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Vol.23 ビーチコーミング調査

2019.6.27

多くの人は海に行ったときに浜辺を歩いて貝がらを拾った経験があると思います。これをビーチコーミングといい、浜に打ちあがるさまざまな漂着物を拾い集めることを指します。
生物の残した骨や殻、フロートやペットボトルなどの人工物、流木などの陸地の自然物まで、海には実に様々なものが漂着します。人によってはこれらがすべてコレクション対象になることもあれば、全く興味のない人にとってはガラクタの山に見えるかもしれません。しかしどちらの立場にいたとしても、その人工物すなわちゴミの量に、世界規模での環境問題を痛感せざるを得ません。
海をきれいにと謳う一方で、平気で捨てる人も依然として多いのです。悲しいことですね

さて、今回は小さな小さな貝がら「微小貝」を集めに浜へ出向いていました。

微小貝とはおおむね1cm以下の貝を指しますが、この大きさで大人(成貝)だったり、もしくは子ども(幼貝)だったりと、種類によってさまざまです。ふだんあまり目につかない小さな貝には色模様の非常に鮮やかなものや形の変わったものなど、ウミウシと同じような魅力があり、探すのは楽しいものです。

が!

私の本当の楽しみはそれらの貝の中からウミウシの貝がらを見つけ出すことにこそあります。
ええもう当然ですね。

この調査はどんな海でも、そしてノンダイバーでもできますので一般の方にもハードルが低い調査と言えそうです。
デメリットは貝がらしかみつからないことでしょうか。
要は生きているウミウシにはほとんど会えませんし、およそ貝がらのあるウミウシにしか会えないということになります。でも逆に砂中潜行性の種が多い殻持ちウミウシを探すにはよい調査とも言えます。

今回の調査地は錦江湾の砂州。
それも陸繋砂州です。なんだか懐かしい単語です。
満潮時には水没し、干潮時には姿を現す浜を砂州、そのうち離れ小島に続いているものを陸繋砂州といいます。
陸繋砂州はあちこちにあるような地形ではなく、どちらかといえば珍しい地形です。
(この調査自体は陸繋砂州でなくとも普通の海岸で十分可能ですので、どうぞお近くの海岸でお試しください。)

こちら錦江湾の陸繋砂州。ちょっとした観光スポットになっています。
潮風にあたりながらこんなところを歩いてみるのもたまにはいいですよ。

小さな貝は軽いので浅いところ(満潮線付近)に蓄積されていることも多く、歩き回って貝がらが集まっているところを探します。

波が打ち寄せたあとには微小貝やごみで構成された波の痕が残っていることがあります。
こうしたところに手をつき膝をつき、時には這いずり回りながら探します。

貝がらのたまった波の痕が線状に出来上がります。なんとなくわかりますか。ここが狙い目。

チャック付きのポリ袋などを片手にひたすらちまちま拾います。
ちまちまちまちまちまちま。。。
暑い日はたまに水分補給をしましょう。風の気持ちいい曇りの日が過ごしやすくて調査にはベストです。

波の痕がぜんぜん見つからなくても、こんな風に貝がらが集まっているところはよくよく見ると微小貝があったりします。
こんなところからもひたすらちまちま探します。

こうして集めたのがこちら。

この場所はツノガイの貝がらが多かったですね。白くて細長い貝がそれです。
ぱっと見でこの中にウミウシの貝がらが混じっていることに気づく方はけっこうな貝がらマニアかもしれません。どうでしょう?わかりますかね。

さて。では拾い集めたウミウシの貝がらを少し紹介しましょう。
前回の記事でも書きましたが、私は翼足類だろうが頭楯だろうが貝がら持ちウミウシは苦手分野でございます。
ですので。甘めに見ていただけると幸いです。
それと注意点ですが、打ちあがった貝がらは必ずしもきれいな状態ではないことがあります。波で削れて模様や溝がかすれてしまっているもの、割れてしまっているものなどもありますので、種まで同定できないものも!
・・・・・というのも言い訳で、おそらく詳しい人はそれでもけっこうなところまでわかってしまうのだと思います。

