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Vol.3 ホンダワラコケムシを見つけたら

2017.10.1

 ホンダワラコケムシというコケムシがいます。水温が高くなる夏に繁茂し、あっという間に姿を消してしまう生きものです。漁網や海上イケス、フロートや船底などさまざまな基質に付着し、大きなものでは1mを超えるような大型の群体に成長します。ダイビング中にはこのような付着した群体のほか、千切れて海底に沈んだ群体も見かけることがあります。このホンダワラコケムシにはいくつかのウミウシが着生しており、これらを見つけるのも夏の楽しみの一つです。

ホンダワラコケムシ。中央左下に見える白い糸屑状のものはウミウシの卵塊。

鹿児島ではシロイバラウミウシとセスジイバラウミウシがホンダワラコケムシ上でよく見つかります。しかし彼らも簡単に見つかるわけではありません。とくにセスジイバラウミウシはホンダワラコケムシの色にうまくカモフラージュしており、一筋縄とはいきません。

シロイバラウミウシ Okenia japonica

セスジイバラウミウシ Okenia pellucida

このようなウミウシを探すときには卵塊を見つけることが一番の近道です。ホンダワラコケムシ上で生活している彼らにとってホンダワラコケムシは隠れ家でもあり餌場でもあり繁殖の場でもあります。コケムシ群体上に産み付けられた白い糸屑状の卵塊にはカモフラージュ効果は施されておらず、簡単に見つけることができます。卵塊さえ見つけてしまえば近くに必ず産卵した張本人がいるはずです。

ふつうはこれら2種が見られるのですが、今年の夏は他にもホンダワラコケムシ上で見つかりました。

ロボアストラ・テンタクラータ Roboastra tentaculata(和名なし)

クロコソデウミウシ Polycera hedgpethi

ロボアストラ・テンタクラータの餌は不明ですが、クロコソデウミウシはフサコケムシのなかまを食べます。前者の近縁種にはコケムシ食者もいることから、ロボアストラ・テンタクラータがホンダワラコケムシを食べる可能性も否定できません。また後者は何十個体もの着生が確認されたことから、偶然ホンダワラコケムシ上に登っていたという可能性は低いように思えます。摂餌の決定的な証拠はありませんが、1つの可能性として今後も気にしながら観察を続けていこうと思います。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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