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Vol.12 オオコウモリリゾート

2018.9.14

 コウモリ関係者が集まる国際的な大会がいくつかある。世界中からコウモリに関するいろいろなテーマで集まるのがInternational Bat Research Conference(国際コウモリ研究会議)、その他にもラテンアメリカ、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラレーシアといった地域の集まりがあり、アジアではInternational Southeast Asian Bat Confernce(東南アジアコウモリ会議)があって、3-4年に一回行われている。その4回目の会議が2018年8月6日~9日にフィリピンのネグロス島のバコロドという町のホテルで開かれた。
 そのバコロドの町から車で一時間ほど内陸に入ったところにマンブカルリゾートという場所がある。敷地内に4000頭以上のオオコウモリが集まるねぐらがあって、このリゾートの売り物の一つになっている。ぜひ見たいので会議が始まる前の2018年8月2日~6日までこのリゾートに滞在した。

マンブカルリゾートのオオコウモリコロニーの看板。フィリピンでは狩猟されることもあるオオコウモリにとって、このエリアにいれば、とりあえずは安全。

 フィリピンに行くのは4回目だ、最後に行ったのは2011年。このとき使い残したフィリピンのお金がお札で2220ペソ(1ペソは2円ほど)と小銭が多少あるので持って行った。
 マニラ空港はターミナルビルが3つあり、バスで移動する必要があって、乗り換えに苦労する。やっと国内線のセキュリティを通ってほっとしたところで、ボトル入りの水でも買おうと売店で前回余ったお札を差し出したら、これは古いから使えないと言われた。あまりにも予想外の言葉だったので、This is old.といわれたのが理解できなくて、え???という顔をしていたら、現在流通している紙幣を見せてくれた。確かにデザインが違う。いったん諦めてから30ペソなら小銭で足りると気がついて、コインを出してみるとこちらは使えた。
 調べてみると、2015年末で旧札の使用は終了、その後も銀行では旧札を新札に交換できたのだが、その交換も昨年末に終了したという。念のため、バコロドに着いてから銀行で聞いてみたが、新札への交換は昨年までだと断られた。ということで2220ペソがただの紙切れになった。100ペソくらいで食事ができるフィリピンではかなり使いでのある金額で、どうも幸先が悪い。

 バコロドの町に一泊した後、8月2日の午前中にタクシーで1時間ほどのマンブカルリゾートへ移動。標高が上がるにしたがって天気が悪くなり、大雨の中チェックインの手続きをすることになった。この後も5日間、雨ばかりの日が続き、帰る日を除くと晴れ間は合計1時間もなかった。昼食を食べに敷地内にある食堂へ行くと、背後の木にたくさんのオオコウモリがぶら下がっているのが見え、声も聞こえる。

食堂の様子。この一角に数軒の食堂があり、5日間3食ともここを利用した。街中の食堂よりはちょっと高い「観光地値段」なので、地元の人は大量の食料持参でやって来る。

 昼食後じっくりオオコウモリ観察。コロニーのある谷間にかかっている橋の上がいい観察ポイントだ。橋から見えるのは、ジャワオオコウモリPteropus vampyrusとそれよりは少し小さいヒメオオコウモリPteropus hypomelanus。よく見るとフィリピン固有種のフィリピンオオコウモリ Acerodon jubatusも2頭だけ混じっている。

雨の中のオオコウモリ。コロニーのある谷間の木には、このようにオオコウモリがぶら下がっている。

 マンブカルリゾートは、活火山カンラオン山のふもとにある23.6ヘクタールのリゾートで、西ネグロス州が所有経営している。リゾートの敷地内には硫黄温泉が湧いていて、オオコウモリコロニーのすぐそばにも2つ露天風呂がある。お風呂につかりながらオオコウモリウォッチングも可能だ。ただし、海外の観光客が集まる豪華なものではなく、地元の人が週末になるとたくさんやって来る場所で、大衆的なロッジが敷地内に並んでいる。われわれが泊まった、LGUコテージは、窓からは斜面の石垣が見えるだけで、温水シャワーもたまにごく熱い湯が出るだけ、水洗トイレのタンクも壊れていてバケツの水をひしゃくで流すことになったが、一泊900ペソと安くて、われわれには必要十分だ。

コテージ内の様子。きわめてシンプルで、毛布もなければハンガーもない。雨続きで、室内で待機している時間が長かった。

 オオコウモリコロニーを観察していたら話しかけてきたのがガイドのバルメリさん。最初はわれわれの双眼鏡を見てバードウォッチャーだと思ったようで、スマートフォンでいろいろな鳥の写真を見せて、案内できると売り込んできた。コウモリを見に来たというと、渓谷に沿って滝を登る道があって、5分ほど登るとフィリピンオオコウモリが集まっている木があるというので案内してもらうことにした。滝の区域に入るには入り口で名前や住所などを書いて周辺で待機しているガイドを付ける必要がある。確かに5分ほど渓谷を登るとフィリピンオオコウモリが集まっている木が渓谷沿いに3本あった。全部で30-40頭はいただろうか。フィリピンオオコウモリは英語ではGolden-capped Fruit Batなどと呼ばれていて、文字通り金色の縁なし帽子を被ったように頭頂部から後頭部にかけてが黄色い。

フィリピンオオコウモリ。世界最大級のコウモリの一つ。

 ジャワオオコウモリは、葉が枯れてしまって露出した枝にもいるけど、フィリピンオオコウモリは葉が茂った木にいること、腹が黄色く見えるのはヒメオオコウモリであること、など説明してくれる。

ヒメオオコウモリの多い場所

 渓谷入り口の案内版には4種類のオオコウモリがいると書いてある。バルメリさんが、もう一種類のパルマスオオコウモリPteropus pumilusはまれであるけれど、夜、採餌に来るかもしれない場所を知っているというので、夜、案内してもらうことにした。今年の1月にはパルマスオオコウモリの幼獣が保護されたが、マンブカルで初めての幼獣の記録だそうだ。

 フィリピンでは今でもオオコウモリが食料として狩猟されている。自家用のこともあるし市場に出荷することもあるが、オオコウモリの数が減っている大きな原因となっている。バルメリさんは元ハンターだったそうだが、ガイドとして生計が立つようになって、狩猟しなくていいようになったようだ。他の地域でもこのようになるといいのだが。

ジャワオオコウモリ。こちらも世界最大級。翼を広げると2メートル近くになる。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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