12月までどこにいってもウミウシが少なかった鹿児島の海。
1月に入り、ようやくウミウシが目に付くようになってきました。今年もちゃんと命が回っているようで安心しています。
そんな中、今回よく見かけた(と言いますかよくいるポイントがわかるようになってきた)のが今回のキャラメルウミウシ。

私がキャラメルウミウシに最初に出会ったのは2016年の10月でした。
当時は種子島の調査を始めて3年目で、ダイビングショップの方に見せてもらって初めて本物を目にしました。親しみやすいネーミングと派手すぎず柔らかな色合いが素敵なウミウシで、これは「良いウミウシ」だなと思ったものでした。
それと同時に、初めて見るウミウシを自分で見つけられなかった悔しさというのがウミウシ探しをしていれば誰にでもあるもので、例にもれず私もいつかは自分で見つけたいなぁと思ったものでした。

初めて見たキャラメルウミウシ。鰓葉の外側と外套膜縁が白い。
そしてそれが叶ったのが翌年の7月。意外と早い段階で見つけることができました。それからというもの、数は多くは無いものの、種子島ではそこまで珍しくはない種なのだと感じる程度には見つけてきました。

初めて自分で見つけたキャラメルウミウシ
その後、南薩海域でも発見し、キャラメルウミウシが南方種だが黒潮に輸送されて比較的北まで分布する種なのだろうということも実感できました。
とはいえ、せいぜい見つかるのは南薩以南で、錦江湾や北薩海域では見たことがありませんでした。
(あ、宮崎では見ています。宮崎の海は鹿児島本土南岸よりも黒潮の影響が強いようで、場所によっては、開いた口が塞がらないほどのウミウシパラダイスが広がっています。本当にそれはもう羨ましいを通り越すほどに。)
しかし昨年は違いました。
真夏の錦江湾。桜島の磯にキャラメルウミウシは現れたのです。
湾央にいるのも驚きなのですが、潮間帯にいることが不思議で、何かの間違いかと思うほどでした。これだけ水温が高いことが要因なのか。餌なのか。。。。

桜島の潮間帯に出現したキャラメルウミウシ
キャラメルウミウシは、多くの場合餌カイメンの上で見つかるため、この餌カイメンのある場所がわかれば見つけやすくなります。調べてみるとScalarispongia属の一種という黒い塊状のカイメンを食べていることがわかりました。

Scalarispongia sp.
このカイメン、見慣れてくると、探せば探すほど見つかります。
ごくごく普通種なのです。
しかし多くの場合は比較的潮通しの良い海域の、オーバーハングした岩の裏面や岩肌です。そうでない場合すなわち日の光に当たるような場所にある個体は表面に藻類が付着してその様相を異にしていることもあります。

石灰藻に覆われているカイメン。黒いのでわかっていないと気付かないかも・・・。
このカイメンを海で認識できるようになると、南薩海域ではかなり多くの個体が生息していることがわかりました。しかしこれまで桜島では認識したことがなく、このカイメンが生息しているのかはまだわかっていません。
南薩海域はゴロタや大小の岩が延々と並んでいるところがあり、そういった岩が特に密集した場所の、縁辺部ではなく中心部にある岩のオーバーハング裏面や岩肌で特によく見られています。

こんな場所の岩肌や岩裏を観察していくと見つかる。
時には1つのカイメンに3~4個体のキャラメルウミウシがついていることもあり、1つ見つかり始めるとあっちもこっちもこのカイメンだらけ、そしてそのカイメンには高確率でキャラメルウミウシがついているものですから、このポイントはキャラメルウミウシだらけなのです。

飼育してみると、このカイメンの維持も難しくはなく、キャラメルウミウシも安定して食べてくれるため、比較的長期の飼育が可能だということもわかりました。
キャラメルウミウシが他のカイメンに付着しているところは見たことがなく、かつフィールドではカイメン上にいることが多いため、行動範囲はあまり広くない、あるいは餌カイメンがなくなるまでそこで摂食をし続けるようなタイプなのかもしれません。
そう聞くとさぞ簡単に飼育できるのではと思われがちですが、飼育をしているときにもちゃんと気をつけねばならないことがあります。
骨片を持たないこのカイメンは、内部にたくさんの海綿質繊維があります。キャラメルウミウシはこの繊維は食べず、他の部分を食べるため、摂食部分は繊維がどんどん露出してくるのです。そうなってくると繊維が邪魔で可食部分にウミウシの口が届かなくなってきます。そうなる前に露出した繊維をバリカンのごとくはさみでトリミングしてやる必要があり、そうすると再び食べられるようになります。

繊維が露出しているカイメン。表面のケバケバが繊維。小型個体の姿も。
飼育下ではこれで問題ありませんが、フィールドではそうもいきません。目の前にあるカイメンの表面をあらかた食べ尽くすと、繊維で覆われて食べられなくなるため、他のカイメンを探しに行かねばなりません。

繊維が露出して薄い黄土色っぽくなっている部分はもうこれ以上食べられない。
条件の良いところは近くにも同種のカイメンがあるはずなのでそこまで移動距離は長くはないと思いますが、餌にありつけないまま移動するリスクがついて回ります。
1つのカイメンでも数か月間は食べ続けられそうな印象がありますので、1つ見つければそこそこ安泰な気もします。小型個体も同じカイメンから見つかるので幼生の着底基質にもなっている可能性があります。ということは、浮遊期間中にカイメンを見つけて降り立った時点でそれなりによい一生を送れそうな気がします。食べながら成長し、そして同じようにやってくる他個体を繁殖相手にすれば良いのですから、キャラメルウミウシの一生は幼生時代を乗り越えるのが一番のハードルなのかもしれません。
そんなキャラメルウミウシ。餌の確保と維持の容易さ、着底基質の目途、そして比較的長期の飼育実績。これだけ条件がそろっていれば、繁殖に取り組むべきでしょう。
いろいろと練習中ではありますが、誰もやっていない種としては、次なる目標はキャラメルウミウシ!です。

卵を育てるのは最難関。様々な条件をクリアしてから。




