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Vol.26キイロウミウシの飼育

2019.9.30

ウミウシの名前はその体色を単純に表して名前にされているものも多く見られます。
日本人による日本産ウミウシ研究の初期(1890年代)には青ウミウシとか白ウミウシなどといった和名からつけられています。
なるほど、こういった種はたしかに、多くの人が名前を付けようとすればアオウミウシとかシロウミウシになりそうです。

アオウミウシ

シロウミウシ

概ね、早いうちに研究されているものほど普通種であることが多いと思いますが、発見される種数がどんどん増えていけば当然のことながら単純に1色では言い表せない色彩の種も増えていきます。
それでもこれまでにアオ、シロ、キイロ、ダイダイ、モモイロ、レモンなどといった色名が使われています。『〇〇ウミウシ』の形以外であればムラサキやミドリ、オレンジ、アカ、クロ、チャイロ、ハイイロ、ソライロなども使われています。

時代ごとに使われる色名や模様名も多様になってきており、研究者は色名や模様名などを勉強し、色や形だけではなくさまざまな表現を駆使しながら対応しています。これはウミウシだけに限らず種数の増え続けている全生物について言えるかもしれません。

キイロウミウシは1932年に和名が提唱されており、比較的初期の段階で名前がついていた種の一つです。
本州でも南西諸島でも見られるウミウシで、浅海の岩場に生息しています。
アオウミウシやシロウミウシのなかまとは少し形が異なり、外套周縁がフリル状に波打っています。淡い黄色地に触角や鰓などの黒いアクセントが特徴的ですが、ものを見ればキイロウミウシと名付けたくなるのも頷けます。

鹿児島では冬から夏までさまざまな時期に見つかっており、好適な水温が判断しにくい種です。
あまり頻繁には見つかりませんが、たびたび飼育・展示を行っています。

キイロウミウシはカイメン食で、海では摂餌中の個体もよく見受けられます。

カイメンを摂餌中のキイロウミウシ

この黒っぽいカイメン、種名はちょっとわかりませんが、よく見かける種類です。

ほかにもいくつかの種のカイメンの摂餌を確認していまして、水族館前のイルカ水路に生息するカイメンの1種も食べてくれます。
しかもこの水路産のカイメンはキイロウミウシに食べ続けられながらもずっと傷まずに生きているため、かなり長持ちします。

キイロウミウシがとれたときにはこのカイメンを与えながら飼育します。

前回飼育した個体はこれで8か月半の飼育に成功しました。

ふつう、カイメン類の入手と維持は大変難しいため、カイメン食のウミウシの中ではヒトエガイに次いで長い記録になりました。

今回は3個体のキイロウミウシが入手できたので同じように長期飼育に挑戦中ですが、複数で飼育してしまうとどうしても交接・産卵して体力を消耗するので、結果的に短命に終わってしまうことが多かったりします。

単独で長く生きてもらうか、複数で短く濃く生きるか。
どちらが良いのかは人それぞれだと思いますが、飼育・展示という意味では複数で長くが一番。
まずは実績のある8か月半を超えられるよう取り組んでいきたいと思います。

著者プロフィール

西田 和記(にしだ・かずき)

1987年、愛媛県生まれ。
2010年 鹿児島市水族館公社(いおワールドかごしま水族館)入社。
深海生物、サンゴ、ウミヘビ、クラゲなどを担当する傍ら、ウミウシの飼育・展示・調査に勤しむ。ウミウシ類の飼育技術の確立が目標。

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