日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.18 動物園ってなに? Part X ~ 法律の中の動物園 4 ~

2014.2.6

【都市公園法関連の公園条例】
前回は、地方自治体が動物園を設置し運営するための法的根拠である都市公園法について述べました。都市公園法では、第二条の三第1項で、都市公園の管理主体が国と地方自治体に限定されています。さらに、都市公園に位置づけられる動物園を地方自治体が設置する場合は、都市公園法第三条(都市公園の設置基準)で「地方公共団体が都市公園を設置する場合においては、政令で定める都市公園の配置及び規模に関する技術的基準を参酌して条例で定める基準に適合するように行うものとする。」とされているため、それに対応した公園条例を各自治体が策定しています。 

【福祉施設としての動物園?】
公園施設としての動物園は、基本的に公園条例の下で設置管理されますが、地方自治法(昭和二十二年四月十七日法律第六十七号)で定められた公の施設でもあることから、本法の第二百四十四条に掲げられた「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。」を根拠にして設置されています。法的根拠がなければ地方公共団体が設置する意味が希薄になるというか、そもそも市民のための予算を支出することができないからです。
ちなみに、地方自治法に記されている福祉の定義ですが、大辞林第3版によると「ふくし【福祉】とは〔「し」は「祉(ち)」の慣用音。「祉」は幸福の意〕幸福。特に,社会の構成員に等しくもたらされるべき幸福」となっています。このことから、動物園は来園者に平等に幸福(ハッピー)をもたらす福祉施設であると言えるかもしれません。

動物とのふれあいは、直接的に体に触れることだけを意味しない。心のふれあいもあり得ると思う。そのほとんどが、一方通行の場合がほとんどだとしても...。

【地方自治体の動物園条例】
公園条例とは別に動物園条例を定めている地方自治体もあります。その条例のいくつかを、設置目的と共に記します。いずれの条例もインターネット上で条文が公開されていますので、各都市が動物園をどのように位置づけているのか、また動物園の意義や役割をどのように理解しているのかを考えながら読んでみると面白いかもしれません。

1. 京都市動物園条例
  「(設置)第1条 市民の教養とレクリエーションに資するため,動物園を次のように設置する。
名称 京都市動物園
位置 京都市左京区岡崎法勝寺町 岡崎公園内」
この条例によると、動物園の設置目的は教養とレクリエーションという、きわめてシ
ンプルなものです。
http://www.city.kyoto.jp/somu/bunsyo/REISYS/reiki_honbun/ak10204621.html

2. 帯広市動物園条例
「(設置)第1条 本市に、野生動物を保護し、及び調査研究するとともに、動物とのふれあいを通じた情操教育、自然環境教育活動及びレクリエーションに資するため、動物園を設置する。」
帯広市では、動物園の設置目的を野生動物の保護、調査研究、そして「動物とのふれあい」による情操教育と自然環境教育活動(なぜ教育と言わずに教育活動にしたのかは不明)さらにレクリエーションとしています。
http://www3.e-reikinet.jp/obihiro/d1w_reiki/417901010036000000MH/417901010036000000MH/417901010036000000MH.html

3. 釧路市動物園条例
「(設置)第1条 動物に関する知識を広め、動物への親しみを深めるとともに、市民に憩いの場を提供するため、釧路市動物園(以下「動物園」という。)を設置する。」
より具体的に、動物への親しみの深めること、そして憩いの場を提供することが設置目的になっています。教育という言葉が使われず「動物に関する知識を広め」とされているのが特徴的です。
http://www1.g-reiki.net/kushiro/reiki_honbun/r355RG00000634.html

4. 宮崎市フェニックス自然動物園条例
「(設置)第1条 動物とのふれあいを通じ動物や自然に対する知識と愛護意識を深めるとともに、市民に憩いの場を提供するため、宮崎市大字塩路字浜山3083番地42に宮崎市フェニックス自然動物園(以下「動物園」という。)を設置する。」
釧路市と似ていますが、動物とのふれあいを通して得られる、動物や自然に対する知識と愛護意識という教育的要素を含めています。
http://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/gyousei/html/reiki/41390101003300000000/41390101003300000000/41390101003300000000.html

5. 旭山市旭山動物園条例
「(設置)第1条 本市は,市民の動物に対する科学的教養を昂めるとともに,合せて市民の保健及び休養に資するため動物園を設置する。」
科学的教養という言葉が新鮮です。いわゆるサイエンスリテラシーでしょうか。保健および休養というのも、他の条例に見られない用語です。国語辞書(大辞林)によると、保健とは「健康を守り保つこと」で、休養とは「仕事などを休んで体力・気力を養うこと」ですから、上述した健康福祉的な役割を重要視しているように思えます。前半は別として、後半は行動展示で名を馳せた動物園のイメージとは少しかけ離れているような気がしないでもありません。
http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/files/soumu_soumu/d1w_reiki/34290101002100000000/34290101002100000000/34290101002100000000.html

 各都市で、さまざまに異なる設置目的が設定されているのは興味深いです。これらの条例策定に関わった行政担当者が、幼い頃に訪れた動物園にどのような思い出を持っていたのだろうかとか、起案する際に動物園関係者とどのような議論を交わしながら策定したのだろうかとか、それとも余り議論しなかったのだろうかとか、いろいろと想像を巡らしてしまいます。

【訂正】
 Vol.15 動物園ってなに? Part VII  ~ 法律の中の動物園 1 ~の記事で、「公立博物館の設置及び運営に関する基準(文部省告示第百六十四号)では、動物園が「自然系博物館のうち、生きた動物を扱う博物館で、その飼育する動物が六十五種以上のものをいう。」と具体的に記されています」と書きましたが、この基準は平成15年に見直しが行われ、同年6月6日の告示により、動物園に関する具体的基準が全て削除されました。その理由は「博物館の種類を問わず現行のような定量的かつ詳細な基準を画一的に示すことは、現状に合致しない部分が現れている。このため、現在の博物館の望ましい基準を大綱化・弾力化の方向で見直すことを検討する必要がある」ためです。詳細は、以下のURLをご覧下さい。ご指摘いただいた読者の方に感謝いたします。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/03071401/007.pdf

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。