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Vol.70 ウミウシ観察会はじめました

2023.5.27

ついに4月から鹿児島でのウミウシ観察会を始めてみました!!!!
昨年度何度も大阪の観察会に足を運んでいたのは、こういう開催や運営のノウハウを学ぶためでもあったわけです。
もちろん鹿児島には大阪のウミウシ観察会ほどの助っ人スタッフはいません。というか0ですので、兼ねてから信頼している心強い味方とともに、少人数制で始めてみることにしました。

正直なところ何も今年やらなくてもというほどに今年は多忙で、自分の首を絞めに絞めているわけなのですが。まぁいつになっても忙しい忙しい言うのが日本人ですから、無理のない範囲で細々と継続するという考え方で始めています。

頭であれこれ考えることも大切なんですが、こういうことはやってみないとわからないことも多く、小規模でいいからやっていこう、そうして私たち運営側が参加者から雰囲気づくりやスムーズな進行、必要なものなど学ばせてもらおう、ということで、開催するに至りました。

大阪のウミウシ観察会の参加者数の定員は毎回違うのですが、これは応援に来れるスタッフ数×3.3人を参加者定員としているためです。ですので、応援スタッフの募集を先に行って、定員数を決めてから参加者向けの募集をするという流れになります。

参加者は初めての方もベテランの方もいますが、磯には等しく危険が伴いますので、スタッフはウミウシを探すよりも参加者の安全確保が最優先となります。タイムスケジュールや自分の中での採集ノルマなど頭の中で考えつつも参加者が怪我しないように注意を払わねばならないので、余裕をもって安全管理できる数ということで3.3人なのだそうです。

ということは、鹿児島の場合、スタッフが2名なので定員は6~7名が限度なわけです。
さすがに少ないような気もします。
しかし参加者の中でもスタッフ向きな方を少しずつスタッフに勧誘して増員させていくと変わってくるとのこと。なるほど。
基本我々も休日にボランティアでやってますからね。ボランティア精神と、スタッフをすることの旨味が少々でも感じられればやってくださるかもしれません。

ということで、まずは開催場所と開催日を決めます。

鹿児島県本土はあまり磯が発達しておらず、候補として3ポイントに絞りました。
1,多くの方が住まわれているであろう人口集中地域の近く
2,それなりに遠いが、磯の地形がよく、少しだけ調査済みの場所
3,距離は中程度だが、調査が不十分でウミウシの生息状況が予測しにくい場所

ふだんダイビングばっかりの私は磯の調査割合が少ないので、行く場所が限られています。
さらに、参加者がいるということは、トイレと駐車場の確保は不可欠です。

これをクリアできる場所が本当に少なく、正直に言えば全部だめだったのですが、トイレと駐車場を浜の近くの公民館を借りることで解決できないだろうかと考え、交渉の結果、お借りすることができたため、無事に2になりました。

初年度ということでどれくらい発見できるのかも不明ではありますが、大阪の観察会も始めの頃は苦労されていたようですので、我々も楽せずコツコツと、酸いも甘いも経験していこうということに決めました。本当はもっとウミウシだらけの磯!みたいなところがあればそこが一番なのですが、まぁ季節性もありますしね。なかなかそういうところが都合よくあったりしません。それに、参加者のみなさんの慣れや経験によるところも相当多いので、じっくりやっていくのがよいだろうと。

ということで4月8日に1回目、5月20日に2回目を開催しました。
初回は事前問い合わせが多くて、それにお応えする形で受け入れたらあっという間に定員になり公募できませんでした。2回目はSNS上で公募しました。
実際やってみると、3.3人の意味がよく分かります。1人で5人以上見るのは厳しいものがありました。
初回は班分けしませんでしたので少々広く散らばってしまったことも大きな要因ですが、2回目はグループごとにある程度まとまって行動で来ており、初回に比べるとだいぶ余裕をもって見ることができたように思います。
また、初回に参加してくださった方の中から1名を早速スタッフに任命し補助していただいたためでもあります。人数が増えると心強い!!

