日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.14 ヒトエガイの飼育法確立!?

2018.9.21

昨年8月に採集・搬入したヒトエガイが先月8月20日をもって飼育満1年を迎えました。
ユズダマカイメンを摂餌することがわかってから、ヒトエガイの水槽内でユズダマカイメンを同居飼育する形で給餌を続けたところ、1年間飼育することができました。

ユズダマカイメンを食べようとしているヒトエガイ

週に1~3個のユズダマカイメンの給餌で十分そうです。
その他のカイメンも食べることのできるように同居飼育していますが、与えたものの中ではユズダマカイメンしか食べませんでした。裏を返せばユズダマカイメンだけで栄養面も問題ないとも言えるかもしれません。

カイメン類は剥離採集するとどうしても付着面が傷ついてしまいます。そのままにしておくとあっという間に傷んでしまいますので、採集後のカイメンには水流を当てておくようにすると丈夫な種類は回復します。ユズダマカイメンは経験上、丈夫な種類と言えますので、とにかく水流に当てるなど止水環境でない場所へ移し、水槽の壁面や岩などに付着するまで回復させてから餌に使うのが良いかと思います。

また、多くのウミウシは寿命が1年未満とされていますが、ヒトエガイは少なくとも1年以上は生きることが証明されました。

飼育満1年を迎えたヒトエガイ

「ウミウシ学」(平野,2000)によれば1年以上生きるウミウシにはタツナミガイと南極産キセワタガイの仲間、その他数種類の裸鰓類が知られているようです。ヒトエガイの寿命についてはまだ知られていないように思いますので、非常に良い記録になりました。

では1年でどのくらい成長したのでしょうか。サイズを見てみましょう。
ウミウシのなかまは体長を測るときに「ここを測る」という厳密な決まりがありません。
軟体動物ゆえに伸びたり縮んだりするので、測定の際には自分なりに基準を決め、以後の測定も統一しないと何ら意味のない体長データになってしまいます。

私の場合はもっとも「伸びたとき」を基準として測定しています。(「縮んだとき」を測る方もおられます)

この測り方で、昨年の搬入時のサイズが135mmでした。
そして現在の体長は・・・・・・・162mm!!
成長しています!!!

本当はヒトエガイのように貝殻をもっているウミウシは貝殻のサイズを基準とする方がよいのですが、この個体は搬入時になぜか貝殻の測定をし忘れておりまして、仕方がないので体長で比較しました。今回貝殻も測定しましたので随時測定していこうと思います。

そして、今年の4月には2個体目のヒトエガイが搬入されており、現在は2個体を同じ水槽で飼育しています。

2個体目のヒトエガイ

この個体は小さめで、搬入時の貝殻サイズ(長径)は65mm。
現在の貝殻サイズは77mmです。
この個体も成長が見られています(と同時に上記の満1年ヒトエガイの成長が単なる伸び縮みで生じた誤差でないことがわかりますね)。これからが楽しみです。

まずは節目ということで、ご報告させていただきましたが、これでヒトエガイの飼育はある程度目途が立ってきました。ヒトエガイを飼育してみたい方で、ユズダマカイメンが定期的に入手できる環境にある方は参考にされてみてください。

カイメン食のウミウシの飼育はまだまだ手探り状態ですが、引き続き取り組んでいきたいと思います。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。