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Vol.17 リクガメのジロウ君

2013.8.29

大牟田市動物園ではケヅメリクガメを4頭飼育しています。
ケヅメリクガメはアフリカの乾燥地域にいる草食のリクガメです。
ケヅメとは蹴爪と書いて、オスの鶏などの足で地面についている3本指の反対側に、歩くためではないとがった爪がありますがこれが蹴爪です。蹴爪はオスの鳥が戦う時に使います。

 

 

 この蹴爪に似た突起物がこのリクガメの後ろ足と尻尾の間についているので、「ケヅメリクガメ」と名付けられました。この突起物がもっと大きい種類のリクガメは足があるように見えるのでムツアシガメと言います。

 さて、ここの4頭のケヅメリクガメは、3頭が30kg近い大きさで、ノシノシと歩いてガツガツと野菜を食べます。この中でジロウ君は12kgと半分以下です。
ジロウ君は、大きなリクガメの残りの餌をこっそり食べていたので、身体はなかなか成長せず、これまで元気のない時期にはよく動物病院に入院していたようです。

 

 

 今年も6月頃から元気がなくなり、動物病院にやってきました。体重は12.8kgです。
2年前の記録で10.8kgなので、それでも少々成長しています。
 食欲のないジロウ君には、毎週温浴を行います。
 リクガメは爬虫類で変温動物なので、お風呂のようにお湯に付けて、ゆっくりマッサージをしてあげると身体の芯まで温まるのか、気持ち良さそうで、お湯の中でいい糞をしたり、湯上りには食欲がでたりします。

 

 

 そんなジロウ君も、だんだん温浴の効果も出なくなり、一日に小松菜をやっと1枚食べるだけになりました。新鮮な草を用意したり、果物や野菜の種類を増やしたり、ゼリー状のサプリメントを与えたりしましたが、体調はなかなか回復しません。

 

 

 7月には時々皮下点滴を行うようになりましたが経過はかわりません。
ここの動物病院はレントゲンがないので、レントゲンで診断しようとなんとか近所のペット病院にお願いして、予定を立てました。

 しかし、その日の朝、ジロウ君は亡くなってしまいました。
原因も突き止められずに、適切な治療も出来ずに死亡してしまって、獣医師として、ふがいない気持ちでいっぱいのまま、解剖をします。

 

 

 カメの解剖は、まずその甲羅をはずすことから始めなければなりません。
 カメの甲羅は骨由来なので、とても硬いです。なんとかノコギリで切って甲羅をはずして内臓を見たら、膀胱に大きな黄色い粘土状のかたまりがありました。
 膀胱結石です。350gもあります。
 あー、これは辛かっただろう、痛かっただろうと心痛みます。

 

 

大腸にも多量の砂が溜まり、固まっていました。あー、これじゃ食欲も出ないよね。
 お腹全体に細菌性の腹膜炎がありました。
 こんななかで、毎日生きていたのが不思議くらいです。
 きっと、痛くて苦しくて辛かっただろうなあと思います。
 そしてこの声を聞いてあげれなかった事を悔しく思います。無口なリクガメのジロウ君。

 

 

 もし、レントゲンがあって早く診断できればどうしただろう、血液検査をして診断していたらどうしただろうといろいろ考えます。

 医療に仮定法はナシです。ああだったら、こうだったらと言っても事実は変わりません。
でも、最低、痛み止めをやって、少しでも痛い思いを和らげてあげれたかもと思います。
 適切な治療を施せず、死亡して解剖するときは本当に悔いばかりです。
 この経験を生かさなければと強く決意します。

 

 

 記録によると、このジロウ君、怪獣映画のガメラ(2006年)にガメラの子役で出演したそうです。
 今度TSUTAYAでDVDを借りてきて、ジロウ君を偲びましょう。

著者プロフィール

高田 真理子 (たかた まりこ)
1957年5月4日 福岡市生まれ。筑紫女学園高校を卒業後、宮崎大学農学部獣医学科を1981年に卒業し、獣医師となる。
動物が大好きで小学生の頃から動物園の獣医さんを志して、1983年に念願の海の中道海浜公園・動物の森の獣医さんになった。
以降30年間にわたり動物たちの治療や衛生管理を行ってきた。その間、動物の世話や治療だけではなく、「動物をもっと好きになって、動物ってすごいよ、すてきだよ」と子ども達に『動物の森一日飼育員』『動物ふれあい教室』等のイベントを行なったり、機関誌『動物の森だより』を作ったり、動物相談に応じたり、動物の森ZOO ボランティア育成を行ったり動物に関する事の全般を行った。
2013年4月からは福岡県の大牟田市動物園で獣医師として新たな動物園ファン作りをしています。
九州沖縄ブロック動物園水族館獣医師臨床研究会(kozavg)代表。現在福岡市東区在住。
学芸員、社会教育主事、プロジェクトワイルドファシリテーター、公園運営管理士。

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