いろいろな制限が緩和されつつあるこの頃。
私もこれまでいろいろなお誘いを泣く泣く断ってきましたが、ちょっと抱えている仕事の関係もありまして、あっちこっちでウミウシ探しするようになりました。
鹿児島県内には大小合わせて600以上の島があるといわれており、この小さな島々のおかげで海岸線長は日本で3番目に長くなっています。(1位は北海道、2位は長崎県)
うち有人島は28あるそうです。
鹿児島県のウミウシ相を調べているからには全ての島で調査をしたいところなんですが、現実的ではないですし、あまり内湾性の環境がない島はウミウシ相が貧相だと言われています。
こうしたことから調査候補となる島を挙げていくと
甑島・種子島・屋久島・奄美大島・加計呂麻島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島あたりを調べていくことになります。もちろん他にも気になる島はありますが、まずはこうしたところから攻めていくのが良いかなと思っています。
いくつかの島には仕事でも行くので良いのですが、これらの島で今までに行ったことのない島が、与論島と徳之島でした。
徳之島は奄美大島の南に位置し、闘牛やサトウキビなどが有名な島です。
これまで徳之島からのウミウシ類のまとまった報告は無く、奄美大島との違いも含めて一度海を見てみたいと思っていました。ご縁あって調査隊を組むこととなり、現地の助っ人の力もお借りして、3日間のウミウシ調査を行ってきました。

まずは初日。ダイビングチームと磯チームに分かれます。
北東のポイントへ潜りに行きます。

徳之島は島の周りをリーフで覆われており、リーフエッジからは急に深くなっています。
リーフエッジの少し沖にボートを停め、そこからダイブ。
透き通った海に色とりどりのサンゴがあちこちに。
サンゴだけでもじっくりと写真を撮りたいくらいなのですが、今回はウミウシ一本と決めているので全ての時間をウミウシ探しに充てます。
しかし。。。
いない。ウミウシがいない。見つからない。
十数分後にようやく見つけたウミウシはコイボウミウシ。

知ってます南のダイバーはこのウミウシじゃ喜ばないことを。
私も例に漏れず喜べませんでした。。。が、まずは徳之島初ウミウシと言うことでコイボウミウシに感謝します。
他のウミウシが少なくてイボウミウシ類が優占しているということは潮あたりが良くて他のウミウシにとってはあまり良い環境ではない感じがします。
このポイントはあまり見つからないかも~と若干諦めかけつつも、ダイナミックな地形の面白さで終始わくわく。
そんなときにザトウクジラの唄が聴こえてくるもんだからなおのこと感動してしまい、ウミウシはあまり見つからなかったのですが興奮して1本目を終えました。
続いて2本目。
少し場所を移動して浅い砂地のアマモ場へ。

ここではツツイシミノウミウシやハナミドリガイなどが出迎えてくれました。

アマモ場の方にいくと、第2目的のコテングノハウチワを発見!!!

そうなんですハウチワ類は私の大好物で、ずーーーーーーーーっと見ていられます。
もちろん葉上部の上に乗っているオオアリモウミウシ属のウミウシを探すのです。

おわかりいただけるでしょうか。ここに4個体のウミウシがいることを。

今回はテングモウミウシ、ネオンモウミウシ、クサイロモウミウシが見つかりましたが、クサイロモウミウシはどこかへ行ってしまいました。ネオンモウミウシは肉眼ではもはやよくわからないくらい小さく(体長3㎜がうずくまっている)、テングモウミウシなのか、別種なのか、撮影した写真を宿で確認するまでわかりませんでした。ネオンモウミウシ初見です。

この日はこれで終了。磯部隊と合流し、成果報告をします。
磯部隊はミガキブドウガイを発見した模様。
こういうのは磯が強いですね。

2日目。今度は島の南西へ。
黒潮の影響が強く、島内でもウミウシが多いポイントとして有名だそうです。
期待して潜ります。
開始早々キイロウミウシ、ゾウゲイロウミウシ、ソライロイボウミウシなどが迎えてくれます。その後もユキヤマウミウシ、マイチョコウミウシ、キスジカンテンウミウシ、シロシキブイロウミウシ、トウモンウミコチョウなどなど、南方系のウミウシが多い!

