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Vol.3 園内を歩くことの意味

2012.8.8

朝の動物園内を歩くことが、どれほど楽しくて意義のあることかを書いてきましたが、「暇つぶしのために散歩しているのでは?」なんて誤解しないで下さいね。園内の散策、いや視察は園長の大切な日課なのですから。

前の職場(神戸市立王子動物園)に勤め始めた時、上野動物園の古賀園長は園内視察を欠かさなかった、という話を伝え聞きました。古賀園長は、視察の途中に飼育係に会うと、「あの動物は調子が悪いのではないか?いつもと呼吸数が違うぞ。」などと注意していたそうです。その実話は、多感だった当時の私の脳天を直撃しました。それから、仕事の合間に必ず園内を一周して、全部の動物を観察し呼吸数を記録することを自分に義務付けたのです。でも、長続きはしませんでした(泣)。飼育作業やその他の雑用に振り回されて、十分な時間がとれなかったのと、やはり動物園人としての情熱が足らなかったのでしょう。

ところで、古賀忠道さんをご存知でしょうか?日本の動物園の礎を築き上げた人物の一人です。今は、その名前を耳にしたことのない動物園関係者が多くなったでしょうね。動物園の要職にある方でも知らない人がいるので(驚くことに!)、当然のことかもしれません。

話は変わりますが、海外の動物園関係者の中にもヘディガーの名前を知らない人が増えてきていると、川田健さんが論文の中で嘆いておられました(”Hediger Who?”, International Zoo News, 38(4): 5-10, 1991)。その川田さんの名前も忘れられつつあるとすれば、とても残念というか日本の動物園界にとって由々しき事態だと感じています。

当時、チューリッヒ大学の教授であったヘディガーは、この動物園の園長も務めていた
写真左:バーゼル動物園(撮影:田井基文)
写真右:チューリッヒ動物園(撮影:田井基文)

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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