日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.10 海のピカチュウに会いに

2018.5.3

冬春はウミウシシーズンと言いながらも海は時化まくり。
ウミウシ調査も中止が続き、思うようにウミウシは入手できず。。。
イルカ水路で黙々とコノハミドリガイとキヌハダウミウシを採集する苦しい日々が続きました。

今度こそはと臨んだGW前のウミウシ調査。
事前情報では現在ウデフリツノザヤウミウシが大量に出現中とのこと。
実はこのウミウシ、ウミウシ界でも1,2を争う人気のウミウシなのでこれは絶対に見つけなくてはと、調査地へ向かいました。

しかしその日に限って大雨、前日からの強風もあって海は時化模様。
がっかりしながら、しかし潜水予定のポイントは潜れないほどではなかったのでひどいうねりと濁りの中を潜りました。

このポイントは一年中シライトウミウシとコイボウミウシが溢れているのですが、この日はぽつりぽつりとしか見つからず・・・
濁っていて発見率が落ちているせいなのか、今季の出現が少ないだけなのか。はっきりしません。

シライトウミウシ Chromodoris magnifica

コイボウミウシ Phyllidiella pustulosa

いつもと違い、ミナミニシキウミウシが異様にたくさん見つかります。

ミナミニシキウミウシ Ceratosoma gracillimum

80~120㎜くらい。大きくて見栄えがします。背中の突起が左右と後方に伸びているのが特徴ですが、この突起、栄養状態が悪いと低くなります。栄養状態が良く元気な個体は突起も立派に張り出しているので、海での観察時にも個体差があって面白いところです。

肝心のウデフリツノザヤウミウシは探しても探しても見つからず。本当にたくさんいるのか疑ってしまうほど見つからず。

ウミウシがとくに多い岩場でも見つからず。ジボガウミウシが顔を出すばかりです。

ジボガウミウシ Glossodoris misakinosibogae

ジボガウミウシは比較的普通種なのですが、いつもえらをフリフリと動かしながら歩く様子を見ていると人気が出るのがわかります。色も主張しすぎていないところがまたいいですね。

黄色くないキイロイボウミウシも。

キイロイボウミウシ Phyllidia ocellata

キイロイボウミウシは色彩変異が多いのですが、この色はちょっと・・・名前の付け方を間違えたと思わざるを得ないタイプです。
腹面すらも黄色くない。イボウミウシ類はややこしい種が盛りだくさんで私も正確に認識できていない種もありまして、ちゃんと調べる機会をもたないといけませんね。

と、残圧ももう少なくなってきて引き返そうとしたところでようやく発見しました。

ウデフリツノザヤウミウシ Thecacera pacifica

ピカチュウの愛称で人気となったウミウシです。

残圧が無いときに限って見つけてしまうのはなぜでしょうね。

このウミウシ、確かにあのピカチュウに似ていていかにも展示向きなのですが、飼育が非常に難しいのです。水質変化や外傷にも敏感で採集、輸送、搬入作業時にも注意が必要です。おまけに飢餓に弱いコケムシ食です。
とくにフサコケムシ類を食べますが、コケムシ類の飼育はどうにもうまくいきません。カイメン類よりも難しいと言えます。現状では船の係留ロープやフロートの裏などに付着するコケムシを探して採集し、供給するしか対処できず・・・。餌の切れ目が縁の切れ目です。

今回は現地での協力もあり、なんとか2個体を入手し、展示することができましたが、こんなわけでGW中ずっともつかどうかはわかりません。予めご了承ください。

もちろんウデフリツノザヤウミウシ以外にも、調査採集した種をたくさん展示しています。
GW中のうみうし研究所、5月2日現在で47種のウミウシを展示しております。期間中、展示種数の変動は若干あるかと思いますが、少なくとも40種は展示できるかと思います。
小さい種類もいますので、全部見つけるのは難しいかもしれませんが、ぜひ40種以上見つけてみてくださいね。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。