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Vol.22 ロタ島2 バード&バットウォッチング

2019.7.14

 ロタ島と言えば、バードウォッチングの島だ。1990年代後半にロタ島に来たときは、オオコウモリがあまり観察できない分、バードウォッチングをしていた。その頃からバードウォッチングが目的の観光客は増えていて、探鳥ツアーもあったのだが、今は交通の便が悪くなりかなり減ってしまったようだ。今回の旅行中も、本格的にバードウォッチングをしている旅行者は見かけなかった。

 海鳥を見るのなら、おすすめはサガガガ岬の崖の上の展望台だ。

展望台から西方向の眺め マリアナオオコウモリが飛んでいる

 眼下の森はサンクチュアリとなっていて、樹冠ではアカアシカツオドリが営巣している。セサミストリートのビッグバードを思わせる、もこもこの真っ白なヒナが巣で留守番しているのを、脅かさずに見下ろすことができる。風向きがいいと、崖を吹き上がる風に乗って、アカアシカツオドリ、カツオドリ、アカオネッタイチョウ、シラオネッタイチョウ、シロアジサシ、クロアジサシ、そしてたまにはマリアナオオコウモリも、次々と手が届きそうな近さで目の前に浮かび上がってくる。

アカアシカツオドリ

アカオネッタイチョウ

シラオネッタイチョウ

 展望台から崖の縁に沿って下る遊歩道があり、その途中からの方が下の森がよく見えるのだが、残念ながら今回訪れたときには通行止めになっていた。台風のせいか、それとも経年劣化したのか、一部道が崩壊していたり、全体として手すりもかなりぼろぼろになっているためだろう。すぐ下の斜面の木々が育ったので、展望台からではちょっと探鳥しづらい。
 今回、この展望台に何回かバード&バットウォッチングに行ったのだが、1度だけ、管理をしている人達が草刈りに来ていて、その時だけ遊歩道を少し下まで行かせてくれた。ちょっと降りるだけで、下の展望がずいぶんと良くなる。

通行止めの遊歩道

 1996年にこの斜面から海岸を飛ぶアカアシカツオドリなどの写真を撮って、帰国してから現像してみたら、そのうちの一枚になぜかマリアナオオコウモリが写っていた。下の森にはオオコウモリのコロニーがあったのだ。帰国して現像して初めてオオコウモリが写っているのに気がつくというのは、デジタルカメラの世代にはありえない話だろう。ただしここのコロニーは2016年に消滅して、今回もオオコウモリは見られたものの、そんなにたくさんの個体はいないようだ。

1996年に撮影したマリアナオオコウモリ

 このほかに島の北側のアズ・マンモス・クリフも海鳥を観察するのにいい場所だ。今回はグンカンドリの若鳥2羽がアカアシカツオドリを追いかけ回して、せっかく取った魚を吐き出させて奪うのが観察できた。

グンカンドリsp.2羽とアカアシカツオドリ

 陸の鳥では、ナンヨウショウビンやカラスモドキ、スズメが目立つ。
 ナンヨウショウビンは2017-2018年に那覇の漫湖に現れてバードウォッチャーの間で評判になった。2017年11月にわれわれが漫湖を訪れたときには、テレビ局から撮影隊が来ていた。しかしここロタ島では、町中でも普通に電線などにとまっているのが見られる。大きな声で鳴く賑やかな鳥だ。

ナンヨウショウビン

 オウチュウも日本で現れると珍鳥だが、ここではサトウキビの害虫駆除のために移入されて町中も含めて島のいたる所で見られる。なかなか気が強くて、自分より大きな鳥も追い払うことがあり、ときにはマリアナオオコウモリまで追い回すやっかいな鳥だ。

オウチュウ

 ロタ島には、留鳥は20種ちょっと、小さな海洋島ということもあって、陸の鳥の種類は限られている。今回は、オオコウモリが頻繁に観察できたということもあって、陸の鳥を意識して探す機会があまりなく、見た種数は少なかったのだが、どうも理由はそれだけではなさそうだ。
 1982年から陸の鳥の調査が行われているのだが、2012年までの調査データで動向が推定できた12種のうち、7種は減少しているそうなのだ。特にロタ固有のクバリーガラスは1982年には1491羽が観察されたのに2012年には200羽未満となってしまった。クバリーガラスは森林棲で、90年代後半に来た頃は、サガガカ岬周辺の林でも見られたのだが、今回はとうとう一羽も見ることができなかった。減少の理由ははっきりしていない。この鳥はかつてグアムにも生息していたのだが、ミナミオオガシラという移入種のヘビによる捕食で絶滅している。このヘビがロタ島に入るとクバリーガラスにとっては絶望的な状況になるので、荷物に紛れて入り込んだときに備えて、港や空港の周りには捕獲用の罠がたくさん置いてある。
幸い、サン・ディエゴ動物園での飼育下繁殖がうまくいっているので、昨年は9羽をロタで放し、今年も放鳥する予定だという。また2005年からワシントン大学が現状把握と対策のために調査を続けていて、われわれがオオコウモリの撮影をしているときに、4WDの車に乗った4人組が通っていった。その後、彼らとは魚類野生生物局のオオコウモリ調査で話す機会があった。クバリーガラスはネコにやられたと思われる例もあるのだが、急激な減少はそれだけでは説明できないようで、原因は調査中だそうだ。いずれにせよどこでもノネコは在来生物にとって脅威なのだが、この島には獣医さんがいなくて、となりのサイパンに一人いるだけでは去勢避妊などでネコの個体数をコントロールするのは難しい。
 他の陸の鳥も、オウギビタキは1回だけしか見なかったし、ロタメジロは今回は見られなかった。ロタメジロも30年の間に個体数の増減が激しかったり分布がサバナ高原に限られていることもあって、今後が心配だ。

朝焼けのサガガガ岬をマリアナオオコウモリが飛ぶ

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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