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Vol.21 学芸員講座で学ぶ動物園学

2014.1.4

師走ですね。先生も獣医師もみんなみんな走るあわただしい季節です。
でも、その先には新しい年が待っています。新年に向かって走るこの季節はなんかワクワクしますね。

 

 

 さて、12月9日~13日、福岡のマリンワールド海の中道で、「アジア動物園教育担当者会議2013」というアジア圏の動物園教育に関する国際研究会が開催され、参加してきました。
 210名以上というたくさんの参加者が日本も含むアジア各国から来ていました。
 今回、ポスター発表という形で発表させていただきましたので、その内容をご紹介します。

 

 

 私は昨年から福岡にある九州産業大学で博物館学芸員養成講座の「博物館資料保存論」の講義をしています。
 博物館資料保存論と言うと、ふつう美術・工芸品などが長い時間をかけて傷んでいくのをいかに防ぐかという学問になります。
 とくに、この大学は芸術学部のある大学なので美術品の保存はとても需要です。
 資料保存論の中で、美術品の保存論7回と、動物園の保存論7回の講義計14回講義になっていて、その動物園部門を担当しました。

 福岡県は6つの動物園水族館がある大変恵まれた地域です。
 それで、ここの芸大生は身近に動物園水族館があるため、画材によく動物が登場します。
 受講生の動物園に対する理解は、「動物を見て楽しむレジャー施設」と子どものときから思っている学生がほとんどでした。
 今回の講義で、動物園は博物館の仲間で、その目的は1.教育 2.レクリエーション 3.研究と一緒だけど、動物園にはもう一つ自然保護、特に種の保存という大きな目的があると言うお話を中心に、動物園の資料保存論は「種の保存」論であり、各動物園の資料保存は動物の飼育管理であると話し、動物園の大切さ、種の保存の大切さを7回にわけて講義しました。

 

 

 講義の中で1回ワークショップを行いました。
 これは、プロジェクトワイルドと言う環境教育プログラムの一つですが、「第一印象」というアクティビティです。
 各自、嫌いな生き物をあげてもらい、グループを作ります。
 そして、各グループに、「あなたはその飼育係です。その生き物がいかにすばらしいかをお客様に解説しないといけません。嫌いな生き物ですが、そのすごいところをタブレットや携帯などで調べてプレゼン資料を作ってみんなに教えましょう」というワークショップです。
 だいたい、ヘビ、ゴキブリ、毛虫、ムカデ、ネズミなどが嫌いな生き物の代表選手になりますが、各動物のすごいところをプレゼンしてくれて、その生き物のすばらしさを実感し納得します。
 たとえばゴキブリは劣悪な衛生環境下でも生きていけるので、持っている酵素などが今後の人類を救うかもしれないとか、毛虫は生態系のピラミッドの底辺なので、毛虫がいないと生態系はなりたたないとか、とってもいい解説が紙芝居などの教材を使って展開されます。芸大生ならではの技術です。

 

 

 結論は、地球上に不要な生き物はいない、すべての生き物はすごいところを持っているし、重要だということです。

 

 

 毎回このプレゼンでは私も学ぶところが大きく楽しみです。

 

 

 受講当初のアンケートでは、動物園の博物館活動にはあまり興味を持たなかった学生たちは、修了後にレポートを提出してもらうと動物園の意義を本当に理解して、もし、動物園を作るならこのような展示をしたい、看板やデザインに工夫していない動物園が多いので、私だったらこのようにすると言った積極的な意見がたくさん出ていました。

 

 

 現場サイドから考えても、芸術やデザインを学んだ飼育スタッフがいれば、もっと来園者にわかりやすくてきれいな展示ができるのにと思いました。
 実際に、講義を受けて動物園で働きたいという学生も1/3もいて、今後の活躍が期待されます。
 動物園の学芸員にならなくても、動物園の種の保存を学ぶということは、その学生の大きな知的財産になるのではないかと思いました。

著者プロフィール

高田 真理子 (たかた まりこ)
1957年5月4日 福岡市生まれ。筑紫女学園高校を卒業後、宮崎大学農学部獣医学科を1981年に卒業し、獣医師となる。
動物が大好きで小学生の頃から動物園の獣医さんを志して、1983年に念願の海の中道海浜公園・動物の森の獣医さんになった。
以降30年間にわたり動物たちの治療や衛生管理を行ってきた。その間、動物の世話や治療だけではなく、「動物をもっと好きになって、動物ってすごいよ、すてきだよ」と子ども達に『動物の森一日飼育員』『動物ふれあい教室』等のイベントを行なったり、機関誌『動物の森だより』を作ったり、動物相談に応じたり、動物の森ZOO ボランティア育成を行ったり動物に関する事の全般を行った。
2013年4月からは福岡県の大牟田市動物園で獣医師として新たな動物園ファン作りをしています。
九州沖縄ブロック動物園水族館獣医師臨床研究会(kozavg)代表。現在福岡市東区在住。
学芸員、社会教育主事、プロジェクトワイルドファシリテーター、公園運営管理士。

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