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Vol.17 動物園ってなに? Part IX ~ 法律の中の動物園 3 ~

2014.1.9

【都市公園法の中の動物園】
政令や条例や規則は別として、法文中に「動物園」の名称が明記されている我が国の法律は、現在、3つしか存在しません。そのひとつが「都市公園法」[(昭和三十一年四月二十日法律第七十九号)最終改正:平成二三年一二月一四日法律第一二二号]です。ほとんどの公立動物園の維持管理や運営はこの法律に基づいており、時として巨額となる動物園施設の建築費を支出する上での財政的根拠にもなっています。一方、行政が法的根拠にしているが故に、動物園の本質を究めることが困難になっているのも事実です。この点については、いずれ別の機会で述べたいと思います。
都市公園法の目的は、第一条で示されているように「観光施設に関する信用の増進により、観光に関する事業の発達を図り、もつて観光旅行者の利便の増進に資すること」です。そして、その観光施設を定義する第二条の中で、「動物園」という単語が一度だけ登場します。それは、観光施設の定義に関する条文中で、「この法律で「観光施設」とは、観光旅行者の利用に供される施設のうち遊園地、動物園、スキー場その他の遊戯、観賞又は運動のための施設であつて政令で定めるもの(その施設が観光旅行者の利用に供される宿泊施設に附帯して設けられている場合にあつては、当該施設及び宿泊施設)をいう」との一文です。
動物園が持つ多面的な役割を考えると、観光施設であること、格好良く言い換えればツーリズムの対象であることに異論はありません。この分野の重要性を認識して ”Zoo and Tourism: Conservation, Education, Entertainment?”(Channel View Publications、2010年)という専門書が出版されているほどです。ただ、遊園地やスキー場などとの違いが明記されず同列に扱われているのは問題だと思います。

 

 

【都市公園法と都市公園法施行令】
都市公園法の目的は、第一条に掲げられているとおり「都市公園の設置及び管理に関する基準等を定めて、都市公園の健全な発達を図り、もつて公共の福祉の増進に資すること」です。その「都市公園の効用を全うするため」に定義されているのが「公園施設」です。
本法の第二条の第2項では、公園施設が次のように定義されています。すなわち、「この法律において「公園施設」とは、都市公園の効用を全うするため当該都市公園に設けられる次の各号に掲げる施設をいう。
一  園路及び広場
二  植栽、花壇、噴水その他の修景施設で政令で定めるもの
三  休憩所、ベンチその他の休養施設で政令で定めるもの
四  ぶらんこ、すべり台、砂場その他の遊戯施設で政令で定めるもの
五  野球場、陸上競技場、水泳プールその他の運動施設で政令で定めるもの
六  植物園、動物園、野外劇場その他の教養施設で政令で定めるもの
七  売店、駐車場、便所その他の便益施設で政令で定めるもの
八  門、さく、管理事務所その他の管理施設で政令で定めるもの
九  前各号に掲げるもののほか、都市公園の効用を全うする施設で政令で定めるもの」です。
公園施設の中でも動物園は、植物園や野外劇場などと共に教養施設として位置付けられています。第一条では明確ではなかった動物園と他の施設との違いが、この条文の中では「教養施設」として区分されていることに注目すべきでしょう。世界大百科事典第2版(平凡社)によると、教養とは「一般に人格的な生活を向上させるための知・情・意の修練、つまり、たんなる学殖多識、専門家的職業生活のほかに一定の文化理想に応じた精神的能力の全面的開発、洗練を意味する」と定義されています。都市公園法とこの事典の定義を合せると、文化理想の全面的開発や洗練のための教養施設として動物園が存在しているということになります(なんて高邁な存在なのでしょう!)。
さらに都市公園法に基づいて制定された都市公園法施行令[(昭和三十一年九月十一日政令第二百九十号)最終改正:平成二四年一一月三〇日政令第二八四号]の第五条では、教養施設についてより具体的に掲げられています。すなわち、公園内の教養施設とは「植物園、温室、分区園、動物園、動物舎、水族館、自然生態園、野鳥観察所、動植物の保護繁殖施設、野外劇場、野外音楽堂、図書館、陳列館、天体又は気象観測施設、体験学習施設、記念碑その他これらに類するもの」と記されています。同条文には「古墳、城跡、旧宅その他の遺跡及びこれらを復原したもので歴史上又は学術上価値の高いもの」も教養施設に区分されています。教養施設としての動物園の重要性を再認識させられます。
この第五条の中で動物園と動物舎そして動植物の保護繁殖施設が明確に区分された社会的もしくは政治的背景については残念ながら知りません。ただ、動物の保護繁殖の役割を担う施設の建設費用が、比較的予算規模の大きい公園管理費から支出されることを有難いと思う反面、種保全に関わる施設が公園内の教養施設として位置づけられていることにはやや疑問を感じます。動物の保護繁殖や種保全の役割を担うのは、観光施設を統括する公園行政ではなく環境行政であるべきではないだろうか?と思うからです。

上記で紹介した法律については、以下のURLで全文公開されていますので参考にして下さい。
『都市公園法』
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S31/S31HO079.html
『都市公園法施行令』
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S31/S31SE290.html
『地方自治法』
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO067.html

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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