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Vol.17 ウミウシ界の帝王

2018.12.19

 ミカドウミウシはウミウシ類の中では抜きんでて大型の種類です。最大では60cmを超えるというらしいその巨体(私はせいぜい30cm程度までしか見たことがありませんが)は堂々としていて「帝」の名も納得(?)

 ミカドウミウシ Hexabranchus sanguineus

 しかし大きな体の割にあまり人前には姿を見せず、ダイビングでも大型個体を見つけることは稀です。
 赤いレース状の卵塊を見かけることは多く、その海域に生息していることはわかるのですが、産んだ本人を見つけることが難しいのです。

 ミカドウミウシの卵塊。黒潮の当たる海域ではよく見つかる。


 決定打に欠けますが、私の見立てではミカドウミウシはおそらく夜行性。日中は転石の裏などに入り込んでじっとしていることも多いと思われます。
 ナイトダイビングではのっそりと岩間から這い出てくるミカドウミウシを見かけることがあったり、日中でも岩をめくってひたすら探すと見つかることがあります。

 夜、岩の隙間から顔を出したミカドウミウシ。
 「ぬっ」という表現がいかにも合いそうです。こんなゆるキャラいそうですね・・・。


 体色は基本赤色または朱色に白色の粉状斑が全体にあったり、白色の独特な模様を持っている場合がほとんどですが、いくつかバリエーションがあります。

 ほとんど白い斑がないタイプ。

 この個体は全体に橙色気味。薄い水玉様の斑紋があるのもわかります。


 そしてまったく色彩の違うタイプ。

 鰓がまるで炎のようなので私たちは勝手にファイアータイプと呼んでいます。
 かっこいい。鰓だけがやけにかっこいい。

 ちなみに彼はいまカイメンを摂餌中。シカツノカイメンでしょうか。


 とまあ3タイプくらいありますが、全て同種で、これらは種内変異とされています。
 ミカドウミウシは1科1属1種。こんなオーソドックスな形しているのに!イロウミウシ科じゃないんかーい!と思う方もいるやもしれませんが、イロウミウシ科と違って鰓孔が6個なんですねえ。そして鰓葉がそれぞれの穴から独立して出てくる。ここがポイント。
 文字で書くとなんだか小難しく聞こえてしまうのが分類学の短所と思いますが、わかってる人にとってはパッと見でどこか形態が違うことがわかってしまいます。

 でも小難しく言っても伝わりにくいもんだから「顔が違う」とか「表情が違う」とか「体形が違う」とか言ってしまうんですねえ。余計わかりにくいんですが。おもしろいものです。

 さて、色彩の話をしましたが、実はミカドウミウシは子供の頃、体色が異なります。

 小さいとき。2~3cmくらいまではこんな色してます。知っていないと本当にイロウミウシ科と見間違ってしまいますが、やはり鰓の出方で判断可能です。小さくてもちゃんと特徴もっています。

 5~6cmくらいまでがこちら。少し背中に赤みが差してきました。

 10cm近くなるとこんな感じ。このまま色を濃くすれば大体大人と一緒ですね。


 と、わかりやすいように体長を入れてみましたが、結構な個体差があるようで、実際には3cmくらいですでに大人と同じ体色のものもいます。
 小さいうちから大人びてる子っていますがそういうこと・・・・でしょうか。



 ミカドウミウシは見つけにくい!というようなニュアンスで書き始めましたが、多い場所ではけっこうたくさん見つかります。大物はやはり少ないですけどね。
 泳ぐウミウシの代表種でもあり、いつも内側にカールして畳んでいる外套膜の周縁は泳ぐときにはきれいに開いてフリル状になり、体を前後にくねらせます。これまた鈍くさそう な泳ぎなのですがコミカルといいますか。一度見てみると突っ込みどころ満載でおもしろいです。
 大物なので各地の水族館でゲリラ的に展示されることもあります。見かけたらじっと泳ぐのを待ちましょう。良い動画がとれますよ。

 夜に泳ぎ出すミカドウミウシ

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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