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Vol.10 コスタリカ1 憧れのコウモリ

2018.7.16

 コウモリは黒いと思っている人が多いのではないか。暗闇を飛んでいると皆黒っぽく見えてしまうし、ハロウィーンのコウモリ飾りは黒一色が普通だが、本当は褐色から明るい茶色のものが多い。日本のクビワオオコウモリPteropus dasymallusは顔から首、個体によっては腹まで明るいクリーム色をしていて、オスは首の両脇が鮮やかなオレンジ色の個体もいる。アジアにいるインドヒオドシコウモリKerivoula pictaはオレンジと黒の組み合わせだし、アフリカにはパンダのように白黒模様のコウモリもいる。
 そして真っ白な毛のコウモリも2種類いる。中米のカリブ海寄りに生息するシロヘラコウモリEctophylla albaと、中米と南米北部に生息するアルブシロサシオコウモリDiclidurus albusだ。このコウモリのイメージを塗り替えるような、白いコウモリを一度は見てみたい。中南米となると政情不安定だったり治安のよくない国も多く、夜出歩くのには不安があるが、コスタリカは比較的心配がない。エコツーリズム発祥の地だけに、自然観察を売り物にする宿も多いし、公用語はスペイン語だが、英語が通じるガイドもけっこういるようだ。
 コスタリカには、そのほかにも水面近くを泳ぐ魚をトロール漁のように足で引っかけてとるウオクイコウモリNoctilio leporinusや、哺乳類の血を食べるナミチスイコウモリDesmodus rotundusも生息している。そんな一度は見てみたい憧れのコウモリを期待して、2009年5月29日から6月7日まで滞在した。

 まずは首都のサンホセにあるINBio(生物多様性研究所)へ行く。コスタリカの様々なタイプの森林や湿地を再現した公園があって、ガイド付きツアーに参加して予習。コース沿いの木の上にはホフマンナマケモノやノドチャミユビナマケモノがいる。ナマケモノは一日に20時間眠り、30mしか移動しないとガイドは言っていたが、その目の前で活発に動いていた。ここの売店では、コスタリカのコウモリ図鑑が手に入った。

英語とスペイン語を併記しているコスタリカのコウモリ図鑑。事前に入手できなかったので、これだけでもINBioに来た価値があった。ぬいぐるみは、帰りの空港で入手したナミチスイコウモリ。

 翌日からの4泊はカリブ海沿岸のトルトゥゲーロ国立公園のすぐそばにあるパキーラ・ロッジに泊まる。サンホセからは車で4時間ほど走った後ボートに乗って運河から上陸する。ロッジの送迎付きツアーで行った。
 途中朝食休憩で入ったレストランの庭には、大木の根元に鮮やかな赤と紺色のカエルがいた。イチゴヤドクガエルだ。指先ほどの小さなカエルで、ジーンズをはいたような色合いから英名はBlue Jeans Dart Frog。卵が孵化すると♀が背中にオタマジャクシを背負って樹上の葉の水たまりにつれていくそうだ。

イチゴヤドクガエル

 パキーラ・ロッジ滞在中は、朝は運河のクルーズ、午後に熱帯雨林のハイキングが、国立公園の入場料10ドルだけで毎日参加できる。3回行った朝のクルーズで、一度だけボートハウスのようなところにボートを入れて、天井に張り付いているハナナガサシオコウモリRhynchonycteris nasoを見せてくれた。このコウモリは木の幹で休むことが多く、そのために木の幹に隠蔽擬態するようなギザギザの縞模様が背中にあるのだが、ボートハウスの天井では効果がない。

ハナナガサシオコウモリ

 国立公園入口にはヤシの木の葉を噛んでテントのようにした中で休んでいるコウモリがいた。その名もテントコウモリUroderma bilobatum、運河の河口近くのジャングルハイキングでも、たたまれたような形の葉の下にいた。

テントコウモリ

 このジャングルハイキングで、ほとんど腹這いになって入るような小さな洞窟をのぞくと、ナミチスイコウモリが1頭いた。若い個体らしい。血を食料とするコウモリは世界中の約1400種のコウモリのうちたった3種類。そのうちの2種は鳥の血を食べるのだが、こいつは哺乳類の血を食料としている。地面を走ったり跳んだりするのが得意なので脚ががっちりしている。

ナミチスイコウモリ

 同じ洞窟の入り口近くには、果実食の小コウモリ、タンビヘラコウモリCarollia brevicaudaもぶら下がっていた。

タンビヘラコウモリ

 ウオクイコウモリはホテルの前の運河やホテル内のプールで見られるというので、夕方川沿いのデッキで待つ。18時10分頃、5頭のコウモリが飛んで来た。バット・ディテクターというコウモリの超音波を可聴音にする機器を使うと、飛びながら水面に脚をつけるときに、餌をとる時のフィーディング・バズという独特の音声が入る。ウオクイコウモリも憧れのコウモリだったのだが、このデッキ、プールサイドのバーのお客さんに占領されているときもあって、結局写真は撮れなかった。

 哺乳類ではサルもよく見かける。トルトゥゲーロには3種類のサルがいて、みな昼行性でツアーやクルーズで普通に見られる。マントホエザルは泊まっているロッジ周辺を行動圏としている一群がいるので、毎日見られる。ホエザルの名前は、声を聞くと納得する。サルとは思えないワォォォォオンという咆哮が特に夜明けに頻繁に聞こえてくる。

マントホエザル

 アカクモザルは前足やしっぽが長く、クモを思わせる体型だ。巻いた尾を5本目の脚のように器用に使い、時にはしっぽでコウモリのように木からぶらさがる。いちばん身軽で、見ている前で枝を伝って見事なジャンプを見せてくれた。ノドジロオマキザルは、顔の周辺と胸が白く体が暗色なので、よく目立つ。背中に赤ちゃんを背負った個体が、堅そうな豆の莢をバリバリと食べていた。

 ロッジの名前になっているパキーラとは川辺に白い花を咲かせているPachira aquaticaという木なのだが、花はいい香りを漂わせていて、虫や鳥と共にコウモリも花粉媒介するという。このあたりは林業が盛んで、木を運び出すために運河をつくったのだが、パキーラの材は重くて水に浮かないので、伐採をまぬがれたため多いそうだ。

パキーラの花

 人里離れた場所にあるので、食事は3食ともロッジ内の食堂で食べることになる。出てくるのは観光客向けにアレンジされたコスタリカ風料理だ。ここは2泊3日を一人のガイドが仕切るツアーが基本なので、メニューも1日おきに同じものが繰り返される。でも4泊したわれわれには、3日目の夜と4日目の昼と夜は、ちゃんと別の料理をつくってくれた。また、私たちを担当してくれたガイドのオリバーさんとその一行は3日目には帰ってしまったので、3日目はジョニーさん、4日目はアレックスさんと毎日別のガイドのツアーに組み込まれた。オフシーズンなのでこういった規格外の旅をするわれわれにも気を遣ってくれたが、ウミガメの産卵が見られる7月~9月のハイシーズンだったらどうなるのかはわからない。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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