では参ります。

マメウラシマガイ
砂をふるう調査でも発見されたことがあります。私はまだ生貝を見たことがありません。
白くて美しい貝ですね。
いくつか近縁種がいるようなのですが・・・・・おそらくふつうのマメウラシマガイではないかと思います。

カイコガイダマシ
円筒形の貝がらの表面の上下寄り(前後寄り)に幅の狭い線(螺溝)が見えます。
生貝はこちら。

こうやって頭を砂地につっこんで潜っていきます。
今回の調査ではけっこうな量が取れました。殻だけですが。近縁種もそこそこいるので注意して観察しましたが、今回取れたものはおそらくほとんどが本種です。

トウマキカイコガイダマシ。
カイコガイダマシに紛れていたのがこの1個体のみ。
殻が割れていますが、螺溝が上下だけでなく中央部にもあるので見分けることができます。
写真ではうまく写りませんでした。ごめんなさい。
分布が奄美以南となっているのでちょっと自信がありませんが。どうでしょうね。

コシイノミガイ
これもよく見つかる貝がらですが、茶色~茶褐色の長四角斑が並びます。
この模様、じっと見ているとどことなく学生時代にやったPCRのバンドを思い出す気がするのは生物学科あるあるか・・・?
模様が消えている貝殻もあったので、全部がこの種なのかどうかは不明ですが、砂ふるい調査でもよく見るかる種ですので、たくさんいてもおかしくありません。

こちら生きているコシイノミガイ。
砂地に置くとすぐに潜って行ってしまうので写真が撮りにくい!
殻の模様はけっこうな個体差があるようですね。

ナツメガイまたはコナツメガイ
けっこうな頻度で見かける貝がらなので、拾ったことがある方もいるかもしれません。
しかし生貝は私はまだ見つけたことすらありません。
こんなに貝がらがあるのに、いったいどこにいるのでしょう。。。
殻は硬く丈夫です。
ナツメガイとコナツメガイの違いは
ナツメガイ・・・2~3本の黒色螺帯がある、殻表に小白斑が散在する
コナツメガイ・・・殻表には黒色斑に付随する形で小白斑がある

んんんんんんんんんんんんんんんん。
どっちにも当てはまらないような・・・。
他にタイワンナツメガイ、ヒメナツメガイがいるそうですが、それらは違いそう。
難しいので保留で。

たくさん取れたので2個体分並べますが、ブドウガイではないかと思われます。
しかしニクイロブドウガイと呼ばれる種がおり、その違いが微妙で判断が難しい。
ニクイロブドウガイは貝がらの色が明るい赤褐色、殻表には細かい螺溝がある。
ブドウガイは殻がより円形に近い、殻表に色帯はなく、波打った細かい螺溝がある。
両種の貝殻を見比べないとなんとも。といったところでしょうか。
ブドウガイ生体の入手は難しくないので、生体が手に入り次第確認してみようと思います。

生きているブドウガイ。体の色が透けて見えているので殻の色が目立ちませんね。

ベニシボリ
殻が割れていますが、特徴的なピンク色の模様ですぐに本種とわかります。
ベニシボリは私は奄美でしか発見したことがありませんでしたが、錦江湾にもいる可能性が高くなってきましたね。生貝はこちら。

非常に美しくかわいらしい貝です。

以上、約7種のウミウシ類の貝殻が見つかりました。
実はこれ以外にも生きたミスガイを拾ったりできたのですが、ミスガイはこないださんざん出したのであえて載せませんでした。

初めて取り組んだ調査でしたが、いろいろと発見があり、有意義な調査になりました。
これたびたびやっていると殻持ちグループに強くなるかもしれません。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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