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Vol.31ハート模様のウミウシを探して

2020.2.10

毎年この時期になるとバレンタイン企画と称してハートにちなんだ生き物展示や生き物たちの恋模様などと題した展示があちこちで行われています。

そして案の定と言いますか、『ハートマークのあるのウミウシはいないのですか』、という質問を受けたことがあります。

ずばり、います。

それがこちら。

シロタエイロウミウシ
背面にあるいくつかの白斑のうち、とくに触角の後ろにある斑紋がハート形になります。

しかし。
これには個体差があり、きちんと(?)ハート形にならない個体もいることから、運がよくないときれいなハートの個体は見つかりません。
それでも、概してハートマークになる個体が多く、単なる偶然とは言いにくいのがこの種。

質問を受けた当時、私はこのウミウシを鹿児島県内で発見したことはなく、簡単に発見できる種ではないと思っていましたのでバレンタインに合わせて入手して展示するのは非常にハードルが高いと思ったことを覚えています。

最初に見つけたのは宮崎県の海でした。

初めて見るシロタエイロウミウシ。
「おおお~~~」と感動しながら激写したことを覚えています。(頑固者でぜんぜん鰓出してくれませんでした。泣)

肝心のハート形は・・・・・まぁ言われてみればハートっぽいっちゃハートっぽいか・・・。
うーーん。どうですかね。惜しいんですが、個人的には不合格。

なんとか鹿児島で見つけたいと思いながらも、それから1年近く見つけることができませんでした。

待ちわびた1年後、ようやく鹿児島で見つけたのがこちら。

ああああああああああああああああ。
完全にアウト。真ん中のハートが鰓を囲む輪状斑とくっついてしまっています。残念です。。

がっかりしながら次の機会を信じ、その半年後に再び見つけたのがこちら。

うわ!ハートちっさ!
なんと体長7mmの超小型個体。ピンボケしててすみません。
ハートはきれい。なんなら2つもあるサービス精神旺盛な100点個体。
しかし展示できるほどの大きさではない。。。。。。。。

なかなかうまくいかないものです。

失意の中(?)、さらに半年後に見つけたのが冒頭の写真個体。ちょっと写真暗くなっちゃいましたが、まぁハート形にはなっていることにしましょう。ようやく合格ラインです。

ウミウシ界はなぜか「当たり年」のようなものがあり、それまで全く見かけなかった種類がその年だけ、あるいはその年以降、異様にみかけるようになることがしばしばあります。
水産物にも豊漁の年や不漁の年があるのと同じなのかもしれません。生き物たちも生態系のバランスの上で生きているので何かが原因となって良くも悪くもなるのでしょう。

今年はシロタエイロウミウシがそこそこ見つかり、3個体に会うことができました(これでも鹿児島では多い方)。

前から撮ってみます。少しシワ寄ってますけど、ハート形です。いいですよね、シワあっても。

これも前から。お食事中だったりすると、前からの写真って少し素顔が見える気がしませんか?生き様に迫る感じが出ているといい写真になると思うんですけど、難しいですね~

この個体はぎりぎりハートっぽい?と思うかもしれませんが、ちゃんと体を伸ばしているとハート形しています。現在はこの個体を展示中。無事バレンタインまで展示できるでしょうか。

もしかごしま水族館に来館することがありましたら是非このシロタエイロウミウシを見に来てくださいね。

今回は同じ種でも個体ごとに若干模様が異なることもおわかりいただけたのではないかと思います。
ウミウシの個体識別は大変難しいですが、写真で記録しておけばこうした細かい違いから識別できないこともありません。私も飼育するウミウシはできるだけ全個体撮影してから水槽に入れるようにしていますので、わからなくなったときは写真を見返すようにしています。

ちなみに、当然ですがシロタエイロウミウシはパートナーへアピールするためにこのようなハート柄をもっているわけではありません。そもそもウミウシは目がほとんど見えない生きものとされていますから、視覚情報を頼りにパートナーを探すことはしません。

では偶然の産物なのでしょうか。

なぜハート模様になったのか、はっきりとした意味が見出せない以上はこの理由を突き止めるのは難しそうです。もやもやしますね。

ただ、水玉模様の一つが偶然ハート形になっている、といったレベルの偶然とはまた話が違います。シロタエイロウミウシの場合は統計は取っていませんが、明らかにハート形が多いのです。

生き物にとってハート形が意味するものは当然人間とは異なるとしても、この形の偶然には何か意味があるのではないかと思ってしまうのが人間の心情でもあり。
模様の不思議には惹きつけられるものがありますね。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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