ここは良いポイントです。おそらく徳之島最大のウミウシポイント。
そしてアオウミガメがものすごいいる。
ぜんぜん警戒しなくて、目の前で写真を撮っても逃げない。

島はカメでさえものんびりしているのか。
このポイントはエントリー口の浅い砂地もおもしろくて、コンシボリガイの仲間やオオクロネズミ、クロボウズ、ニシキツバメガイなどがあちこちにおりました。

残圧ぎりぎりまで粘って2本分を終え、この日の成果は上々。全日程ここでもいいかも。
いつもは夜潮の磯調査か、ナイトダイブをくっつけて、昼も夜もウミウシまみれで寝る時間も無くぐったりすることが多いのですが、今回は不慣れな地でもあるので夜は無し。
ゆっくり体を休めます。ちょっとだけ靴下クロウサギを探してみたりもしましたが、出るところはだいたい決まっているようなので、そうそう偶然に見つかるものではないようです。
この日は現地の方に島の自然や標本づくりについても教えていただきました。
海の標本系は私もあれこれ作ったり持っていたりするのですが、やはり島に来ると陸の自然がおもしろい。生えている木や草、飛んでいる蝶や鳥も全然違う。

モクマオウの木にサボテンの仲間ドラゴンフルーツが絡まっている風景・・・・これは自然・・・なのか??
詳しくないので私はさっぱりわかりませんでしたが、同行した隊のメンバーにレクチャーを受けつつ道中を楽しみました。
闘牛が有名とあって、空き地で闘牛の練習風景も見られましたし、サトウキビ畑や工場もあって、文化の違いを感じました。
私は闘牛文化のある宇和島の生まれなんですが闘牛見たことなかったので、何十年越しにちゃんと(?)見たことに少し感動しました。
3日目。
飛行機利用なので3日目にダイビングは行わず、この日は磯調査です。
3か所の磯を回って黙々と探します。
リーフの内側はあまり深くなく、わりと平坦で歩いてリーフエッジまで行けてしまうようなところが多かったです。

しかしおもしろいのはところどころにできるリーフ内のタイドプールのうち、大型のものにはウミガメの亜成体が住み着いているということ。

タイドプールにウミガメって・・・。
あと満潮時にはウミガメが川を上ってくるようです。
この時期にもかかわらず印象としてあまり海藻が多くなかったのですが、アオウミガメは岩に生えている小さな藻をこつこつ食べ続けていました。

磯調査の収穫は多くは無かったですが、ミエッタミノウミウシ。初めて見ます。少し感動。

シノビイロウミウシ。なぜかこの種ばかりがいるタイドプールがピンポイントで存在していました。きっと着生基質兼エサとなるカイメンがここのプールにはあるはず。特定はできませんでしたが。
最後に余った時間でビーチコーミング。
ウミウシの貝殻は見つかりませんでしたが、エラブウミヘビのフレッシュな死体が・・・。

う~~~~んこれ食用扱いで持って帰ったらダメ・・・でしょうか。。
ヘビの骨格標本かっこいいんですよね。
今回は諦めましたけど。
ということで今回は全52種のウミウシを発見することができました。
3月のハイシーズンに3日で52種というのは、まずまずではありますが、多いところは100超えてしまうのでもう少しあってもいいかなというのが他との比較として感じるところでもあります。
ただ今回はポイントを知る、環境を知る、そして次回に生かすということも目的としていますので、無理のない計画の中では良い方だったのではないかと思います。
島単位で比較すると、奄美大島がトップですが、徳之島は3~4位くらいに食い込んでくるかもしれません。それくらいのポテンシャルを感じる、豊かな島でした。
私が3日間と決めてしまったのですが、もっといても良かった。。。
また季節を変えて出現状況や餌となる付着生物の変化を見ていきたいと思います。
徳之島は鹿児島空港から1時間強!
世界遺産に登録されて、これからどんどん来島者が増えていくことでしょう。
ウミウシダイブもおすすめです。
次は・・・・島料理も・・・食べたい。。。陸上動植物の写真も撮りたい。。。しかしそんな時間があったらウミウシ探したい。。。こうして悩めるのも魅力が多いことの証拠ですかね。