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Vol.4 突如現れたウミウシ2種

2017.11.2

 朝、いつものようにウミウシの水槽を見ていると、見慣れないウミウシが目に飛び込んできました。

ミドリハナガサウミウシ属の一種?

 ピンク色の背中とその周縁には枝状の突起、触角には鞘があります。特徴からミドリハナガサウミウシ属の一種ではないかと思われます。どこから紛れ込んだのでしょうか。最近ウミアザミの仲間を採集して搬入しましたが、そこについていたのでしょうか。この水槽にはいくつかの海域から採集したカイメンや藻類、刺胞動物が入っているため、どれに起因しているのか特定できません。由来のわからない種の記録は困るものです。うーーむ。このようなときは餌生物が高確率で水槽内にあるため、まずは餌生物を特定し、その餌生物の搬入先から採集場所を絞ります。

 このミドリハナガサウミウシ属の一種を観察するためにバックヤード側に回り、隣の水槽を見ると、なんとそこにも見知らぬミノウミウシがガラスを這っていました。1日に2種も見つかるとは。ツイてます!
 このミノウミウシ、緑色の蛍光発色を放っており、背側突起の形状からもおそらく水槽内にあるマメスナギンチャクに擬態しているのだろうと思われます。このような緑色のミノウミウシを私は1種しか知りません。最近和名が付けられたウテンミノウミウシ(Baeolidia rieae)ではなかろうかと写真を撮ったのですが・・・。

ミノウミウシのなかま(不明種)ウテンミノウミウシか?

ウテンミノウミウシは触角が平滑だとされています。しかしこの種には触角の後ろ側に小さな突起があり平滑ではありません。ひとまずは不明種扱いです。しかしながらウテンミノウミウシが属するBaeolidia属には触角後縁に小突起がある種が多いのです。もう少し詳しく調べてみる必要がありそうです。
このキクマメスナギンチャクの入った水槽は水族館前のイルカ水路で採集した生物しか入っておらず、少なくともイルカ水路産のウミウシであることはわかりました。ウテンミノウミウシは奄美本島で確認されておりますが、鹿児島県本土に生息するのかという点も気になります。

このようにレイアウトや餌として採集した生物もしくは岩等にウミウシがついており、気づかずに搬入して、あとで突然現れる、というケースが往々にして起こります。採集したときは小さかったり隠れていたりして見つからないのだと思いますが、発見したときにけっこうな大きさだったりするので突如出現したかのように感じてしまいます。
しかしこのようなときに発見するウミウシは逆に言えば発見されづらい種であり、珍しい種であることが少なくありません。環境水槽ではこのような楽しみもあるので観察がやめられませんね。そして岩や餌生物の搬入記録も大切なのだと改めて思います。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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