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Vol.3 シンガポール動物園で野生のコウモリを見る

2017.12.11

 前回・前々回とクリスマス島でのバットウォッチングを書いたが、日本からクリスマス島へは直行便はない。クリスマス島に定期的に飛行機が飛んでいるのは、オーストラリアのパースからのみだ。東南アジア側からは、2009年当時はシンガポールからの便があったが、現在はジャカルタからの便になっていて、変更の可能性もあるので旅行の計画をたてるときには確認した方がいい。何しろわれわれが乗る予定の帰りの便は、クリスマス島滞在中にいつの間にか航空会社まで変更になってしまったのだ。
 クリスマス島でクロミミオオコウモリを毎日たっぷり見て帰る日の前日、鳥を見に出かけて、お昼過ぎにホテルへ戻ったら、今回の旅行の世話をしてくれたHさんからのメッセージがドアに挟んであった。翌日のシンガポール行き便は15時15分発のマレーシア航空MH8485便だったはずが、突然9時15分発になって、航空会社もシンガポール航空の子会社シルクエアーのMI287便となったそうだ。レンタカーを借りているのだが、島唯一のガソリンスタンドは午前中しかやってない曜日が多い。幸いにして今日は金曜日で17時までやっているので、今日中にガソリンを入れておくようにとのこと。もう半日あるつもりでいたので、行き残したところをあちこち行って、夜は荷づくりもしなくてはならず、あわただしい出立となった。

島唯一のガソリンスタンド

 翌朝ホテルをチェックアウトし、レンタカーも返却して、朝7時過ぎに空港へ行って発券してもらった搭乗券は、ペラペラの紙にコピーした紙切れで、名前や便名や座席は手書き。離島はいろいろ行ったけど、こういう超アナログな搭乗券は始めてだ。

搭乗券

 出発時間の変更については前から噂はあったとのことでHさんが気にして問い合わせてくれたのでよかったのだが、島内に滞在していたお客さんは皆乗れたのだろうか。万一シンガポール経由で帰れないと、オーストラリアのパース経由となり、時間もお金も大幅に増加する。物価が非常に高い島なので、食パンを買い込み、1日2食はそれにハムと薄切りキュウリを挟むくらい(レタスはひと玉7ドルするので挟めない)のサンドイッチで我慢していたのに、そんな節約は吹っ飛んでしまう。これからもクリスマス島への便は変更になる可能性があるとのことで、要注意だ。

シンガポールから到着した飛行機の貨物室からは、生鮮食品がたくさん出てきた。どうやら貨物が中心の路線らしい。

 さて、往復とも乗り継ぎでシンガポールに滞在したのだが、意外な場所で野生のコウモリを見ることができた。
 まず行きの滞在。日本からの飛行機は深夜にシンガポールに着いたのだが、更に一泊したので中一日が自由時間となった。シンガポール動物園ではfragile forestというコーナーにある大きな温室にジャワオオコウモリが放し飼いになっているとのことで、それを見に行った。来園者を恐れずにすぐ近くで平気で餌を食べたり寝ている。

檻の中のジャワオオコウモリ

 しばらく写真を撮ったりして温室を出ると、出口の庇の下にたくさんコウモリがぶら下がっている。もちろん温室の外である。コイヌガオフルーツコウモリのようだ。庇が椰子拭きになっていてぶら下がりやすいせいか、ねぐらになっていたのだ。よく見ると他の建物の軒下にもぶら下がっている。全部で100頭くらいはいただろうか。動物園内で野生のコウモリを見るのは、上野動物園などで夕方アブラコウモリが飛ぶのを見たことはあるが、寝ているのを見るのは初めてだ。

こんな場所にコイヌガオフルーツコウモリがいる

軒下にぶら下がるコイヌガオフルーツコウモリ

 シンガポール動物園は18時で終了する。歩いて5分のすぐとなりのナイトサファリという夜だけ開く動物園が19時から始まる。ちょうどハロウィーンの季節で小規模のコウモリ展示をやっていた。コウモリのはく製を見せて説明したり(ちょっと間違いがあったけど)、コウモリ折り紙、コウモリクイズなどがあった。

ナイトサファリで売っていたコウモリTシャツ

 ナイトサファリのマングローブウォークにはジャワオオコウモリが10頭ほどいて、餌を食べたり飛び回ったりしている。ゆったりした動きのジャワオオコウモリの合間をぬってホバリングしながら飛び回っている小さなオオコウモリがいると思ったら、これもまたコイヌガオフルーツコウモリだった。今度は檻の中だが、10頭くらいいた。そこらにいるのをスカウトしてきたのだろうか。
 クリスマス島からの帰りにもシンガポールに滞在した。野生のコウモリが見られるならばと、もう一度シンガポール動物園へ行って、今回は飼育されている動物はほとんど見ないで、椰子拭きの建物の軒下をひたすら見回ってコイヌガオフルーツコウモリ探し。改めて見てみると、あちこちのテントの下や屋根の下、温室の入口などにコイヌガオフルーツコウモリがいた。コイヌガオフルーツコウモリは雄がハーレムをつくるので、雄1頭と雌複数でいることが多い。幼獣を抱いた雌もいた。

コイヌガオフルーツコウモリの雄

 シンガポールはどこまでも高層ビルや鉄筋アパートが建て並ぶというイメージがあるのだが、野生動物観察に最適な自然保護区もある。2001年にはブキ・ティマ保護区のビジターセンター前で、20時すぎに駐車場を越えて100m以上の大ジャンプするマレーヒヨケザルを見ることができた。そして安くておいしいマレーシア系、中国系の簡易食堂や市場も魅力的だ。おすすめは豚のスペアリブや内臓を、漢方のハーブや醤油で煮込んだ肉骨茶。クリスマス島はファーストフードでさえ異常に高いので、滞在中貧しい食生活をしていた分、シンガポールでは食事を楽しんだ。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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