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Vol.7 成功している動物園?

2013.2.27

先日、あるテレビ番組の取材があり、ナレーター役の俳優さんから以下のような質問を受けました。
「旭山動物園や上野動物園のように成功している動物園をどう思われますか?」
 私はすぐに答えられず、動物園の成功っていったい何だろう、としばらく考え込んでしまいました。

質問した側は、おそらく多くの来園者を集めていることを成功だと考えていたはずです。たしかに、旭山動物園はユニークな行動展示が人気となり、一時は上野動物園を超える月間入園者数を記録しました。その比較対象となった上野動物園も、2011年のジャイアントパンダ再来園で同年の入園者数が400万人を越えました。動物園の経営面からは「成功」しているのは確かです。

親が呼んでも動物のそばから離れようとしない子ども。動物園の意義のひとつを表していると思う。

しかし、生まれつきへそ曲がりの私は、動物園の成功が単に集客数だけで評価されて良いのかと、いつも疑問に思っています。それは、動物園の役割や存在意義に関わる大問題でもあるからです。

集客数を動物園に対する評価のバロメーターにされると、地方の小規模動物園はたまったものではありません。マスコミで評判になっている動物園と比較して、はるかに入園者数の少ない動物園は存在意義を失ってしまうからです。年間数千人や数万人しか来園しない動物園は不要なのでしょうか?

冒頭の質問に対する私の回答は、「動物園の成功は来園者数が増えているかどうかではなく、その動物園が存在する地域にとって無くてはならないものであるかどうかで計るべきです。そもそも日本の動物園は、楽しく学べる場を目的として設立されました。約200年の間、世界中で動物園が存在し続けたのは、人々がそれを必要としていたからです。」というものでした。

人を集めることは重要です。でも、それだけを目標に設定してしまうと、動物園本来の役割を見失ってしまうでしょう。かつて天王寺動物園の園長であった筒井嘉隆氏は、『市政改善に関する論文集』(1936年)の中で「徒らに一般大衆に迎合することなく動物学的な高所に立って、市民を導いて行かねばならぬ。」と述べています。傲慢とも感じられる主張ですが、動物園が基盤とすべきものを深く認識しているからこそ言い得たと思います。反対に動物園側にその認識がなければ、集客数という共同幻想に惑わされ、足元をすくわれ倒れてしまいかねません。

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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