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Vol.9 樹液を吸うウミウシ

2018.4.8

ウミウシの中には嚢(のう)舌(ぜつ)類というグループがあります。
巻貝のなかまは歯(し)舌(ぜつ)と呼ばれる歯を持っていますが、本グループのウミウシは歯舌が使い捨てで、使い終わった歯舌を溜めておく「舌(ぜつ)嚢(のう)」と呼ばれる構造をもっていることが特徴です。

ミドリアマモウミウシの歯舌

この嚢舌類、英語ではsapsucking slugと呼ばれています。直訳すると「樹液を吸うウミウシ」といったところでしょうか。
もちろん実際に木に登ったりするわけではありません。
嚢舌類ウミウシは海藻類、とくに緑藻を好んでエサとします。例によって食べる緑藻の種類はウミウシの種によって違います。
アメフラシ類も海藻を餌とすることは有名ですが、嚢舌類との違いは「食べ方」にあります。アメフラシ類がそれこそ牛のごとくむしゃむしゃと藻体を食べて飲み込んでしまうのに対し、嚢舌類は藻体の細胞壁に穴を開け、中の細胞液を吸い取って食べています。
したがって嚢舌類の食後には中がスカスカの透明になった残骸が残されることとなります。
今回はこの食べ方を確かめるべく実体顕微鏡で食事中のウミウシを観察することにしました。

今日の主役はサミドリモウミウシ。

ハネモという海藻を食べ、ハネモに着生して擬態しながら暮らしています。知っていないと海中で見つけるのは困難で、海でウミウシを探すよりもハネモをたくさん取ってきてサミドリモウミウシがついていないか片っ端から確認していく、という方法の方が見つかります。
体長は2mmくらいから目につくようになりますが、どんなに大きくなっても2cmくらいでしょうか。多くは1cm以下です。
一方のハネモはこのような海藻です。

羽根のような形の葉状部が特徴。鹿児島県本土では秋から冬にかけて繁茂します。
採ってきたハネモの一部をシャーレに入れ、体長5mmほどのサミドリモウミウシを放ちます。

顕微鏡で見ていると早速ハネモにつかまりました。
顕微鏡画像で見てみましょう。

ハネモの“茎”部分につかまって、口元でくわえているのがわかります。
歯舌で穴を開けようとしています。

しばらくして穴が開くと即座に吸引を始めます。ハネモの茎の中の緑色の細胞液がどんどん形を変えて吸い込まれていくのがわかります。

ちゅうううううううううううーーーーーーーー

まだまだちゅううううううううーーーーーーーー
ものすごいくわえてます。

サミドリモウミウシの体内に透けて見える緑色の部分は中腸腺と呼ばれます。ここにとりこんだハネモの葉緑体が溜め込まれていきます。

吸っている時は中腸腺も脈打つように膨らんだりしぼんだり。食べたものが次々と送られていっているのがわかります。

ハネモは細胞が大きい海藻なのでしょう。1か所に穴を開けただけで茎のほとんどの緑色が失われて行きました。

ほぼ完食です。
動画で伝えられると一番わかりやすいのですが。

ウミウシは動きの少ない生きものなのでこうして特徴的な行動をしているときは大変見ごたえがありますね。
嚢舌類はほとんどがこのような摂餌方法を採っているとされています。たくさんの嚢舌類を飼育しようとするとけっこうな数の餌海藻が必要で、海藻自体を培養したりして増やして準備していくことも重要です。
これからもウミウシの摂餌行動など撮影して紹介していければと思います。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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