
私事ではありますが、この度、15年勤めたかごしま水族館を退職することとなりました。
在職中にお世話になった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、わざわざ遠く鹿児島まで会いに来てくださった皆様、本当にありがとうございました。皆様に支えられながら過ごした日々の中で、たくさんの経験をさせていただきました。一個人ができることはわずかなものではありましたが、訪れる皆様に少しでも満足感を与えられていましたなら、取り組んできた甲斐があったというものです。
私は高校生辺りから水族館への就職を目指し、大学生のころはいくつかの水族館で実習をさせていただき、卒業後にかごしま水族館に就職しました。水族館での業務は想像以上に多様かつ多大で、体力仕事や危険を伴う仕事も多く大変でもありました。しかし、この業界だからこその、これまで見たこともない生物との出会いは、シンプルに楽しく、生き物好きには最高の職場だなと思ってきました。この業務の中で出会った生物種は確実に2000種、いや3000種以上かもしれません。生物だけではなく、県内外各地で出会う漁業関係者やダイビング関係者、同業者の方々との出会いも大変刺激的で楽しいものばかりでした。15年間で訪れた200を超える様々なフィールド、1000本以上のダイビング、漁船や実習船で目にしたものは全てが新鮮で、この時に感じた思いを、この素晴らしい自然環境を伝えるために飼育員という職があるのだと感じ取り組んできました。当然ずっとこの業界でやっていくものだと思っておりましたが、私もそこそこの歳になってきて、現場の経験値もそれなりになり、会得できるいろいろな物事が頭打ちになっていく感覚もあり、本当にこのまま同じ職場に居続けることが自分のためになるのだろうかという気持ちも芽生え始めました。一方で自分だけの人生ではなくなってきており、決断までには相応の葛藤もありました。
学生時代の恩師の一人がしきりに私に伝えていた言葉が今でもよく思い出されます。
『迷ったらワクワクする方を選べ』
当時聞いていてもそう選択したいものだとは思っていましたが、現実的にはいろいろな条件や状況が邪魔をして、素直に選べないことも多いのではないかとも思っていました。
しかし今、私にとっての『ワクワク』は水族館ではなくなっていました。
こうしてより『ワクワクする』新たな職場へ移ることとなりました。
この決断を理解し、日々私を支えてくれている家族へは本当に感謝しかありません。
私はこれをもって水族館業界から離れることになります。
実を言えばやり残したことも、まだまだやりたいことも、やれることもあったのですが、全てはタイミングでしょうか。
新たなチャレンジと次なるステップアップへ向けて、地道に、そして愉快に、取り組んでいければと思います。
すでに最後の勤務は終了しましたが、かごしま水族館のウミウシの展示は後任の後輩へ引き継ぎました。
ウミウシ展示の継続はウミウシが専門ではない方にとっては大きなハードルとなることでしょう。
しかしそこを乗り越えたときに確かな成長があるはず。。。と信じています。
勝手に辞めていく立場としては、なかなかの重責を背負わせることになり申し訳ない気持ちと将来性に期待する思いが混在していますが、今後、かごしま水族館がウミウシの展示を継続するか否かがその肩にかかっているとも言えます。ここで未来有望な信頼できる職員に託すことができたのは幸いでした。まぁ、あまり固いことは考えず、自分なりに頑張っていただきたいところです。
実力がつくまではしばらく不安定な展示があるかもしれません。勝手なお願いではありますが皆様もどうかご理解いただいて、ウミウシ展示の継続を応援していただけましたらと思います。
私も退職してもウミウシ展示へのサポートは行っていく所存です。
そして、退職直前には鹿児島をホストとして日本ウミウシ研究会第2回大会を開催することができました。
50名以上のウミウシの専門家にご参加いただき、鹿児島の磯でウミウシ探し、その後研究発表会と今回も大盛況でした。前回ほどのウミウシだらけの磯というフィールドではありませんでしたが、過去最多の種数(43種!)が発見され、初記録種も見られました。ある程度の満足感は得られたのではないかと思います。
今回は大会の運営担当としてサポート役に専念させていただきましたので、余裕をもっての交流の時間はありませんでしたが、たくさんの方々とご挨拶でき、大変実りある回になりました。
かごしま水族館も見学コースに入れていたため、個人的にはウミウシの展示を見てもらう最高の機会でもありました。・・・・・がその分プレッシャーも大きく、何とか展示種を充実させようと直前まであちこち潜って回りました。50種類以上は展示できたと思いますが、私の15年間の集大成たる最後の展示は専門家の皆様の眼にどう映ったでしょうか。ご満足いただけておりましたら、ウミウシ展示の質も保証されるというものですが、さて。
では、これをもちまして一旦筆をおいて・・・・・・
と思っておりましたが、本どうぶつのくにの記事投稿はなんと水族館に所属していなくても良いとのこと!!
大丈夫ですか。今後は私ただのウミウシ愛好家・・・?
と、言われないように研究にも注力していければと思います。
今後は少し記事の内容が変わっていくかもしれませんし、水族館の時ほど記事のネタがあるかどうかはわかりませんので少し不定期になる可能性もありますが、できる限り継続できればと思います。
これまで水族館飼育員としてのウミウシの記事をお読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。
そして今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
2026年3月
西田和記




