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Vol.12 動物園ってなに? Part IV

2013.8.6

前回、『動物園』という用語に関して、ちょっと変わった(?)辞書の解説を紹介しました。でも、ほとんどの辞書では動物園や “zoo” は、きわめてまとも(・・・)に(笑)解説されています。たとえば、オックスフォードの英英辞書による “zoo” の解説は、” a place where many kinds of wild animals are kept for the public to see and where they are studied, bred and protected ” となっています。つまり、多様な野生動物種を飼育している場所で、その目的は一般公開、研究、繁殖そして保護という、まさしく動物園界が口酸っぱく提唱している「4つの役割」の明示です。

国語辞書(スーパー大辞林:三省堂)でも同様に「動物を収集・飼育し、教育・娯楽などのために一般に公開する施設」と記されています。一般公開というのは、前にも述べましたが、唯一世界共通な動物園の定義となっています。
これらの辞書を読むと、動物園の役割や意義が広く一般の人にも理解されているように思えなくもありません。でも、実際のところはどうなんでしょう。

ドイツ ベルリン動物園/ティアパークは繁殖センターとしての機能を果たしている
左:アフリカ象放飼場 右:ミシュミターキン放飼場 ©田井基文

動物園の定義は、百科事典の中にも認められます。世界大百科事典(平凡社、1972年版)の文章は、この連載のvol. 4(2012年9月4日号)でもご紹介した元上野動物園長の古賀忠道さんが担当されています。動物園の「4つの役割」(古賀さんは「機能」と表現しています:教育的機能・慰楽的機能・研究的機能・動物保存的機能)から始まり、沿革、動物園の施設、動物の飼育、日本の動物園、そして世界の動物園の各項目について8ポイントほどの小さな文字で4頁にもわたってぎっしりと解説されています。これだけで一冊の本になりそうです。
古賀さんの解説を読みながら、歴史的背景も含め動物園とは何であるのかが、一般的な辞書にも百科事典にも明確に定義されているのに、過去幾度となく動物園が混迷の状況を迎えるのは一体何故なのだろう、と思いあぐねてしまいました。
という個人的感想は別として、「動物園ってなに?」を考える上では、大いに参考となる古賀さんの解説ですので、皆さんもぜひ図書館等で読んでみて下さい。

日本大百科全書(ニッポニカ:小学館、1994年)の解説も素晴らしいものです。こちらは、やはり元上野動物園長の中川志郎さん、そして元上野動物園飼育課長の小森 厚さんが執筆されています。その内容は、世界大百科事典と同様に歴史から始まり、現状、意義そして展望で締めくくられている力作です。「すべてのコンテンツの無断複写・転載」(同書)が禁じられているので、全文を紹介することはできませんが、中川志郎さんによる最後の「展望」の文章は、動物園に対する現状分析と伴に先見性を持つことの大切を、若き動物園人に伝えてくれていると思うので、以下にモディファイした文面を書き記しておきます。

 

 

これからのライフスタイルで、動物園の存在は益々その重要性を高めてゆく。しかし、その要求に応えるためには、教育機能の確立、視聴覚技術等の導入そして生態的展示への転換が急務となる。また、国際的な動物園間協働による希少種の保存(ズーストック)が必要となろう。さらには、その種保全の機能を果たすために、飼育技術を十分に継承し発揮することが大切である。動物展示では、動物を単に見せる目的から、動物の生活をよりよく見せる目的へと変化してゆくと思う。

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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