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Vol.15『オオミユビトビネズミの繁殖レポート①:交尾から出産まで』

2014.8.21

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図1 オオミユビトビネズミ

 オオミユビトビネズミ(greater Egyptian jerboa、Jaculus orientalis)のちょっと珍しい繁殖例についてご紹介します。国内では、コミミトビネズミとヒメミユビトビネズミの繁殖が各1例、本で紹介されていますが、オオミユビトビネズミでの報告例は見当たりません。そこで、オオミユビトビネズミの求愛行動、交尾、妊娠、出産、子育て(育子)、そして子の成長の順に、2回に分けて紹介していきたいと思います。今回は、求愛行動から出産まで。

1.求愛行動
 雄が雌の前で低い姿勢をとり、キューキュー鳴きながら、対面しては雄が雌の背後に回って、小さな前肢で雌の尾をつかむ行動が繰り返されます。雌の発情期には、陰部周辺がふっくらしているように思います。ちなみに、前回の出産では、残念ながら2日後に子が食殺されてしまいましたが、子を失ってから4日後には発情回帰することが分かりました。陰部の状態から判断して、雌雄を同居させたところ、すぐに求愛行動が始まり、交尾に至りました。

図2 オオミユビトビネズミの求愛行動の様子

図2 オオミユビトビネズミの求愛行動の様子

2.交尾
 求愛行動は頻繁に繰り返されますが、雌が発情期には、雄が雌の背後に回り込んだ際に拒否せず、姿勢を低く取り、雌が雄のマウントを許容するようになります。この間、雄の陰嚢は真っ赤になって膨らんでいくのが確認できます。何度も何度も求愛行動と交尾行動を繰り返します。10回くらいだったでしょうか、最終的には雄が疲れ果て、ひっくりかえって動かなくなりました。
 雌を持ち上げてみると、腟内にはしっかり精子が送りこまれ、マウスなどでよく知られる腟栓らしき塊も確認できました。交尾後に落ちていた腟栓を洗って顕微鏡で観察してみたところ、精子2匹を見つけることができました。精子の大きさは150 μm前後で、ラットの精子と同じくらいのようです。
 前回の妊娠中は、雌が雄を排除しようとする攻撃的な行動が、日に日に激しくなっていきました(二度目の繁殖では、同居は交尾日のみです。)。

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図3 オオミユビトビネズミの交尾時の様子
 左上:交尾中の様子、左下:真っ赤に膨らんだ陰嚢(矢印)、右上:交尾後ひっくり返った雄。左が雄で右が雌(矢印のところに腟栓らしきものが落ちています)、右下:腟栓と思われる塊に付着していた精子

3.妊娠

 雌雄を同居させたその日に交尾が確認できたため、雌雄の同居はその1日だけにしました。正確な妊娠期間を知りたかったためです。その後出産し、妊娠期間は28日間であることが分かりました(出産日が不明なので、29日間の可能性もあります)。妊娠中は、肉付きはよく見えるものの、妊娠末期でもお腹が大きいと思える状態ではありませんでした。前回の出産で、妊娠期間は1ヶ月以内であることが分かっていたことや、ヒメミユビトビネズミの妊娠期間が28日間だったという報告をもとに、28日目を出産日と予想して観察をしてきましたが、お腹のふくらみや行動の変化もほとんど分からないまま、出産日を迎えました。子の数にもよるのかもしれませんが、このときは2匹です。

図4 オオミユビトビネズミの妊娠末期の体型

図4 オオミユビトビネズミの妊娠末期の体型

4.出産
 一度目も二度目も、出産後に発見したため(おそらく直後)、正確な出産時刻は不明です。二度目は、巣箱内で産み散らかされたような状態でしたが、このあと、巣材を集めて、巣らしき状態になっていました。一度目も二度目も産子数は2でした。海外の資料によると、産子数は2~10で、平均は2ということです。

図5 オオミユビトビネズミの出産直後の様子

図5 オオミユビトビネズミの出産直後の様子

続きの様子、子育て(育子)と子の成長についてはまた次回ご紹介します。
以下のページに、オオミユビトビネズミの交尾の動画を掲載しています。
http://blogs.yahoo.co.jp/zooreplab/56305665.html

著者プロフィール

楠田 哲士(くすだ さとし)

1978年 兵庫県神戸市生まれ
岐阜大学応用生物科学部・准教授。専門は、動物園動物の繁殖生理学。
日本大学生物資源科学部動物資源科学科卒業、岐阜大学大学院修了。博士(農学)。
東京都臨時職員(多摩動物公園)、日本学術振興会特別研究員などを経て、
2008年から現職。
日本動物園水族館協会生物多様性委員会・外部委員。

著書
『キリンEAZA飼育管理ガイドライン』(日本動物園水族館協会)、
『動物園動物管理学』(文永堂出版)、『動物園学入門』(朝倉書店)など

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