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Vol.14 フィリピン ネグロス島3 7種のフルーツバット

2018.11.16

 フィリピンのネグロス島は雨の季節で、大雨が一日に何回も降った。

雨の中寝ているジャワオオコウモリ

 8月4日の夕方は、空が大きく開けているボート池で、出巣したオオコウモリが次々飛んでいくのを20分ほど楽しんだが、18時頃大雨になったのでコテージに引き上げる。
 20時過ぎ、小降りになったので散歩に出かける。敷地内の一周道路に張り出しているツルアダンの実のそばに、黒くて翼に特徴的な白い斑点の入ったコウモリが静かにぶら下がっているのを見つけた。ハルピュイアフルーツコウモリHarpyionycteris whiteheadiだ。

ハルピュイアフルーツコウモリ

 先ほどのフィリピンの哺乳類概要にはツルアダンの実を食べると書いてあったが、まさにその通りで、舗装道路には食べかすやペリットが散らばっている。このときはお腹がいっぱいになったところだったのか、じっとポーズをとってくれたが、その後21時30分頃と22時30分頃にも行ってみたが、翌日以降も含めて二度と見ることはできなかった。

道路上の食べかすやペリット、フン

 8月5日はまたまた朝から大雨、合間を縫って早朝から写真を撮る。コロニーの前で知り合いのタイのコウモリ研究者とその連れにばったり出会う。タイではジャワオオコウモリやヒメオオコウモリは普通にいるが、フィリピンオオコウモリはフィリピン固有種なのでぜひ見たいということで、もう一度いっしょに滝沿いの道をガイドと登って見に行く。翌日からコウモリ会議が始まるので他のコウモリ研究者も来るかと思ったのだが、それらしき人はこの2人だけだった。
 夕方コロニーの前で、先日パルマスオオコウモリを見せてくれたもう一人のガイドが声をかけてきて、Tube-nosed batを見に行くか、と誘われた。ラボールテングフルーツコウモリNyctimene raboriはフィリピンの中でもこのネグロス島とセブ島、シブヤン島でしか記録がない固有種だ。ただ、歩いて1時間くらいかかるところだそうだ。前回パルマスオオコウモリを見せてもらったときに、斜面の林を跳ぶように歩く様子を見ているので、われわれの足だとたっぷり1時間半はかかりそうだし、明日12時までにチェックアウトしなければならない身としては、残念だが諦めることにする。
 21時半頃、一周道路を歩いていたら、一つの街灯の周りを大量のシロアリが発生して飛び回っていた。しばらく様子を見ていると、1頭のコウモリが現れて街灯の回りを飛び回り食べ始めた。そして次第にコウモリの数が増えていき、30分足らずであらかたシロアリを食べ尽くし、コウモリもいなくなってしまった。このように虫が大発生すると道をパトロールしているコウモリが感知して集まってくるのだろう。バットディテクターで音声を聞いてみると5種類以上の小コウモリが飛んでいるようだ。

街灯の回りを飛び交うコウモリ 種名はわからない

 

 8月6日最後の朝、コロニーの前で観察していると、犬を連れて散歩をしていた人が、鉄砲で撃たれて死んだフィリピンオオコウモリを見せてくれた。夜は大部分のオオコウモリがリゾートの外に採餌に行くのだが、こういう災難に遭うものもいるのだろう。
 さらに歩いて行くと道の近くのチークの仲間の木の枝に引っかかった枯れた葉の中にシタナガフルーツコウモリを見つけた。昼間なのでしっかり寝ていて丸まった枯れ葉の中から背中が見えるだけなのだが、一度ちらっと顔を出してこちらを見た。

チークの枝に引っかかった枯れ葉 どこにコウモリがいるかわかりますか。

シタナガフルーツコウモリ

 これでリゾート滞在中に7種ものオオコウモリ科のコウモリを見たことになる。予想以上の成果だ。

 バコロドの町から行きはタクシーで1500ペソかかったが、リゾートにタクシーはないので、帰りはバスで1人35ペソ。ただし、行きは1時間で来たが、帰りのバスはマンブカルの近くの集落を走っている間、運転手はあちこちの知り合いと話しながら、歩行者と同じくらいのスピードで進むので2時間近くかかった。バスはバコロドの市場の近くに着くので、そこから滞在するホテルまでタクシーで更に100ペソかかる。
 マンブカルでは毎回のように炭火焼きの鶏肉や豚肉を楽しんだが、バコロドの町にも鶏肉の串焼きのお店がたくさんあって、これもまたおいしかった。たいてい、ライスを一杯盛り切りにするか、ちょっと高くなるけどunli rice(unlimited rice)という無限におかわりができるという選択肢があって、ほとんどの人はこのおかわり自由を選んでご飯に備え付けのソースをかけて食べていた。

串焼きのセット(左)とおかわり用のおひつ(右) 手を挙げると店員がこの「バケツ」を持って駆けつけて来る。

 その後参加した東南アジアコウモリ会議では、アジアのさまざまな国から来たコウモリ研究者の話を聞くことができた。毎回参加している常連さんも多いので、3年に一回の再会となる人も多い。会議3日目の8月8日の午後にはフィールドトリップがあって、バス3台を連ねてこのマンブカルリゾートにもう一度行って、オオコウモリコロニーを観察したり、ハープトラップやかすみ網による捕獲調査のワークショップがあった。ただ、再び大雨が降ってきたため、捕獲調査ではシタナガフルーツコウモリとコイヌガオフルーツコウモリが一頭ずつ捕獲できたそうだが、それを見ることもなく早めに町に引き上げることになった。
 このときも前述のシタナガフルーツコウモリはまったく同じチークの枯れ葉の束の中で寝ていたので、一部の参加者に見てもらうことができた。この日は夕方に観察していたのでコウモリが少し動き始め、2頭以上いることがわかった。あいにく日没時には大雨になったので飛び立つところは見られなかった。  フィリピンの研究者のリサさんに、ここはラボールテングフルーツコウモリのねぐらが唯一知られているのでガイドに頼めば案内してくれると言われたし、われわれのガイド、バルメリさんからは、パルマスオオコウモリは花の時期には花にやって来るのが見られると聞いたことだし、近いうちにもう一度行ってみたい。今度は雨の少ない季節にしよう。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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