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Vol.20 不思議な石の連鎖

2013.11.29

 九月の終わり頃の台風一過の朝、動物園には葉っぱがエリアにいっぱい落ちていました。秋の枯れ葉ではなく、強風で吹き飛ばされた緑の葉っぱたちです。
 この新鮮な葉っぱをラマのアンズとサツキは美味しそうムシャ、ムシャ食べていました。

 その後、食欲がなく、なんか調子が悪そうで、胃もパンパンに張ってきていると飼育員さんが言ってきました。
 牛などの草食動物は草や葉っぱを食べて胃で分解します。通常このときに出るガスは上手にゲップをして出しているのですが、調子が悪いとガスが出すぎて溜まって胃がパンパンになる鼓張症という病気がなります。

 

 

 ラマは、牛と同じ食べ物を反芻する動物です。牛の胃は四つありますが、ラマは三つです。  1番目の胃は牛と同じ、大きく膨らむ胃です。牛の二番目と三番目が一緒になったような形でラマの二番目の胃があります。そして最後の胃が人で言う「胃袋」です。  最期の胃で胃酸が出て、食べた物を消化分解して行きます。

 聴診器で第一胃の音を聞くとパンパンという音がします。
それで、胃に針を刺してガス抜いたあと、お薬を飲ませて、消化がよくなる注射をして様子を見ることになりました。

 

 

 ラマエリアの上に植わっている木はクスの木です。クスは昔から着物の虫除けの樟脳を作る木なので、樟脳の成分の中毒かもしれません。食べ物に気を付けて様子を見るように飼育員に伝えていました。

 しかし、経過は思わしくなく、ラマのアンズちゃんは9月23日に死亡しました。
 解剖したところ、胃と腸からいっぱい石が出てきました。
 これは、食べた石ではなく、動物の体の中で作られた石のようでした。

 

 

 今までラマの身体から石を見たことはありません。

 いっしょに調子が悪くなったサツキちゃんも体調がイマイチのまま、約1ヶ月後に死亡しました。

 サツキちゃんの胃の中からは、5.4kgの大きな岩のような結石が出てきました。
2頭とも、胃の不調の原因はこの結石だったのです。

 

 

 それで、2頭から出た石の成分を調べると、リン酸マグネシウムということがわかりました。
 ラマの主食は乾草で、アルファルファ(ルーサン)が原料です。調べてみると、アルファルファは栄養価が高いのですが、マグネシウムがイネ科の牧草の3倍入っていることがわかりました。
 マグネシウムが胃のなかで再結晶して岩になったと推測されます。

 それで、すぐに乾草をチモシーというイネ科の草にかえるようにしました。

しかし、ここ、大牟田市動物園に4月に来て、石や砂が原因の病気にやたらと遭遇します。
なんで??ストーンの連鎖??

 

 

30年間動物園獣医をやっていて、こう砂・石が続くのは初めてです。

 原因を見つけるたびに飼育環境やエサを変えて改善していっていますので、残された動物たちは、これからはきっと大丈夫でしょう。

岩・石・砂騒動がおさまるといいのですが。

著者プロフィール

高田 真理子 (たかた まりこ)
1957年5月4日 福岡市生まれ。筑紫女学園高校を卒業後、宮崎大学農学部獣医学科を1981年に卒業し、獣医師となる。
動物が大好きで小学生の頃から動物園の獣医さんを志して、1983年に念願の海の中道海浜公園・動物の森の獣医さんになった。
以降30年間にわたり動物たちの治療や衛生管理を行ってきた。その間、動物の世話や治療だけではなく、「動物をもっと好きになって、動物ってすごいよ、すてきだよ」と子ども達に『動物の森一日飼育員』『動物ふれあい教室』等のイベントを行なったり、機関誌『動物の森だより』を作ったり、動物相談に応じたり、動物の森ZOO ボランティア育成を行ったり動物に関する事の全般を行った。
2013年4月からは福岡県の大牟田市動物園で獣医師として新たな動物園ファン作りをしています。
九州沖縄ブロック動物園水族館獣医師臨床研究会(kozavg)代表。現在福岡市東区在住。
学芸員、社会教育主事、プロジェクトワイルドファシリテーター、公園運営管理士。

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