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Vol.11 動物園ってなに? Part III

2013.7.7

『動物園』に関する用語をさまざまな辞書で調べていたら、面白い解説を見つけました。日本国語大辞典(小学館)に掲載されていた「日本隠語集(1892)」からの引用文です。隠語集という本が存在するのを知らず、そのダークな響きに魅せられたので、本来の目的をしばし忘れ大学図書館内を探し回ったのですが、残念ながら見つかりませんでした(追記参照)。

さて、その隠語集で解説されている『動物園』ですが、次のような内容でした。
「監獄・刑務所をいう盗人仲間の隠語」
さもありなん、という感じがしないでもありません。しかし、日本初の上野動物園が開園した年が1882年で、その10数年後既にこのような隠語が使われていたのには驚きを禁じ得ません。
英語ではどうかというと、新英和大辞典(研究社)の “zoo” の翻訳には、俗語として「(刑務所・食堂など)雑然と人の込み合った場所」と解説されています。上記の、さもありなん的な感じは古今東西関係のないものかもしれませんね。
そういえば、こんな逸話を思い出しました。かつて、タイ王国の国会議事堂は動物園の前にあったのですが、議員同士が大声で怒鳴り合う様子を見たタイの国王は、「動物園へ送り込んではいかがでしょう?」とつぶやいたとか。

 

 

動物園という言葉に対して、一般普通の人々がかようなイメージも持っているということを、動物園の役割や意義を問い続けている関係者は忘れてはいけないと思います。そのイメージが単に感覚的なものに止まっていればまだしも、具体化した時には動物園にとって厄介な問題に発展しますから。
かなり以前の話ですが、他部局から異動してきた庶務係長が、「前の職場仲間から、お前何か悪いことでもやったんか?と幾度も問われて困ったよ」と苦笑いしていました。その若い係長はとても優秀な方で、たった2年で本庁へ引き抜かれて昇格しましたから、けっして悪行が異動の理由ではなかったと思います(笑)。でも、その何年か後に実施された園長人事は、行政が持っている動物園へのイメージ、つまり行政の中の動物園の位置や立場を痛感させるものでした。その園長は赴任するなり「俺は動物園に風穴を開けに来たのだ!」と豪語しました。が、行政側は重要な部署に風穴を開けてもらいたくなかったためと、年功序列を重んじる村社会的な考えから昇格させざるを得なかったために、無難な園長ポストへ異動させたのではないだろうかと、今でも疑念を抱き続けています。その証拠に着任後の数年間、動物園の内部は混乱を極め、退職後にもその修復に困難を極めました…。
いつか隠語集の動物園項目に「問題のある管理職を送り込むポスト」と書き加えられないことを、切に願っています。

追記 『日本隠語集』は、近代デジタルライブラリーのオンライン上で見ることができます(http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992063

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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