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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.2 哲学の道

2012.7.5

静かな朝の園内を歩く時には、動物たちと挨拶できる他にも、もうひとつの楽しい習慣があります。それは、「考える」ということ。歩きながら何を考えているかというと、それはさまざまなのですが、やっぱり動物園の中ですから、どうすれば動物たちを健康に長生きさせることができるだろうかとか、展示をどう改善すれば見易くなるだろうかとか、どんなアイデアで来園者を増やすことができるだろうか、などを考えることが多いです。また時には、どうすれば日本の動物園をより良い方向へ導けるのだろう、などと少し高尚な思いに耽ったりもします。つまり、朝の園路は「哲学の道」にもなっているのです。

ズーラシアの園内には、「自然体験林」と呼ばれている緑豊かで静かな場所があります。
増井光子前園長が「ズーラシアでは動物を見るだけじゃなく森林浴もできるのですよ!」とよく言っておられましたが、今、その意味を実感しながら散策しています。

話は変わりますが、小学生の時は自宅から徒歩で30分以上かけて学校まで通っていました。今はないかもしれませんが、その当時多かった越境入学をしていたのです。小さな子どもが遠い距離を歩いて通学することを心配した母が、一度、担任に相談したことがあります。それに対する返答は以下のとおりでした。

「心配する必要なんてありまへん。田舎の子やったら、1時間以上歩いとりますがな。その間に道端の草や虫に話しかけたり、いろいろ考えたりするんです。それが、子どもにとっては大切なことなんです。」

園内では、さまざまな花を愛でながら歩くこともできます。梅雨時ならアジサイが一押しです。

もちろん、後で母から伝え聞いた話ですが、今でも心に残り忘れられずにいます。だから、園内を歩きながら考え続けているのかもしれません。

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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