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Vol.8 山本五十六とアラゴルンと動物園

2013.3.27

前回の記事で、「動物園の成功は来園者数が増えているかどうかではなく、その動物園が存在する地域にとって無くてはならないものであるかどうかで計るべきです」と書きました。実は、この言葉は山本五十六からの引用です。

山本五十六(wikipedia 参照)

第二次世界大戦当時、海軍大将であった山本五十六は、ある時、子どもから「どうすれば大将になれるのですか?」という質問を受けたそうです。それに対して彼は、「誰もが大将になれるわけではありません。私だって偶然に大将になったに過ぎないのです。大切なのは大将になることではなく、君が、君の居る場所で、なくてはならない人になることです。」と回答しました(うろ覚えであることをご了承下さい)。私は決して戦争を美化する者ではありませんが、この言葉はずっと胸に深く刻み込まれています。

現在、日本動物園水族館協会の加盟動物園は全国で86あります。それらの動物園は、じつに様々な飼育展示や活動を見せてくれます。その多様性こそが、各地の動物園を訪れる楽しさを倍加させていると思います。全国の動物園が歴史ある上野動物園のそっくりさんになることはできませんし、ましてや行動展示で有名になった旭山動物園を真似るべきではありません。全国のモデル動物園を目指す必要もないでしょう。もし全国の動物園が金太郎飴のように画一的な姿になったとしたら、面白くも楽しくもありませんし、その動物園としての存在意義も失われてしまいます。それこそ、国立動物園がひとつあれば良いことになります。

冒頭で紹介した山本五十六の言葉を借りれば、動物園はそれぞれの都市や街で、人々にとってなくてはならない存在になることこそが大切だと思います。そのためにも、多様性を保証する動物園としてのオリジナリティーやユニークさが求められます。

しかし、多様性が重要だとしても、動物園である限りは、動物園の本質を見失ってはいけません。話は少し変わりますが、映画『指輪物語』でアラゴルン役を演じたヴィゴ・モーテンセンが、インタビューを受けて次のように語っていました。「映画界が陥る落とし穴は、作品の収益ばかりを重視したり、獲得する賞の数ばかりを気にすること。作品自体の価値をそっちのけにしてね。映画の中で指輪が及ぼす作用と同じだ。人々は欲に心を蝕まれて目指していた本質を忘れてしまう。自分を見失うんだ。」

この言葉は、動物園にも当てはまるのではないでしょうか?では、「動物園の本質」とは何であるのか?それを、次回以降で考えてゆきたいと思います。

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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