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Vol.7 北薩の海でウミウシ調査

2018.2.12

みなさんこんにちは。
毎日寒いですね。南国鹿児島も例に漏れず雪がちらほら。。。

さて、この非常に寒い時期ですが、海の中ではウミウシたちが活発になる時期、すなわちウミウシ調査の本番でもあります。ウミウシたちは寒い寒い冬から春にかけてたくさんの種が現れ、多くは夏になると収束していきます。したがってウミウシを扱う私は暖かい夏よりも、凍えるような冬の海に潜っていることが多いのです。(いつもいつも夏が調査本番のサンゴの研究者さんたちが羨ましく思っております)

ということで、新年最初の調査は鹿児島県本土北西にあります長島にてウミウシ調査を行ってまいりました。長島の海は鹿児島では珍しく温帯域の生物が多く、メバルやスズメダイ、アサヒアナハゼ、クジメなどのTHE温帯種が見られます。
地形的にも穏やかな内湾性の海域が多く、ウミウシの餌となる付着生物(カイメン類やヒドロ虫類、コケムシ、ホヤなど)があちこちに見られ、ウミウシの過ごしやすそうな環境が魅力です。

長島での調査はもう何年も続けておりますが、いまだに初記録が出てきますし、年によって見つかる種が異なるのも面白いところです。

鹿児島市内から2時間半かけて長島へ。

寒空の下、器材の準備をし、期待に胸を膨らませながらエントリー。
冷たい水が刺すように体を冷やしていきます。この日の水温は13度。
まだ最低水温とまではいきませんが、鹿児島では寒い方です。

例年、エントリー直後の浅い砂地には緑藻類が繁茂し、嚢舌類(コノハミドリガイなどのなかま)が豊富にみられ、それらを捕食するカノコキセワタも見られます。藻食のアメフラシ類も同じような水深で見つかります。
今回は観察できた種類を紹介してみましょう。

嚢舌類は少なめでしたが、カラスキセワタとカノコキセワタ、アメフラシ、フレリトゲアメフラシ、タツナミガイなどはふつうにみられました。

緑藻を摂餌中だったアリモウミウシ。体長3mmです。

こちらはカノコキセワタ。嚢舌類を丸呑みしますが、良く似たカラスキセワタからは逆に丸呑みされてしまいます。いまだにカラスキセワタとカノコキセワタは中間色っぽい個体もおり、区別するときに迷うことがありますが、食性が明らかに違うのが決め手です。

フレリトゲアメフラシ。何十匹か見かけました。あまり清浄でない泥地にもたくさんいる種類です。

アオウミウシやサラサウミウシなどのカラフルなイロウミウシ科の種はまだ出始めで少なく、今回はマンリョウウミウシやヤマトウミウシ、クロシタナシウミウシが多く見られました。

カイメンを摂餌中のマンリョウウミウシ。よくよく観察するとツヅレウミウシも同じカイメンを食べていました。

クロシタナシウミウシ。名前の通り歯舌をもたないウミウシです。柔らかいカイメンを食べます。今のところ確認できている餌カイメンはグミカイメンとトウナスカイメン。まだほかにもいくつかの種類のカイメンを食べるようです。ちなみにもう少しするとキヌハダウミウシがたくさん出現し、本種は片っ端から捕食されていき、一気に数が減りキヌハダウミウシに取って代わられます。

この他、繊細で美しいサクラミノウミウシや、私の調査では出現率の低いコミドリリュウグウウミウシ、長島でしか見つからないイソウミウシのなかま、コケムシを食べる小さな小さなヒロウミウシ、砂に半分体をうずめたヒカリウミウシ、ハネモに掴まりながら細胞液を吸い取るコノハミドリガイなど、90分×2本の潜水調査で約30種のウミウシを発見することができました。

ハネモを食べるコノハミドリガイ

サクラミノウミウシ

コミドリリュウグウウミウシ

コケムシを摂餌中のヒロウミウシ(体長5mm)

1月にしてはやや少ない印象でしたが、秋に比べて個体数はずいぶん多くなりました。
これからまだまだ増えてくることと思います。

今からがオンシーズンのウミウシたち。
冬の海は時化やすく危険も多いですが、この先、春の暖かい陽気とともに海へウミウシ探しに出かけてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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