では観察会で発見したウミウシを紹介。
1回目
オオツヅレウミウシ、オカダウミウシ、キヌハダウミウシ、ホンクロシタナシウミウシ、ミドリアメフラシ、アマクサアメフラシ、クロヘリアメフラシ近似種、ジャノメアメフラシ、ミスガイ、コンシボリガイ、ベニシボリ   計11種

2回目
ミスガイ、オカダウミウシ、クモガタウミウシ、オオツヅレウミウシ、シミツキウミウシ?、ツヅレウミウシ科の一種、カワハダウミウシ、シロウミウシ、マダラウミウシ、ホンクロシタナシウミウシ、ヒメマダラウミウシ、ユビウミウシ、ジャノメアメフラシ、ビワガタナメクジ   計14種

ウミウシを探した後は公民館へ戻って一時休憩。採集したウミウシを出し合って整理して名前を付けて、ウミウシごとの生息環境や餌、探し方などを解説しました。

スタッフ含めて10名ほどで2時間ほど磯を歩いて探索してこれくらいなので、多いのか少ないのかは経験具合にもよると思いますが、始めの方としてはまぁまぁ無難なところです。

オカダウミウシやクモガタウミウシなどの磯らしいウミウシも見つかっていますし、アメフラシ類やミスガイ類なんかは春らしいウミウシです。

また季節が変われば出現する種も変わりますので、そういった変化も感じられるようになるとおもしろいですよね。

ただ、冬は潮が下がり切らない可能性があるため、場所を再検討するか開催しないかまだ決めかねております。もしかすると大人だけの夜潮コースという選択肢もあります。

ということで、無事に2回が終わりまして、我々スタッフもなんとか形が見えてきたような慣れつつあるような感じです。
いろいろと準備が大変で、不安もありつつの開催でしたが、いざ開催してみると、ウミウシ好きだけが集まっているため、初対面の参加者さん同士でもすごく仲良くなってくださるようで、そういった人同士の交流の場としての機能を持たせられるのは大変良い点でした。

毎回参加者の皆様に助けられつつですが、お陰様で楽しくやれております。

ちなみに第3回目(6月実施)も現在公募中です。興味がある方はインスタグラムでかごしまウミウシラボ(kagoshima_umiushi_lab)で検索されてください。観察会の募集以外にも私のウミウシ調査の一部を紹介しております。このロゴ↓が目印。

観察会は基本鹿児島県内での開催になりますので近隣の方を対象としていますが、県外でも来られるようでしたらお断りしません笑
が、基本はお子さんを含むご家族をメインの対象としておりますので、応募が多い時には抽選となる場合があります。
ちなみに3回目は地元のウミガメ保護団体からの依頼があり、出張観察会の形を採っています。3回目にしてもう出張か、定点調査は大丈夫かという感じですが、ありがたい機会ですし、違う磯でも調査する機会があるのは良いことです。
ということで、出張観察会のご依頼も要相談で随時受け付けております。

なお、この観察会は、私は水族館の仕事としてやっているわけではなく、個人的に、完全にプライベートでボランティア活動としてやっています。これは仕事としてやるといろいろとやりにくいこともあり、自由に楽しく自分の好きなようにやりたかったことと、なにやら私のウミウシ調査に興味を持ってくださる方が、こういった観察会を望んでくださっているという声を頂戴することが多くなってきたためでもあります。
なにより、ボランティアですから、気楽さがあるのがいいところです。仕事でやると緊張感とか責任感とか余計な感情が邪魔して素直に楽しめないこともありますからね。
はい、ということですので、もし興味を持っても絶対に!絶っっっっ対に!水族館に問合せするようなことはされないでください。当館の人間は誰もこのことは知りませんので何も答えられません。

観察会は今後も月に一度程度のペースで開催します。
募集が始まるとインスタグラムでお知らせします(kagoshima_umiushi_labで検索)
ので、フォローしてくださると気づきやすいかと思います!

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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