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Vol.15 動物園ってなに? Part VII  ~ 法律の中の動物園 1 ~

2013.11.1

 動物園の定義を理解する上で辞書が役立つことを述べてきました(本連載のNo.10~No.12)。さらに役立ちそうなのが法律です。
 さて日本国の法律で、動物園はどのように定義されているのでしょうか?
 それが、明確に動物園の役割や理念を定義している法律は存在しないのです。
 最近、国内の動物園業界では、動物園法を求める声が高まっています。動物園を規定する(定義する)新たな法律制定が求められているのです。この法律の必要性や内容については、また別の機会に述べたいと思いますが、たとえ今は動物園法がなくても、動物園に関連した法律や法令や基準はいくつか存在します。

【公立博物館の設置及び運営に関する基準】
 公立博物館の設置及び運営に関する基準(文部省告示第百六十四号)では、動物園が「自然系博物館のうち、生きた動物を扱う博物館で、その飼育する動物が六十五種以上のものをいう。」と具体的に記されています。同基準第六条の2では、より具体的に「動物園、植物園及び水族館は、おおむね、次の表に掲げる数の一次資料を収集し、育成し、及び展示するものとする。」として、「六五種三二五点ないし一六五種八二五点の資料数(動物点数)」が示されています。さらに第五条の2には、「動物園、植物園及び水族館の施設の面積は、次の表に掲げる面積を標準とする」として、「建物の延べ面積二十平方メートルに平均同時利用者数を乗じて得た面積」が基準値に設定されています。なぜ、このような具体的数値が算出されたのか、その経緯を知りたいところです。

 動物園の施設及び設備に関しては、同基準第四条で「第一項の表に掲げる施設及び設備のほか、当該博物館において、資料を常時育成し、必要な展示を行うことができるようにするため、次の表に掲げる施設及び設備を備えるものとする。」として、「動物飼育展示施設、仮収容施設、動物診療施設、検疫施設、調飼用施設、飼料庫、汚物・汚水・塵芥処理施設等」が必要とされています。ちなみに第一項の表に掲げられている施設や設備は、資料の保管(収蔵庫、技術室、作業室、荷解き室、消毒設備、集約収蔵設備等)、資料の展示(展示室、準備室、視聴覚機器、展示用機器照明設備等)、資料に関する集会その他の教育活動(集会室、教室、図書室、研究室、会議室、視聴覚機器、巡回展示用運搬自動車、教育研究用自動車、資料貸出用設備等)、資料に関する調査及び研究(図書室、研究室、実験室、作業室、実験設備等)、利用者の休憩及び安全(休憩室、救護室等)、事務の管理(事務室、宿直室等)です。
研究室や図書室ですよ。なんて素晴らしい!

 公立博物館の設置及び運営に関する基準については、以下のURLをご覧下さい。
 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19731130001/k19731130001.html

 

 

【博物館法】
 公立博物館の設置及び運営に関する基準の元である博物館法(昭和二十六年十二月一日法律第二百八十五号)では、第二十九条で「博物館に相当する施設」という規定があります。つまり、法律上、博物館として登録できない施設です。ほとんどの動物園・水族館はこれに当たります。ただし留意しなければいけないのは、存在そのものが相当施設なのではなく、相当施設になるには申請が必要だということです。博物館法施行規則(昭和三十年十月四日文部省令第二十四号)第十九条に申請の手続きが記されており、多くの動物園では、当該施設の所在する都道府県の教育委員会が申請書類の提出先になります。
本法律で、博物館相当施設とされる動物園ですが、法文中に「動物園」の文字は一切出てきません。

博物館法および博物館法施行規則については、以下のURLをご覧下さい。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO285.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S30/S30F03501000024.html
また、博物館相当施設に関しては、次のホームページが参考になるでしょう。
「博物館相当施設って何?」
http://www.lbm.go.jp/toda/museums/equival.html

【社会教育法と教育基本法】
 博物館法の元になっているのは、社会教育法です。博物館法の第一条(目的)には、「この法律は、社会教育法 (昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、博物館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的とする。」と記載されています。その社会教育法の第九条には、「図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする。」と記されています。つまり、動物園は法律上で社会教育機関となっています。
 そして、その社会教育法の元になっているのは、教育基本法(平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)で、本法の目的は第一条で「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」と記されています。ちなみに、改正前の前文では「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。」という格調高い文章です。

そして、以下が最も重要な部分です。教育基本法では、博物館を設置する意義として、第7条(社会教育)で次のように規定しています。「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。」
たとえ博物館の相当施設であったとしても、動物園の存在意義は法律上ここに遡るのです。

【日本国憲法】
さらに付け加えるならば、教育基本法は憲法に基づいて教育目的を記した法律です。その基本となる日本国憲法第二十六条では「教育を受ける権利、教育の義務」が規定されています。いうなれば、動物園・水族館における社会教育は義務であり、来園者にとってそれを受けることは権利です。

以上のように、動物園が社会教育施設であるのは確かです。そのことを理解できない人物が、動物園を管轄する部署のトップに就いてはいけないと思います。

 社会教育法、教育基本法および日本国憲法については、以下のURLをご覧ください。

 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO207.html
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
 http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?H_CTG=1&H_CTG_GUN=1&H_FILE_NAME=S21KE000&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%A0&H_NO_GENGO=M&H_NO_TYPE=4&H_NO_YEAR=19&H_RYAKU=1&H_YOMI_GUN=1&IDX_OPT=3

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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