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Vol.13 大牟田市動物園の獣医さんになりました。

2013.4.22

4月1日から、福岡県の南部にある大牟田市動物園で獣医さんの仕事をしています。
初出勤の日、 あいさつもそこそこに園長から、「ゾウの具合が悪くて、早速診てください」と言われてアフリカゾウの花子さんの所に行きました。
「昨日からエサを食べずに、動きも悪くて、調子悪いんです」とゾウの飼育員さん。
見たところ、何か痛そうなゆううつそうな、本当に調子が悪そうです。長い鼻でお腹を気にしています。昨日から糞をしていない様子。

 

 

経験から察するに馬だと疝痛(せんつう)だけど・・・。本で調べると、やはりゾウは疝痛を起こすことがあり、治療は馬に準ずるとサラリと書いてありました。

ポニーの疝痛は30年間ずっと治療してきたので、すぐにできます。しかし、相手はアフリカゾウ、体重は約4000kgで、ポニーの200kgに比べると20倍です。
ポニーの時は押さえて注射をしたり、ポニーの鼻から胃までチューブを入れて薬を入れたり、お尻から別のチューブを入れて浣腸したりという治療を行います。
しかし、アフリカゾウで、今まで注射をしたことがない花子。痛がっているゾウさんに無理に触れると、ちょっと暴れただけでも大事故につながります。
馬のように鼻からチューブなんてとんでもない。でも、 初日から挫折・・するわけにはいきません。

 

 

それで、飲ませることのできそうな薬を人の治療薬から探したり、過去の動物園のデータを探したりしていたら、飼育員さんが、大きな硬いゾウの糞を持ってきました。
ソフトボール位の硬い乾燥した固まりで、周囲に粘膜と血液が付いています。
「やっぱりこれは便秘の疝痛ですね。まずは1回出たので、様子を見ましょう。腸の血液がつくくらいに便秘ならば、ひどい腸炎にもなることもあります」と説明し、様子を見ることとなりました。夕方まで、硬い糞を数回したので、ちょっと安心。
馬だったら、聴診器ですぐに腸音を聞けたりするのに、簡単にさわれないゾウは大変です。

 

 

帰宅後、ゾウの治療経験のある動物園獣医さんに電話しました。こんな時にいろいろアドバイスしてもらえるのはとってもありがたいです。その獣医さんもきっと疝痛ということで、ゾウさんは馬の3~4倍の量の投薬が必要と言って薬とその量を教えてくれました。
でも、薬品庫には、そんなに薬はなかったような・・・と思っていたら、「明日みつくろって送りましょうか。治ったときに返して貰えばいいから」というありがたい申し出。
「ゾウさんの体調が第一なので、ゾウさんが治るためには協力します」ということでした。
動物園の獣医さんは動物が治るために協力しあう関係なのです。とってもとっても嬉しかったです。
翌日にはお薬が届き、なんとか下剤をのますことができて、花子の体調も良くなってきました。
初日の初治療がゾウの花子さんで、なんとか治ってホントに良かったです。幸先良い仕事になりそうです。
4月8日には、元気になって、お鼻で握手をしてくれました。
「花子、これからもよろしくね。」
そんなわけで、これからは大牟田市動物園のお話などを書きたいと思います。
花子同様、皆さんもよろしくお願いしますね。

 

著者プロフィール

高田 真理子 (たかた まりこ)
1957年5月4日 福岡市生まれ。筑紫女学園高校を卒業後、宮崎大学農学部獣医学科を1981年に卒業し、獣医師となる。
動物が大好きで小学生の頃から動物園の獣医さんを志して、1983年に念願の海の中道海浜公園・動物の森の獣医さんになった。
以降30年間にわたり動物たちの治療や衛生管理を行ってきた。その間、動物の世話や治療だけではなく、「動物をもっと好きになって、動物ってすごいよ、すてきだよ」と子ども達に『動物の森一日飼育員』『動物ふれあい教室』等のイベントを行なったり、機関誌『動物の森だより』を作ったり、動物相談に応じたり、動物の森ZOO ボランティア育成を行ったり動物に関する事の全般を行った。
2013年4月からは福岡県の大牟田市動物園で獣医師として新たな動物園ファン作りをしています。
九州沖縄ブロック動物園水族館獣医師臨床研究会(kozavg)代表。現在福岡市東区在住。
学芸員、社会教育主事、プロジェクトワイルドファシリテーター、公園運営管理士。

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