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Vol.27 タイのコウモリはお寺が好き1

2019.12.14

 2019年国際コウモリ研究会議が終わり、8月1日にプーケット島からバンコクまで戻って町中に宿泊。
 タイはいたる所にお寺があり、バンコクで泊まったホテルのすぐそばにも川の畔に大きな寺院がある。夜、何種類かの食虫コウモリやオオコウモリが飛んでいた。すぐ脇を流れる川の中では養殖をしているのか大きな魚がたくさん泳いでいて、餌をもらえないかといつも水面に待機している。水面を飛び回るコウモリがいたので、撮影しようとカメラを操作していたら、レンズフードを誤って落としてしまった。大騒ぎで集まってきた大きな魚の1匹が口に入れて潜っていった。まさか呑み込んでしまっていないと思うが・・・。水面をかすめていくコウモリは、この巨大な魚に喰われないのだろうか。

バンコクの宿の近くのラートクラバン寺院Wat Lat Krabang

 翌8月2日は、バンコクから日帰りでコウモリを見に行く。
 「コウモリの会」というわれわれも会員になっている団体が、2002年から縁があってタイ西部のカンチャナブリ県のサイヨーク国立公園と東北部のコーンケン県でコウモリの調査を行っている。われわれは2008年と2011年に参加し、その調査の途中や、終了後に案内してもらったライルオオコウモリPteropus lyleiのコロニーのあるチャンタラム寺院Wat Chantaramと、ヒダクチオヒキコウモリChaerephon plicatusの出巣で有名なカオチョンプラン寺院Khao Chong Phranの2カ所へ今回再び行くことにした。

地図

 朝9時半、コウモリの会の調査でいつも案内をしてもらうサラシンと再会。8年ぶりだ。もともと小柄な人ではなかったが、一段と大柄になったような・・・。車でホテルに迎えに来てもらって、まずはバンコクから北へ2時間ほどのドライブで、タイ中部のアントン県にあるチャンタラム寺院へ。このあたりは田んぼに集落が点在する農村地帯で、そんな小さな集落の中にある華麗な装飾の寺院だ。平日の昼間のせいか閑散としている。タイではお寺にコウモリのコロニーがあることが多く、町中だったり町に近くてアクセスしやすいし、何よりもオオコウモリが見やすくていい。チャンタラム寺院の建物の裏に木立があり、あちこちにライルオオコウモリがぶら下がっている。それほど密集した木立ではなくて下生えもないし、歩道もあるので、ねぐらのすぐ下を歩ける。

お寺の裏手の林にぶら下がっている(2011年に撮影)

 タイには141種ものコウモリが生息しているが、オオコウモリ属のコウモリは、ヒメオオコウモリ、ライルオオコウモリ、ジャワオオコウモリ、ビルマオオコウモリの4種だけだ。(Bats of the World A Taxonomic and Geographic Databasehttp://batnames.org/ 2019 年12 月10日現在])それぞれ分布や好む環境が異なるので、このチャンタラム寺院に生息しているのはライルオオコウモリだけである。日本のクビワオオコウモリやオガサワラオオコウモリとだいたい同じくらいの大きさだ。

ライルオオコウモリ

ライルオオコウモリの顔

 タイのライルオオコウモリのほぼすべてのコロニーにあたる30箇所を調べた論文によると、53%のねぐらは仏教寺院の敷地内にあるそうだ。2015-2016年に行われたこの調査ではチャンタラム寺院のライルオオコウモリは1293頭となっている。タイではコウモリは食料として狩猟されているので、寺院が安全な保護区となっているのだろう。撃たれる心配がないせいか、ライルオオコウモリたちは、人がすぐ下を歩いても動じずに、パタパタと翼で体をあおいだりしながらのんびりと休んでいる。でも夜採餌にでかけた先で撃たれてしまう奴もいるに違いない。
 時々コウモリ同士の喧嘩がおきたり、どういったきっかけか何十頭かが突然敷地内を飛んで移動することがあり、飛翔する姿もけっこう頻繁に見られる。

青空バックに飛翔

飛翔する4頭を連写して比較暗合成

 またここにはライルオオコウモリに混じってアジアコビトウPhalacrocorax nigerとダイサギCasmerodius albusもいるが、オオコウモリに圧倒されて、控えめである。地面の上には、オオコウモリの糞に混じって白い糞もあるが、これは彼らのものだ。

アジアコビトウとライルオオコウモリ(2011年撮影)

 ライルオオコウモリは木陰にいるからいいが、せっかくだからお寺の建物を背景に飛んでいる姿を撮ろうとすると、われわれは日向に出てコウモリを待たなければならず、ひたすら暑い。2時間ほど観察や撮影をして、かなりバテてきたところで終了。近くでちょっと遅めの昼食。

ローストチキンと野菜料理。着ているTシャツは、2018年に参加した第4回東南アジアコウモリ会議の記念品

 昼食後はバンコクの西側にあたるラチャブリ県のカオチョンプラン寺院に向かう。170kmほど、小休憩を入れて3時間の大移動である。チャンタラム寺院で時間を取り過ぎてしまったか、ヒダクチオヒキコウモリの夕方の出巣時間ギリギリの到着になってしまいそうだ。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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