリ公園に戻って、コウモリの夕方の飛びたちを見た。その後VIPは海辺の大きな東屋で、その他の一般参加者やワークショップ参加者は芝生に張った大きなテントの下で、用意されたディナーを食べる。われわれはVIP用に入れてもらえた。フィリピンのお祭りらしく豚の丸焼きがあり、欧米の人は好みではないようだが、ノーマさんも含めたフィリピンの人達、そしてわれわれもパリパリに焼かれた皮の部分を楽しんだ。

ディナーのメイン豚の丸焼きとその後の大会宣言セレモニー

 ディナーの後は休憩所でBCI会長のニナさん、ノーマさん、ワークショップ参加者による大会宣言のセレモニーがあり、その後の自由時間には、われわれの日本のコウモリ展示についてもいろいろ質問があった。オガサワラオオコウモリ切手やコウモリ手ぬぐい、コウモリがモデルのポケモングッズの評判がよかった。

 1月27日は日本の日ということで、ダバオにある日系人のためのミンダナオ国際大学の学生たちが70人ほどやってきた。カレッジの2年生だが、日本と教育制度が違い日本だと高校3年生くらいの年頃だ。休憩所でBCI会長のニナさんの挨拶に続いてわれわれも紹介されて挨拶をする。コウモリ洞窟周辺に植樹をして、コウモリ洞窟の見学。洞窟の臭いに鼻を押さえている子もいる。そのあとコウモリの折り紙と紙飛行機をする。

折り紙をする学生達

 昼休みは、お弁当を海辺の東屋で食べたり、ジップラインをやる子もいたりして、午後はBCIのデイブさんがBCIとコウモリ洞窟のお話、リックさん他の研究者のコウモリのお話と質問の時間があり、その後サーモカメラや暗視鏡を試してみる。2組に分かれてコウモリ洞窟の説明があったり機材を使って洞窟の中をのぞいたりする。

洞窟をのぞき込む学生達。洞窟の縁までびっしりとジョフロワルーセットオオコウモリがいる

 おやつのあとはノーマさんが登場。クイズやじゃんけんで何人かの学生にTシャツがプレゼントされる。われわれも手ぬぐいを提供する。さらにおかゆも振る舞われて終了。盛りだくさんな1日だった。この日は近くのリゾートホテルで開催されていた洞窟コウモリワークショップの最終日でもあって、そちらでお別れパーティをやっている。一緒に泊まっていた研究者たちやスタッフはみんなそちらに行ってしまい、コックさんは休暇を取ったので、われわれの夕食はこのおかゆとコカコーラという組み合わせになった。

 1月28日からは、海側の東屋で学校の先生たち20人ほどが集まってワークショップだ。ちらっとのぞいたときは、ネイチャーゲームをやっていた。1月29日はダバオクリスチャンスクールから中国系の生徒が来て、やはり植樹をしたり、コウモリ観察をしたりした。この日で学校の先生たちのワークショップも終わるので、大部分のスタッフは夕方帰っていった。明日からはティーンズキャンプがあって、いかだを作るらしく、夕方、母屋の前で子どもたちがペットボトルを洗っていた。
 28日からは、われわれは特に役目もないので、洞窟でコウモリ撮影ざんまい。出産間際でお腹がはち切れそうになってひょうたんみたいな体型のメスがたくさんいる。特定の場所にたくさん見られるのは、出産雌はまとまる傾向があるからだろうか。

出産間近のジョフロワルーセットオオコウモリの雌

 生まれたての灰色の赤ちゃんを抱いているお母さんもいる。BCIのリックさんによれば、なぜか赤ちゃんを食べてしまうのを目撃したそうだ。雄が出産間近の雌と交尾しようとしたり、出産中もちょっかいを出してきたり、過密によってそんなストレスがあるせいかもしれない。リックさんはビデオで赤ちゃんが生まれるところを撮ったというので、われわれもがんばって見ていた。出産するときは何重にも重なったコウモリの群れの一番外側に雌は出てくる。30分くらいかけて力んだ後、頭が出てきた。さらに20分くらいかけてでてきたのは、白い血の気がないまったく動かない赤ちゃんコウモリだった。母親はしばらく舐めていたが、他のコウモリに邪魔されてやめた。出産後10分くらいで胎盤が出てくると母親は食べ始めたが、途中で他の2頭のコウモリが奪って争って食べ始めた。胎盤とへその緒を食べると、死産らしい赤ちゃんは洞窟の底に落としてしまった。
 1月30日からは対岸のダバオの郊外のマラゴスガーデンリゾートに滞在したのだが、元気な赤ちゃんの出産シーンがとれなかったのが心残りで、帰国する2月3日にもう一度サマル島に渡ってコウモリ洞窟に戻り、今度は元気な赤ちゃんが生まれる出産シーンを撮影することができた。

出産中の雌。赤ちゃんの頭が出てきた。コウモリの種類によっては、母親は頭を上にして出産したり、逆子で生まれることもある

赤ちゃんの全身が出てきた。この後胎盤が出てくる

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。